宇宙人に遭遇したときに歌いたい「この素晴らしき世界」

この素晴らしき世界(What a Wonderful World)

ルイ・アームストロングの楽曲。1968年2月リリース。作詞・作曲 ジョージ・ダグラス&ジョージ・デヴィッド・ワイス

開放感なんてとんでもない? 宇宙旅行って大変だ

いやはや、すごい時代になったものだ。12月8日から前澤友作さんが宇宙に行き、iPhoneで撮影した写真を、ドカスカとツイッターで公開して帰ってきた!

最初こそ旅費100億円というニュースに引いたものの、アップされる青い地球の画像を見て、単純に「地球を外側から見るなんて、最高に開放的な旅だろうなあ」と感動した。

しかし調べてみると宇宙旅行は開放的どころか、とんでもなくストレスが溜まる環境なのだとか。宇宙は広いが、宇宙ステーションは狭い。その空間に様々な国籍の人が集まるわけである。飽きても誰かとケンカしても、逃げ場がない! 

小さなトラブルで地球に帰還できなくなる可能性もある。日が経つにつれ、寂しさも膨らんでいくだろう。そのためか、ノイローゼになる方もいるらしい。

空を見て「あれUFOっぽくない?」「宇宙人っているのかなあ」と想像するくらいがラクチンなのかもしれない。

この記事を書いている途中の12月17日、「欧州宇宙機関(ESA)による調査で、火星の地表付近に大量の水が存在するという結果が出た」とニュースが飛び込んできた。

水があるということは、微生物もいる? 宇宙飛行士の中には「宇宙生命体らしきものを見た」という方もいるそうだ。

もしかすると、遠い星の生き物が、小さく小さく光る地球を指して「あそこに何か生命体がいるかもしれないねえ」なんて言ってるかもしれない。

昔「宇宙人」のイメージはタコだった

私は「異星人はいると信じたい派」である。

好奇心旺盛な幼少期、吹き荒れていたのがオカルトブーム。今見ると明らかに「これ灰皿じゃね?」というUFO写真も、雑誌に堂々と紹介されていた。その経験から、多少のハテナが浮かんでも「異星人いるかも!」のワクワクのほうが勝つ。

小さな頃の異星人のイメージはタコ、もしくは銀色のボディに大きな目が特徴の「グレイ」だった。しかしタコはなぜタコだったのだろう。調べてみると、SF作家・ウェルズが書いた「宇宙戦争」(1898年)の挿絵がタコっぽく、これがきっかけでイメージが定着したようである。

その後、今ではSF映画で様々な異星人のイメージが作り出されている。もしかすると、人間の姿をして、あなたの隣に潜んでいるかもしれない……!?

地球の美しさをプレゼンする曲を一曲挙げるなら

さて、ここでみなさんにお題である。あなたが宇宙遊泳の任務中に一人飛ばされ、UFOに助けられたとしよう。UFOに乗ると、右と左、ズラリと並ぶタコ型の宇宙人。

「あなたを助けてもイイデス。ただしその前に、あなたがどれだけ自分の星を愛しているかテストシマス。地球の美しさが分かる音楽を一曲だけ教えてクダサーイ。鼻歌でもいいので歌ってクダサーイ……」

と交換条件を出されたら、何の曲を歌うだろうか。地球人はあなた一人だけ。相談する相手はいない!

自分で考えた質問なのに、私は数日悩んでしまった。結局、悩み抜いて決めたのが、ルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界」である。

この曲が生まれたのは1968年。ケネディ暗殺やベトナム戦争のトラウマで混沌とするアメリカの「解毒剤」の役割を意図して作られたという。

地球の自然の美しさ、人の美しさをこんなに空想させる曲は他にない。地球を見たことがない異星人にすら、それを伝えるパワーがあるような気がする。

この曲を使用している、宇宙人ジョーンズが登場するサントリーBOSSのCMは本当にすごいなあと思うのだ。

「ろくでもない、この素晴らしき世界。」

というキャッチコピーも含め、「一言で説明するなら地球ってこんな感じ」と納得してしまう。

私も「この素晴らしき世界」を歌ったあと、

「いろんなことがありますけどね、好きなんですよ、地球」

という一言で締めたい。ああ聞こえるわ。タコ星人たちの拍手喝采が……。

今回はただただ宇宙に思いを馳せてしまった。現実の私は、コロナ禍の引きこもり生活を引きずり、コミュニケーション能力が恐ろしく落ちている。異星人に地球の良さを伝えるどころか、大切な人にすら、やさしい言葉を選べない状態だ。自分と社会との距離感が、アンドロメダ星雲レベルに遠く感じる。

本当に悩ましい。想像と現実が違い過ぎる……。

世界ってそんなに素晴らしくないよね。そう愚痴を言いたくもなるけれど、この楽曲の1970年バージョンのイントロで、ルイ・アームストロングはこう語りかけている。

「“この素晴らしき世界”ってどういう意味なんですか?」

「世界中で戦争が行われていますよね?」

「それも素晴らしいっていうんですか?」

「飢饉や環境汚染の問題もありますよね?」

「全然すばらしくなんてないですよ」

落ち着いてこのじいさんの言うことに耳を貸してくれ

俺には世界がそんなに悪いって思えない

人間が世界にしていることが悪いんだ

俺が言いたいのは、世界にもう少しチャンスを与えれば、

みんなその素晴らしさがわかるってことさ

愛だよ愛。それが秘訣なんだよ

もしもっとみんながお互いを愛しあったら

沢山の問題なんて解決される

そして世界はとびきり面白くなる

だからこのおいぼれは言い続けるのさ

(日本語訳引用:ルイ・アームストロング「What A Wonderful World / この素晴らしき世界」の舞台裏と歌にこめた意味

せめて、歌詞も見ずに歌えるように練習しておこう。

私も「私は思うんです。なんてこの世は美しいんだろうって!」と誰かに素直に伝えることができるように。

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田中稲 (たなか・いね)

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人ではアイドル、昭和歌謡・ドラマ、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆。著書に『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)がある。CREA WEBにて「田中稲の勝手に再ブーム」を連載中。気が小さくて毎日がサプライズの連続。妄想力と不器用さで空回りしまくる日々を送る。

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