「ひとり時間」にオススメの本は? DANROのオーサーに聞いてみた(5)

読書はさまざま体験を人にもたらします。

「読んでしばらく、呆然としてしまった」

「頑張らなければダメという一義的な価値観を心地よく崩してくれる」

「多様性やダイバーシティの本質を理解する手助けをしてくれる」

こんな感覚を味わわせてくれた「オススメの一冊」を、DANROのオーサーたちにあげてもらいました。

心を激しく揺さぶるミステリー小説から、「怠け者でもいいんだ」と安心させてくれるエッセイまで。DANROの新年企画の第5弾。今回もバラエティ豊かな作品が並びました。

イノセント・デイズ/早見和真

推薦したオーサー:朝井麻由美

読んでしばらく、呆然としてしまった小説。生と死とエゴについて考える物語……、なんだけど、難しいことは考えずにとにかく本の中に浸って、クライマックスの一文に震えてほしい。「私は見届けなければいけないのだ。(中略)この目に焼きつけなければならなかった」(※中略の部分はネタバレ防止で伏せています)の一文の破壊力を体感してほしい。

>>>『イノセント・デイズ』の作品情報を見る

朝井麻由美 (あさい・まゆみ)

ライター/編集者/コラムニスト。著書に『「ぼっち」の歩き方』(PHP研究所)、『ひとりっ子の頭ん中』(KADOKAWA/中経出版)。一人行動が好きすぎて、一人でBBQをしたり、一人でスイカ割りをしたりする日々。

>>>朝井麻由美の記事を読む

戦後史の正体/孫崎享

推薦したオーサー:神田桂一

戦後の日米関係を米国からの圧力という観点から読み解いた本。陰謀論渦まくなか、元外務省国際情報局長という立場からのこの本はとても貴重。

>>>『戦後史の正体』の作品情報を見る

神田桂一 (かんだ・けいいち)

フリーライター。週刊誌『FLASH』記者、ニコニコニュース編集部記者を経てフリー。『スペクテイター』『POPEYE』『ケトル』『yomyom』『週刊現代』など。著書に『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(宝島社・菊池良と共著)

>>>神田桂一の記事を読む

おろしや国酔夢譚/井上靖

推薦したオーサー:矢巻美穂

面白くて夢中になって読んだ初めての本

>>>『おろしや国酔夢譚』の作品情報を見る

矢巻美穂 (やまき・みほ)

国内外の旅行雑誌を中心に活動するカメラマンで、撮影から執筆・編集作業まで行う。単著としてネパール、台湾、ウズベキスタン、韓国などのフォトガイドブックを執筆。近著は『はじめて旅するウラジオストク』(辰巳出版)。また、YouTubeで「旅ちゃんねる MinMin Tour」をオープン。これまで取材に行って、本当に美味しかった店や行ってよかった人気スポットを紹介。

>>>矢巻美穂の記事を読む

本と怠け者/荻原魚雷

推薦したオーサー:若林良

著者の荻原さんは「自分のやる気のなさを肯定してくれる文学」を探し、古書店で梅崎春生や深沢七郎、阿佐田哲也といった先人たちの作品に出会います。「頑張らなければダメ」という一義的な価値観を心地よく崩してくれる本。

>>>『本と怠け者』の作品情報を見る

若林良 (わかばやし・りょう)

1990年、神奈川県生まれ。映画批評/ライター。ドキュメンタリーマガジン「neoneo」編集委員。幼少期を除き、映画館でポップコーンを買って食べた経験はゼロ。機会があれば、食べたいと思っています。

>>>若林良の記事を読む

てるみな/kashmir

推薦したオーサー:安藤健二

架空の東京を少女が電車で旅するだけのマンガですが、悪夢のような奇妙な世界観が癖になります。コロナ禍で外出が思うようにできない今こそ読まれて欲しい。

>>>『てるみな』の作品情報を見る

安藤健二 (あんどう・けんじ)

ハフポスト日本版ニュースエディター。1976年埼玉県生まれ。産経新聞社、フリーランス、ライブドア、ドワンゴを経て、ハフポスト日本版の記者。著書に「封印作品の謎 テレビアニメ・特撮編 」(彩図社)など。

>>>安藤健二の記事を読む

ヒップな生活革命/佐久間裕美子

推薦したオーサー:本間晋

うちの親を含め、社会活動をする人ってまじめで良い人なんだけど、ダサいなと思ってました。リーマンショック後にアメリカで、Apple製品やSNS、クリエイティビティを駆使して社会運動やソーシャルグッドな事業を始める人の話が書いてあって、やっと自分達の世界が来たのかと思いました。

>>>『ヒップな生活革命』の作品情報を見る

本間晋 (ほんま・しん)

広告代理店を経て、朝日新聞社勤務。映画と音楽を愛し、キャンプフェスも手掛ける。最近は渋谷系が再熱。好きな言葉は「人間は環境の奴隷」。趣味はデジタルメディア研究とマーケティング。ここ数年の関心ごとはイノベーションができる組織や個人の共通点。

>>>本間晋の記事を読む

苦海浄土/石牟礼道子

推薦したオーサー:遠藤徹

資本と国家に命も尊厳も踏みにじられる水俣の漁民。その恥辱と苦痛を一身に背負い「近代への呪術師」たらんとして綴るルポルタージュに、ただただ圧倒される。

>>>『苦海浄土』の作品情報を見る

遠藤徹 (えんどう・とおる)

1991年山形県生まれ。東京、プラハでの学生生活を経て、2017年より山形国際ドキュメンタリー映画祭スタッフ。週末は山か川か映画館で時間を過ごします。

>>>遠藤徹の記事を読む

ガープの世界/ジョン・アーヴィング

推薦したオーサー:ヨシムラヒロム

この本を読み終えた時、人が生きるということの50パーセントを理解したと思った。それが正しくとも間違っていようとも、そういった感想を抱いた読書体験は初めてだったので印象に残っている。

>>>『ガープの世界』の作品情報を見る

ヨシムラヒロム

1986年東京生まれ。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。イラストレーター、コラムニスト、中野区観光大使。五反田のコワーキングスペースpaoで週1度開かれるイベント「微学校」の校長としても活動中。2017年、美大生のリアルな姿を描いた「美大生図鑑」を上梓。

>>>ヨシムラヒロムの記事を読む

おじさんと河原猫/太田康介

推薦したオーサー:藤村かおり

ひとり暮らしのおじさんが多摩川河川敷の猫の世話をし続け、取材したジャーナリストがその世話を引き継ぎ、猫を救うために命を落とした別のホームレスの生きた証も記し…。猫と人の「純粋」な交流に感動した。写真も素晴らしい。

>>>『おじさんと河原猫』の作品情報を見る

藤村かおり (ふじむら・かおり)

20代は幼稚園教諭、30歳から児童書やエッセイを執筆。週刊朝日の記者等を経て、ペットメディア「Sippo」のライターに。無類の猫好きにして、無謀な馬好きでもある。競馬のファンファーレを聴くと気分が上がる。海を見るのも好き。最近の趣味は回転寿司巡り。

>>>藤村かおりの記事を読む

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー/ブレイディみかこ

推薦したオーサー:小野ヒデコ

多様性を理解するためには、“能力”が必要なことを知りました。その能力が“エンパシー”です。多様性やダイバーシティの大切さがまことしなやかに叫ばれている今、その本質を理解する手助けをしてくれる一冊です。

>>>『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の作品情報を見る

小野ヒデコ (おの・ひでこ)

1984年東京生まれ横浜育ち。同志社大学文学部英文学科卒業。自動車メーカで生産管理、アパレルメーカーで店舗マネジメントを経験後、2015年にライターに転身。現在、週刊誌やウェブメディアなどで取材・執筆中。興味あるテーマはアスリートのセカンドキャリア。英語は日常会話に困らない程度できます。

>>>小野ヒデコの記事を読む

野の医者は笑う/東畑開人

推薦したオーサー:鈴木裕美

ヒーリングをテーマにしたノンフィクションだが、著者自身についても取材相手についてもユーモアたっぷりに語られ、落語かコントかと思うほどげらげら笑ってしまう。ニュースを見て憂鬱な気持ちになりそうなとき、大切なのは深刻になることではなく、事実を知って考えることなのだと再認識させてくれる。

>>>『野の医者は笑う』の作品情報を見る

鈴木裕美 (すずき・ひろみ)

ライター。2003年、日経BPに入社。『日経ビジネス』などの編集記者を経て、コンデナスト・ジャパン『WIRED』日本版デジタルエディター。18年よりフリー。主に食にまつわる風景から、時代や社会、暮らしを考えるヒントを探しています。

>>>鈴木裕美の記事を読む

DANROのオーサーに「ひとり時間にオススメの本」を紹介してもらう企画。今回が最終回となります。

ここまで約50冊の本を紹介してきました。それぞれのオーサーの個性が反映したラインナップで、興味深かったのではないかと思います。

ところで、あなたの「推し本」はなんでしょうか?

【第1弾】「ひとり時間」にオススメの本は? DANROのオーサーに聞いてみた(1)

【第2弾】「ひとり時間」にオススメの本は? DANROのオーサーに聞いてみた(2)

【第3弾】「ひとり時間」にオススメの本は? DANROのオーサーに聞いてみた(3)

【第4弾】「ひとり時間」にオススメの本は? DANROのオーサーに聞いてみた(4)

この記事をシェアする

「ひとり本」の記事

DANROクラブ

DANROのオーサーやファン、サポーターが集まる
オンラインのコミュニティです。

もっと見る