プロゲーマー・ウメハラや専門家が指摘する「eスポーツ」普及のカギとは
注目集めるeスポーツ
世界最大級のゲームの展示会「東京ゲームショウ2018」が9月20日から23日まで、千葉・幕張メッセで開かれました。過去最大の668の企業・団体が出展し、来場者も過去最高の29万8690人が訪れました。今回、主催者が大々的に押し出していたのが、ゲームをスポーツ競技として扱う「eスポーツ」です。
既にスポーツの大会でもeスポーツを取り入れる例が出てきています。今年8月にインドネシアで開かれた「第18回アジア大会」では、eスポーツが公式公開競技になりました。さらに4年後の中国・杭州で開催予定のアジア大会では、正式なメダル種目となることが決まっています。こうした流れを受けて、オリンピックの正式種目にしようとする動きも起きています。
東京ゲームショウでも、会場内の至るところでeスポーツに関係した展示やステージが開かれ、多くの人だかりができていました。
ウメハラ「面白さから競技になった原点忘れないで」
Amazonが運営する動画実況サービス「Twitch」のブースでは、PC・スマートフォン向けカードゲーム「シャドウバース」の公開実況が開かれました。
「シャドウバース」はeスポーツの競技になることを念頭に開発されていることが特徴で、国内外で幾度も大会が開かれ、数多くのプロゲーマーが誕生しています。学校教育に導入する高校も出てきているほどです。
20日に開かれたステージに登場したのは、プロゲーマーのウメハラこと梅原大吾さん(37)。シャドウバースのプロゲーマーと戦い、専門外のゲームにも関わらず大金星をあげる場面もありました。
数々の国際ゲーム大会で優勝し、「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロゲーマー」としてギネスにも認定されているウメハラさん。eスポーツが大きな盛り上がりを見せる中、日本のeスポーツ界についてどのように考えているのか。次のように話します。
「日本のゲーム業界がeスポーツに力を入れ始めたのはいいことだと思います。eスポーツが盛り上がれば、業界全体のレベルも上がることになりますから。ただ、ゲームが面白いからみんな遊ぶようになり、それが競技になっていったという原点は忘れないでほしいです。『遊び』と『管理』は逆にあるところですから、競技になったことで管理が厳しくなり、面白さが損なわれる本末転倒になっては困ります」
eスポーツと学校教育の連携を
一方、日本のeスポーツには課題があると主張する人も。日本eスポーツ協会元理事の馬場章さん(60)は、「今後日本のeスポーツが普及するには、学校教育との連携が必要不可欠」と声を大にします。
「日本のeスポーツはゲームメーカーが大会を主催するなど、ビジネス優先で進んでいる向きが強いです。海外では高い賞金額の大会もあり、その側面ばかりが取り上げられますが、実はそれは一部でしかありません。それ以上に学校教育にeスポーツを取り入れる動きがいま盛んです」
日本国内の学校では、eスポーツの導入は始まったばかりです。角川ドワンゴ学園・N高校や、ルネサンス大阪高校が学校教育や部活動に活用していますが、いずれも私立の通信制高校です。通学制の学校にはほとんど受け入れられていないのが現状です。
「eスポーツを真のメジャースポーツとして発展させるためには、ゲームに対する負のイメージを克服しなければなりません。アジア大会の正式種目になったように、学校教育においても体育教育の正式種目として展開し、普及に努める必要があります。これなしには、eスポーツが日本に定着することは無いでしょう」(馬場さん)
日本のeスポーツの普及には、ゲームに対する「負のイメージ」を払拭していく必要がありそうです。
ウメハラさんは、ゲームを通して人と交流することで、成長できたと話します。「昔はゲームセンターでしか対戦できませんでしたから、ゲームセンターを通じて様々な人達との交流が生まれ、成長できた部分もありました。国内でゲーム大会が頻繁に開かれるようになれば、そこでコミュニティが生まれ、人と顔を合わせる機会も増えるのではないかと期待しています」
こうしたゲームの持つポジティブな側面を伝えていくことが、今後のeスポーツ普及のためのカギとなるかもしれません。日本のeスポーツがどのような方向に進んでいくのか。今後の動きにも目が離せません。