バツイチ独身と純粋独身の不毛な対話「同じ独身でも同じじゃないから」

バツイチで独身の筆者(左)と、純粋独身の静香さん(仮名)

離婚して現在は「バツイチ独身」の筆者と、友人であり「純粋独身」の静香さん(仮名)は、こと「結婚」が話題になると、必ず折り合いのつかない会話になってしまいます。オチや結論が一切ない、不毛な対話をお届けいたします。

ちなみに、純粋独身とは、結婚をしたことがない生粋の独身のこと。対義語は「バツイチ独身」で、どちらも筆者の造語です。

一度も誰からも選ばれなかったという思い

福島:お互いに、フリーライターで独身、子なし、貯金もなしのアラフィフですが、静香さんはよく「あなたとわたしは違う」と言いますよね。どのあたりが「違う」と思うのですか。

静香:全然違うよ! 福島さんは一度結婚したことがある女性、一方わたしはずっと独身。しかもこれからも間違いなく独身のまま生涯を終える身だもの。たった2行の文章でも全然違うってこと、わかるでしょ(笑)。

福島:でも、現時点では「独身、子なし、貯金なし、生活不安定」なのは一緒ですよね。それでもわたしと静香さんは「違う」と思う?

静香:違う人種だよ(即答)。なぜなら、バツイチの人は「一度でも誰かに選ばれたことがある人」だからね。わたしは「一度も選ばれなかった人種」。この違いは大きいから!

福島:う、うーん……。「選ばれた」とワードもなんだかモヤモヤします(笑)。わたしは結局リリースされてしまったので、いずれにしても「独身」ということでは一緒のような気がする。

静香:現時点で同じような境遇だとしても、過去は今から付け足すことはできないでしょ。福島さんは以前結婚していた、わたしは一度もその経験がない。過去については事実を新しく作れないから、この経験の差は大きい。だからわたしとあなたは違うんです!

「一度も結婚したいと思ったことがない」と静香さん

同じ独身でも、過去に「結婚」の追加はできない

福島:「結婚経験があるかどうか」が、同じ独身でも重要なポイントなのですね。

静香:そりゃそうだよ。ある程度年齢重ねたら、結婚しているかしていないか、過去結婚していたかどうかで、世間の目の向き方が違うんだって。福島さんは「結婚経験がある独身」だから、世間の目についてあまり意識したことがないのかもしれないけど。

福島:いやいや、離婚したことで「結婚に向いてない人、堪え性がない人」みたいな目で見られているかもと思っていますよ。しかもわたしの場合、相手から「君とはやっていけない」と離婚を突きつけられたので、それを知る人たちはきっと「福島はわがままなんだろうな」と思っているのではないかしら。

静香:離婚だって「経験」でしょ。わたしが思うに、既婚者やバツがついている独身は、それらの経験を踏まえて「視野が広い人」に感じちゃう。つまり純粋独身のわたしは「視野が狭い」ってことね。

福島:一度も結婚したことがない人は「視野が狭い」ってこと?

静香:いや、ほかの人は知らないよ。純粋独身のなかには、ほかの経験をたくさんしている人もいるし、もともと人格的、性格的に視野が広い人もいると思う。とにかくわたしに限って言えば「結婚経験のある人よりも、自分は視野が狭い」と自覚している。

福島:「結婚の経験がある人は視野が広い」というのも、なんだか乱暴な気がするんだけど(笑)。

静香:わたしが言いたいのは、「経験もしたことないのに、そのカテゴリーの話をする資格なし」ということかな。たとえば誰かの相談にのるとき、家庭の悩みについてなにか答えようとしても、わたし自身に経験がないから、うまく答えられない。客観的に答えようと努力しても、自分のなかでも相談相手からも「経験がないくせに、よくそんなことが言えるよな」という心のツッコミが聞こえてくるんだよね。

福島:わたしも「離婚した身分でよく恋愛とか結婚の相談にのるよなあ」と心のツッコミが芽生えますよ。

静香:福島さんはすべてを経験しているから、ツッコまなくていいの! でもお互いに子どもはいないから、子育てについてはうまく語れないでしょ。

福島:そうですね。子育ての悩みについては、なにを言っても「それは子どもがいないから言えることで……」と言われそうで怖くてなにも言えない。

静香:それと同じで、純粋独身は結婚については怖くてなにも語れないの!(笑)。ちょっとはわかってくれたかな。バツイチ独身と純粋独身の深い溝について。

福島:なんとなくわかった気がします。静香さん、結婚して「視野の広さ」をゲットする気はないんですか。

静香:ない(即答)。これまで恋愛はしても結婚を意識したことはないし、これからも意識することはないでしょう。そもそも恋愛をしていない。今後も恋愛をする気配は皆無。以上!

結婚している人には尊敬の念しかない

福島:結婚したいとは思わないんですね。

静香:うん。一度も思ったことがない。結婚に結びつくような恋愛をしてこなかったせいかな。でも「子どもは欲しい」と思った時期はあるよ。同時に、結婚して家庭を持っている人はすごいなあと心の底から思ってる。わたしなんて自分ひとりで生きていくのに必死なのに、他の人は自分以外のこともやりつつ仕事してるしね。結婚の経験がある人に対しては、根底に尊敬の念を持ってるかな。それは言い換えると「ジェラシー」かもしれない。そこの違いが自分でもいまひとつわからないんだけどね。

福島:わたしの場合、結婚しても自分のことで精一杯だったから離婚を言い渡されたのですけどね……。

静香:福島さんも結婚に向いているかと言えば、向いていないのかもしれないね。でもね、向いているかどうか、そのジャッジの機会さえないのが、純粋独身だから!

福島:お互いに言い分はありますが……この対話、終わりがないですね。

静香:同じ独身でも、結婚について語らせたらバツイチと純粋独身は折り合うことはないわよ。だから話せば話すほど不毛なの。この不毛な感じ、嫌というほど経験してるから、結論が出ないのもわたしのなかでは想定内だけどね。今度は純粋独身の「罪悪感」について話すわ。

不毛な対話は、まだまだ続くのでありました。

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福島はるみ (ふくしま・はるみ)

熊本在住のライター。熊本と東京の出版社を経てフリーランスに。雑誌、書籍、WEBで幅広いジャンルを執筆。ペーパードライバー歴30年で「非モータリゼーション」な生活・仕事スタイルを実践中。タロット占いライターとして『誕生月の本』(自由国民社)を共著。

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