バツイチ独身と純粋独身の不毛な対話「命の連鎖を止めてしまった罪悪感」

離婚して現在は「バツイチ独身」の筆者と、友人であり「純粋独身」の静香さん(仮名)は、こと「結婚」が話題になると、必ず折り合いのつかない会話になってしまいます。オチや結論が一切ない、不毛な対話をお届けいたします。
ちなみに、純粋独身とは、結婚をしたことがない生粋の独身のこと。対義語は「バツイチ独身」で、どちらも筆者の造語です。

福島:静香さんは前回、「純粋独身ならではの罪悪感」が払拭できないと話されましたが、具体的にどんな罪悪感があるのですか。
静香:やっぱり、子どもを産まなかったことかな。
福島:それはわたしも同じです。結婚しても子どもは作らなかったし。
静香:デリケートな話で申し訳ないけど、それはあえて作らなかったの? それとも縁がなかったの?
福島:どちらも。元夫もわたしもそもそも子どもが好きではなかったし、お互い自由な時間が欲しかったこともあり、「子どもはいらないよね」と話していたんです。まだ20代後半で若かったせいもあったと思う。ところが義姉夫婦に子どもができ、彼が子どもの可愛さに突然目覚めたんです。私が39歳になった時「僕たちも子どもを作ろう!」と言われました。
静香:彼にそう言われてどう感じた?
福島:子どもについては「絶対に欲しくない」とは思っていませんでした。とはいえ積極的に子作りに励んでいたわけでもなかった。自然にできたらその時はその時で。もしできなかったとしてもそれでもいいなという感じ。
ただ、40歳を目前に「子どもが欲しい」と言われて、「えっ、今から?」とちょっと驚きました。「自然には妊娠しなかったので、このまま子どもがいない夫婦生活かもなあ」と思っていましたから。元夫も直前まで「子どもはいらない」と言っていたので、青天の霹靂というか。
静香:そこから不妊治療したんだっけ。
福島:はい。自然妊娠しなかったのはわたしに子宮筋腫があることが原因だったため、その治療・手術をしました。治療後、ドクターから「これであなたには妊娠の準備が整った。念のために旦那さんも検査しましょう」と提案があって、容器を渡されました。
静香:容器って?
福島:あの、男性のアレを入れるものです(笑)。ただ、そのことを元夫に伝えたら「嫌だ」と言われたんですよ。理由はなんだったか忘れました。ドラマなどでよくある「俺の男としての能力を疑うのか!」みたいなプライドを傷つけられたという感じではなく、単にその作業が恥ずかしかったんだと思う。
静香:で、結局不妊治療はどうなったの。
福島:彼の検査はしないままあやふやになり、不妊治療についてはそこで終わり。その数年後に離婚をしたのですが、この件が直接的な原因ではない……けれども、要素のひとつではあったのかもなあ。離婚して家を引っ越す時に、産婦人科で渡された男性用検査容器がコロッと出てきた時は、虚しかった。でもちょっとした食材入れの容器になるし未使用だったから、しばらく輪切り小葱とか入れて使ってた(笑)。
静香:福島さんは今、子どもがいない人生をどう思っているの?
福島:こういうことを口にすると非難を浴びそうで周囲にはあまり言ったことがないのだけど、実は「子どもがいなくてよかった」と思ってる。独身の時も結婚中も、一度も心の底から「子どもが欲しい」と思ったことがないんですよ。どうしても子どもを産んで育てる自分が想像できない。無理やり想像してもヒステリックな自分しか思い起こせないんです。ちゃんと育てることができそうにないというか。
静香:わたしもちゃんと育てることができないとは思うけど、それでも子どもは欲しかったかな。結婚はしたくないけど子どもはいてもよかったかなと思う。
福島:そういえば30〜40代の頃、「結婚はしなくてもいいから、子どもだけは欲しい」と周囲の独身友達がよく言ってました。その気持ちがまったくわからなかった!
静香:なんかね……「命の連鎖を私のところで止めてしまった罪悪感」があるのよ。
福島:わたしなんて直系長女で完全にご先祖様から続いている命の連鎖を止めてますよ。子供の頃は親戚から「あなたは婿養子をもらって福島の名前を残さないといけない」と言われ続けていましたが、親は「そんなの気にせず自由に生きなさい」という方針で育ててくれたから、全然気にしませんでした。
静香:先祖に申し訳ないというよりも、うまく言えないけど「自分のところで命を止めてしまった」という自然界への罪悪感があるんだよね。
福島:わたしは罪悪感がまったくない。子どもを産まなかった後悔もないし、どちらかというと「いなくてよかった」と思っているので、少し前までは「人間としてどこかおかしいのかな」と思っていました。でも数年前、女優の山口智子さんが「子どもを持たなかった理由」を語った記事を読んで、ちょっと楽になった。「自分の人生を歩みたい」みたいな内容だったかな。世間では「わがまま」と言われてしまうような考え方かもしれないけど、そういう人生を選択するのも自由だよねと。
静香:もちろんそうだよ。結婚しても子どもを作らない人もいれば、純粋独身でも子どもが欲しくて産んで育てる人もいるしで、個人の自由だと思う。

福島:同じ独身でも、わたしのように「子どもはいらない」と割り切って生きてきたならばいいけど、「子どもは欲しかった」という思いがあると、心にしこりがある感じなのかな。
静香:ちょっとね。まだ産める年齢の時はちょっとどころではなく、かなりの後悔と罪悪感があったよ。でも今はもう産める年齢でもないし、少し吹っ切れた。
福島:女性は、子どもが産める年齢に制限があるところがやっかいですよね。
静香:テクノロジーの発展で、お金さえあればもしかしたら何歳でも子どもが産めるようになるのかもしれないけど、万が一それらをクリアして子どもを産んだとしても、今度は長生きして育てないといけない。それはもうキツい! この年齢になって、後悔が「しっかりとした諦め」になりつつあるから、少しは楽になった。でもその分、老後は思い切り心配だけど。
福島:わたしも、仕事も不安定、年金制度も危ういし、介護してくれる人もいないし。不安しかないけれど、実のところ真剣に心配はしていないという(笑)。ひとりでどこかで死ぬ可能性が大だから「迷惑かけるかもだけど、ごめん、孤独死するわ」と心の中で誰かにすでに謝ってる。
静香:友人のなかには「死ぬ時は周囲に迷惑をかけたくない」と、早くも終活について考えてる人もいるよ。でも「孤独死なんてしないぞ」「迷惑はかけないぞ」と思っていても、うっかりそうなっちゃうこともあるでしょ。
福島:そう思う。どうやったら誰にも迷惑かけずに死ねるのか、それを知りたい。去年から積立式の葬祭互助会に加入しましたが、そもそも長生きしたあげく死んだらわたしの葬式の手続きを誰がするのか、謎(笑)。その時はさすがに親も他界しているだろうし。
静香:結局、誰かに必ず手間や迷惑をかけてしまうものなのよ。
福島:それって、結婚していても同じですよね。夫婦のどちらかが先立って、ひとりになる可能性もあるわけだし。
静香:だから子どもがいたほうがいいんだってば。
福島:いや、でも子どもにも迷惑かけちゃうし。
静香:今回も不毛な対話に……。やっぱり結論は出ないね(笑)。
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