“お天気お姉さん”から起業「まつ育」美容液で注目 DINETTE社の尾崎美紀さん

「DINETTE株式会社」を立ち上げた尾崎美紀さん(撮影・斎藤大輔)
「DINETTE株式会社」を立ち上げた尾崎美紀さん(撮影・斎藤大輔)

自分のまつ毛を育てる「まつ育」が、美容業界で注目されています。本来の自然なまつ毛をいたわってメイクに生かそうという発想で、目元を大きく見せることができます。

この分野に今年2月に新規参入した「DINETTE株式会社」(本社・東京都渋谷区)は、尾崎美紀さん(26)が2年半前に起業したベンチャーです。実は尾崎さんは「元・お天気お姉さん」という異例の経歴の持ち主。芸能界時代の経験を踏まえ、女性の悩みをリサーチして、ヒット商品を生み出しました。(取材・上山崎雅泰)

「お天気お姉さん」としてテレビで活躍

尾崎さんは名古屋市出身。中央大学総合政策学部に通っていたころ、スカウトされて芸能界入りしました。2014年春からは日本テレビの情報番組「PON!」に「お天気お姉さん」としてレギュラー出演。身長170センチの体形を生かして、モデルとしても活躍していました。

大学卒業後は芸能界から離れることを決意。同級生と同じように就職活動をして、大手広告代理店や大手航空会社から内定をもらいました。

しかし「本当に自分がやりたいことなのか」と自問自答するように。芸能の仕事を通じて、発信することの楽しさや、メイクの奥深さを知り「もっとワクワクしたことをしたい。後悔しない選択を」と進路を再考しました。

コスメを紹介する動画メディアを起業、自らモデルに

(撮影・斎藤大輔)

就活を通じて知り合った人脈を生かし、IT関連の知り合いからアドバイスを受け、当時あまり注目されていなかった美容関連の動画メディアを立ち上げることにしました。「雑誌とかだと、肝心のメイクの仕方がよく分からないことがよくありました」。メイクと動画との相性の良さを感じての起業でした。

卒業直後の17年3月に起業し、代表取締役に就任。早速、自社の公式インスタグラムで、自らがモデルとなって、新しいコスメの使い勝手やメイク法を紹介する動画を公開しました。最初は自宅で、撮影から編集まで、作業は全部ひとりでまかないました。

狙い通り、読者からの反応は上々でした。フォロワーから、メイクに関する悩み相談にも乗るなどして、口コミを中心にフォロワーを拡大。関連動画は月平均10万回再生を達成し「コスメ動画メディアの中でナンバーワンになりました」(同社)。現在では、SNS総フォロワー20万人以上のファンがついています。

化粧品メーカーから提供を受けたコスメを自社の動画で紹介し、広告料を受け取って収益化を図るタイアップ広告のサイクルは順調でした。一方で、この先の会社の成長に限界があることや、物足りなさを感じるようにもなりました。

さらに資金調達しようにも、新興ベンチャーには手厳しいものでした。投資ファンドには資金提供を断られ続けました。思い悩み、一時は自社メディアの売却も考えていたといいます。

「目元」の悩み解消のため、まつ毛美容液を開発

そんな時「芸能を通じて大好きになった、美容の領域でビジネスがしたい」という初心に立ち返りました。新たにプライベートブランドを立ち上げ、コスメを製品化することを決意しました。

その際に強い味方となったのが、これまでの地道な動画サイトへの投稿を通じて獲得したフォロワー。アンケートやヒアリングをして、メイクのどういう点で悩んでいるのかを徹底的に調べ上げました。

その結果、見た目の印象に深く関わる「目元」に関する悩みが圧倒的に多いことが分かりました。

結果を基に、市場をリサーチ。マスカラやアイシャドウなど、目元に関するコスメは、海外を含む有名ブランドが数多く出していました。ベンチャーでも対抗でき、今後の成長も見込める分野を探していたところ、ニッチな「まつ育」に目を付けました。

当時、まつ毛美容液の市場は、極端に高額な商品と普及品に二分化されていました。そこで、その間の価格帯に狙いを付けて開発を開始。細胞の活性化に関係する成分を配合し、まつ毛のダメージ修復や生えかわりのケアに重点を置きました。

さらにこだわったのがパッケージ。「韓国やアメリカのコスメは、女性が思わず手に取りたくなるようなカワイイものばかり。日本製はそれが足りていない」。思わずSNSで紹介したくなるようなかわいさを追求。デザイナーと何度も話し合い、自らアイデアを出し、試作を重ねました。ブラシの堅さにもこだわり、約5カ月かけてようやく商品化にこぎつけました。

ブランド名は、ギリシャ神話に登場する女神「Phoebe(フィービー)」に由来する「PHOEBE BEAUTY UP」に。「商品を使ったみんなが女神のように輝くようになってほしい」という思いを込めました。

まつ毛美容液「アイラッシュセラム」には、元美容部員で、芸能人モデルのヘアメイクを担当し、インフルエンサーでもある小林加奈さんをディレクターに起用。「直接消費者の元へ届けたい」という思いから、今年2月に自社HPでのみ販売を始めると、初回分3000個は3週間ほどで完売しました。

まつ毛美容液「アイラッシュセラム」

「まつ毛にコシが出た」「太くなった」「パッケージが好き」と、使った女性からの口コミが広がり、話題を呼びました。在庫を増やして数カ月後に再販しましたが、それも数日で完売する盛況ぶりでした。

長く愛用してもらおうと、2カ月ごとの配送という仕組みで4611円(税抜き)で販売しています。利用者の声を受け、今ではアマゾンのほか、ロフトやプラザなど全国約200店舗にも置いています。

将来はアジア進出も視野に

(撮影・斎藤大輔)

「1回決めたことをやり通したい。失敗した、と思いたくないし、後悔したくない。つらい思いはたくさんしたけど、やりがいはこれまでより100倍感じています」と尾崎さん。今月6日には、プライベートブランドの第2弾として、まつ毛美容液と同様に細胞の活性化が期待できる成分を含んだフェイスマスクの販売を始めました。

「日本の『カワイイ』はアジアでもウケるはず。まずは国内でもっと多くの人に知ってもらいたいです。日常的にバッグやポーチにしのばせて使ってもらいたいですね。将来はアジアにも広げていきたいです」。

この記事をシェアする

「ひとり仕事」の記事

DANROサポーターズクラブ

DANROのオーサーやファン、サポーターが集まる
オンラインのコミュニティです。
ぜひ、のぞいてみてください。

もっと見る