SNS疲れで眠れない夜、谷山浩子の「銀河通信」が心を軽くしてくれる(いつも心にぼっち曲)

(イラスト・田中稲)

銀河通信

1985年(昭和60年)、谷山浩子の10thアルバム「眠れない夜のために」収録曲。作詞・作曲・歌:谷山浩子

今「風の時代」なのだそうだ。土地やモノに価値を持つ「土の時代」から、場所も考え方もどんどん自由になっている。

……自由になるはずなのだが、私は逆。去年あたりからずっと焦っていた。コロナ禍を嘆いてばかりではいけない。新しい時代に慣れなければ。レベルアップしなければ。何かせねば。やらねば。ネバネバネバ……。

気持ちばかり追いこんで、ネバは「NEVER」になるばかり。しかも、こんなご時世だから、ツイッターを開くと怒りや絶望、罵り言葉がガスガス流れてくる。

五輪関係のニュースやコロナ、ワクチンなど、情報の高波もザッブンと毎日のように押し寄せ、ついに足を取られてしまった。早い話が、プチノイローゼである。

そもそも情報の取捨選択が下手。超がつく優柔不断でどれも大切に思えてしまい、スルーができない。流れてくるまま、どんな言葉もまともにパンチを食らってしまう。99の褒め言葉と1の批判がつけば、1の批判が気になってしまいフリーズ&ダメージ。

迷う! 焦る! 疲れる! 落ち込む! ヘロッヘロだ!

これはアカーン! 楽しい書き込み、嬉しい書き込みだっていっぱいあるのに。こちらはちゃんと「いいね」やコメントで参加し、明るい交流を広めていこう……。

ところが、ここでもスムーズにいかない。「こんなご時世だからこそ、誤解されないように、言葉足らずにならないように」と時間を考えて書き直す。考え過ぎて、どんどん文章が長くなり、逆に相手に伝わりにくくなる。

ツイッターなどすぐ文字数オーバーだ。書いては消しを繰り返し、考え過ぎの自分が嫌になる。

なにをどうしても落ち込む日々だった。

谷山浩子の声から広がるパラレルワールド

これはアカーン(2回目)! 私は「さすがにヤバい、これが続くとメンタルをやられる」と思い、ある夜スマホの電源を切り、隣の部屋にウリャッと投げ置いた。

ちょっと頭を休めよう。私が孤独感や閉鎖感に悩んだとき逃げ込むのは、谷山浩子さんの世界だ。

谷山浩子さんとの出会いは、「みんなのうた」で流れていた「まっくら森のうた」である。初めて聴いたときの衝撃たるや。「私は今、別の世界に入るための呪文を知った!」と本気で思ってしまった。

「さかなは空にことりは水に」や「どこにあるかみんなしってる どこにあるかだれもしらない」など幻想的なワードと透明感溢れる歌声。そして音の迷路に入ってしまったようなメロディー。

その後、「歪んだ王国」「漂流楽団」などのアルバムを聴いていったが、一枚ごとにパラレルワールドの扉があるイメージだ。中に入っていくと、広がるのは美しくて繊細な風景。怖くてゾッとする感覚も含めて、あえて一人だけで迷い込みたいと思ってしまうのである。

私にとって、彼女の曲は「ぼっち最優先の王国」(谷山浩子さんはそんなコンセプトで作ってはいないかもしれないが)。聴くだけで、つらかった孤独感が、逆に優越感に変わることもあった。秘密の花園を所有している地主の気分にさせてくれるといおうか。

人間関係がうまくいかないとき、本当に何度も救われた。今もそうだ。

聴く睡眠薬「眠れない夜のために」

ただ、迷宮に入り込んでしまった気分になる劇薬曲があるのも谷山ソングの特徴。ということで、チョイスは慎重に。

今回引っ張り出したのは、アルバム「眠れない夜のために」。

これはピアノ弾き語り曲がメインで、心にふんわり乗るやさしいメロディーが連なっている。特に「銀河通信」の心地よさと包容力は体がグッと軽くなる! SNSで縮こまった思考を夜空まで飛ばしてくれた。

それは どこか 宇宙の果ての 知らない星からの 長距離電話
窓を開ければ 暗い夜空に 一面の星たちが 光ざわめく(銀河通信)

彼女の澄んだ声が銀河系を経由し、いろんな星に反響して、ふわんと私の耳に戻ってきて届く、そんな距離感がなんとも柔らかい。

聴きながら目をつぶると、まぶたの裏に広がる星いっぱいの宇宙。まさに「遠い星からの長距離電話」。もしもし、もしもーし……。

「人と対面できない時期が長いぶん、SNSで広くつながっておかねばならない」

「役に立つ情報を見逃してはならない」

こんなネバネバ思考はいったんお休みしよう。ウトウトしながらそう思った。そう思えてホッとした。リフレッシュの仕方を思い出せた……!

とはいえ、SNSとの向き合い方は下手なままだ。スマホを見たりやめたりの繰り返しも、前よりほんの少し、本当に少~しだけマシになった程度だ。ネット情報から出てくる「見て(知って)おかないとヤバいぞビーム」はやはり手強い。そして私は本当に弱い!

しばらくは聴く睡眠薬「眠れない夜のために」は、CDラジカセの中に入れたままにしておこう、と思う。心の常備薬として。

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田中稲 (たなか・いね)

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人ではアイドル、昭和歌謡・ドラマ、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆。著書に『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)がある。CREA WEBにて「田中稲の勝手に再ブーム」を連載中。気が小さくて毎日がサプライズの連続。妄想力と不器用さで空回りしまくる日々を送る。

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