養老乃瀧がアニメ「異世界居酒屋」の料理を再現 「原作を読み込んで表現した」
「ここは居酒屋のぶ。ごく普通の居酒屋なんですが、不思議なことが一つ。実は、店の入り口が……異世界へとつながっちゃってるんです!」
毎話このフレーズから始まるアニメ「異世界居酒屋~古都アイテーリアの居酒屋のぶ~」(以下「のぶ」)。異世界とつながった日本の居酒屋「のぶ」を舞台に、貴族の女性や徴税請負人といった異国の世界の住人たちが、店主・信之の料理や酒に舌鼓を打つグルメ物語です。YouTubeやAmazonプライムなどの動画サイトで累計再生回数が1000万回を超える人気となっています。
作中には、「枝豆の塩茹で」や「鶏唐揚」など日本の居酒屋ならではのメニューが登場します。こうした「のぶ」のメニューを現実世界でも味わってもらおうと、居酒屋チェーンの養老乃瀧がコラボレーションメニューを開発。7月26日より、グループ7店舗で提供を開始します。
企画したのは、アニメの製作委員会に参加しているグルメサイト運営会社「ぐるなび」。広報の鈴木裕美さんは、コラボレーション企画の狙いについて、「アニメに登場した料理を再現する企画はこれまでにもあったが、大手チェーンと協働できたのは初めてではないか。まだ料理の値段は決まっていないが、他の商品と遜色のない安価な値段で、美味しいものを提供していきたい」と話します。
アニメ世界の再現に向け「養老乃瀧」が商品開発
コラボレーションメニューの提供に先立ち、東京都内で6月下旬、試食会が開かれました。会場には、「のぶ」の原作小説の作者・蝉川夏哉さんや、アニメ監督を務めた小野勝巳さんをはじめ、制作関係者や養老乃瀧関係者など約30人が集まりました。
試食会では、トリアエズナマ(生ビール)やレーシュ(冷酒)といったお酒のほか、枝豆の塩茹で、鱚(キス)の天ぷら、鶏唐揚げなど13品の料理が振る舞われました。また、あんかけ湯豆腐やナポリタンなどとビールが一緒になった5種類のセット料理もありました。料理はすべて「のぶ」の世界観を忠実に再現するために、一から商品開発されたといいます。
商品開発を担当した養老乃瀧の中村貴範料理長が経緯を明かします。
「コラボレーションにあたり、『のぶ』のアニメだけでなく、原作の小説や漫画をすべて読み込んで、料理を再現しました。見た目だけでなく、作中に登場する人物の心情もくんだ上で、メニューを開発したつもりです」
この意気込みに対して、原作者の蝉川さんは「中村料理長の作品への深い愛を感じた。想像以上の出来栄え。特に『だしまき玉子』からは主人公の信之が抱えていた悩みまで感じ取ることができた」と感動していました。
アニメとのコラボメニューに大手チェーンが参入
これまで、アニメ作品に登場する独特な飲み物や料理を再現した「コラボメニュー」は、アニメグッズ販売店が運営する喫茶店やメイド喫茶などを中心に提供されてきました。
それらの店は、アニメファンが集まりやすく、アニメの世界を味わいやすい反面、飲み物の価格が500円前後、食べ物の価格が1000円前後と、やや割高感がありました。肝心の味も、筆者の経験上、あくまでアニメの雰囲気を楽しむためのものと割り切らざるを得ない場合が多かったといえます。
しかし、試食会で提供された料理や飲み物の数々は、「大手居酒屋チェーンの本気」とでも言うべきか、居酒屋で出されても全く違和感のないクォリティーでした。アニメの「のぶ」を見たことがある人は、「異世界」を味うことができるでしょう。実際に店に並ぶメニューは、今回の試食会の反応を踏まえて決まるということです。
原作者の蝉川さんは、日本の居酒屋の特徴について次のように話します。
「欧米ではカップル文化が根強く、カップルでないとディナーを楽しめないお店も存在します。しかし日本の居酒屋は、同性同士はもちろん、お一人でも楽しめるのが特徴です。この日本が誇る食文化を国内だけでなく、アニメを見て日本に来る海外のおひとりさまにも楽しんでもらえると嬉しいですね」
今後もアニメと飲食店がコラボレーションする動きが出てくれば、「物語発の食文化」が一層発展していくことは間違いないでしょう。
(「のぶ」のコラボメニューは7月末から8月末まで、養老乃瀧グループの東京の一部店舗で提供される予定。実施するのは、養老乃瀧(池袋南口店)、だんまや水産(池袋南口店・大塚南口店)、一件め酒場(池袋南口店・池袋東口店・池袋北口店・大塚北口店)の3チェーン7店舗)