人生も、ニャン生も、何度でもやり直せる(未婚ひとりと一匹 8)

ニャン生だって何度でもやり直せる。———くるみ

捨て猫だった老猫のくるみと、それをもらい受けた人間のコヤナギユウです!

やりたいことばかり追いかけていたら、それなりの「いい大人」になってしまったのにもかかわらず、わたしは相変わらず独身のひとり暮らし。結婚によって都合を優先させなければいけない「家族」が増えることに、漠然とした不安を持っています。(もちろん相手によるんだけど)

やりたいと思ったことをすぐできない、そういう生活が向かないと考えていたのです。

だから、世話が必要なペットと暮らすことも難しいと思って、Twitterで流れてくる猫動画でそれなりに満足してました。

……満足していたはずなのにおかしいな。

(この記事は、2019年9月21日に旧DANROで公開されました。記事内の情報は当時のものです。新しいDANROへの移行についてはこちらをご覧ください)

飼い猫は飼い主の所有物

「あと2日」のくるみ

猫が拾われたのは12月の公園です。

夜中に犬の散歩をしていた人が、ベンチにおいてある白いスポーツバックに気がつきました。そのときはそれほど気に留めず素通りしたものの、翌朝の散歩の時にも変わらずバッグが置いてあったため、中を開けてみたところ、入っていたのがくるみです。

動物愛護団体に連絡すると、捨て猫はまず「落とし物」として警察に届ける必要があるそうです。一寸の虫にも五分の魂、動物だって人間と変わらない命ですけど、日本の法律上、飼育されているペットは人間の所有物あつかいなのです。

拾得物として番号を割り振られ、3カ月保管し、その間に落とし主(遺失者)が現れれば返却します。それが、どう見たって捨てられた猫でも。

公園で拾われたくるみは警察に届けられ、拾得番号「11719」を付与された後、保護猫活動をしている友人、通称“猫達人”が預かりボランティアでくるみをひきとり、SNSにその写真をアップしたところ、わたしが釣れた、といった流れです。(くわしくは連載2回目をどうぞ!)

「あと1日」のくるみ

猫が我が家にやって来たのは1月。つまり、猫が我が家に来て、わたしが手を変え品を変え、猫との距離を詰めようとしていても(連載6回目参照)、「その日」が来るまで、猫は捨てた人の「所有物」なのです。

その人がなんかおかしな人で、急にふらっと警察に現れて、「猫を返せ」とか言い出したら、「自分で捨てたくせに勝手な!」と反論しても、法律上、猫はその「なんかおかしな人」のものなのです。

あるいは、とても大事に育てられていて、大切にするあまり「なんかおかしな人」が無断で捨てたのかもしれません。いや、こんなに攻撃的だし爪が伸びすぎて肉球に刺さってたし、大事にされてはなかったか……

などと妄想し、どうかどうか、「なんかおかしな人」が、ふらっと警察に現れて「公園で猫落としちゃったんですよね〜」とか言い出しませんように、と祈るだけでした。

大事にできなかった人のところへ、猫を渡さなければいけない可能性が、時折わたしの体にまとわりつきました。

飼い猫の首に鈴をつける

首輪を用意してみました

時はやって来ました!猫が拾われた日からまる3カ月。

法律上も晴れて「うちの猫」となった、コヤナギくるみちゃん。ささやかながら首輪を用意してみました。

毛がモコモコしていて、どんな首輪がいいのか分からないので3種類。すっかり定位置になった座椅子の上に置いた、青いクッションの上でくつろぐくるみの前に並べてみます。

猫には分からないかもしれないけど、今日はとてもいい日なのだぞ。

右端に置いた青い首輪のにおいをくるみが確かめたので、それをつけてみるとしようか。

まだ手を出すとッシャーッと怒られることはありますが、もう噛まれることはありません。でもまぁ、怒られるだけでもそれなりにびっくりします。

ドキドキしながら猫の首に手を回し、優勝メダルをかけるくらいうやうやしい気持ちでもって、猫に首輪をかけました。カチッ(強く引っ張ると外れる安全機能付き)

首輪をかけられた猫の様子

……。

首輪を掛けられたくるみは無反応です。

わたしが対面して凝視しているので「なにみてるの」といった動揺はありますが、「え? なに?」くらいの変化しか見せません。首輪かかってるの気がついてないのかな。

首輪をかけられても横顔がおもしろい猫の様子
人間の視線が気になって立ち上がった猫の様子

いつまでたってもわたしが見ているので、居心地が悪くなったくるみは、クッションから降りました。

鈴の音に覚悟を持って立ち向かう

そのときです。“チリン!”どこからともなく涼やかな音色が響きます。いや、もちろん「どこからともなく」なんかではなく、明らかに首輪についた鈴が振動で鳴ったのですけど、くるみには首輪の存在はないことになっていますので。

クッションから降りた衝撃で音は聞こえたものの、警戒した猫足で2、3歩進んでも鈴は鳴りません。

予想をしなかった出所不明の高音に一瞬緊張したものの、音がしなかったことからくるみは安心しました。より、安心を強いものにしようと思ったのでしょう。ふと自分の毛をなめたのです。

そのとき、また例の“チリン”です。

「どこからだ?」猫の眼光は光りますが、首輪とはつゆとも思っていません。ジッとして耳を澄まし、音がしないことを確認すると、また気が緩んで毛繕いにいそしもうと……チリン!

気のせいじゃない、どこかでなにかが鳴っている! 正体不明の音に、くるみは覚悟を持って立ち向かうといった様子で立ち上がり、左右と素早く様子をみます。

すると当然、チリンチリン!

姿の見えない敵に激高した猫はテーブルの上、足の下、左右、しきりに体を揺らして正体を探します。その動作にはもれなくあのチリンチリンがついてきて、ラチがあかないと悟ったくるみのとった最終手段は、ダッシュ!

関節痛で足の悪い猫の走り方はドタバタと、本人にとって笑い事じゃないからこそ、コミカルでかわいらしく、その一部始終を幸運にも動画に収めることができて、わたしはにんまりました。

首輪は簡単に掛けられたんだけど、その後見えない鈴の音を探してハイテンションになり走り回って、いまはベッドの下で寝てる。慣れるかな。
ほいで、今日は爪も伸びてきたし獣医に行こうかななんて思とるんやでアニバーサリーくるみ。ともに生きるとはいろいろ受け入れていくことや。#きょうのくるみ pic.twitter.com/RBhdijHkXN— コヤナギユウ🐱/✈️🇨🇦&🎤🇨🇿 (@KoyanagiYu) March 1 2019

何度でもやりなおせるのじゃ

夕暮れ、風が気持ちよくてベランダの窓を開けておくと、猫が出てきました。

鈴の音から逃げてベッドに隠れ、しばらくして出てきたくるみは、もう体に合わせてチリンチリンと音を鳴らす鈴を気に留めていないようでした。

なんて切り替えの早い猫なのでしょう。

閉ざされている窓が開いていること、部屋の中では感じない風に鼻をすんすんいわせ、ベランダに出てみます。慎重で、怒りっぽい猫が好奇心に従って活動エリアを広げました。

人生に「一巻の終わり」はなかなかやってこない。何度でもやり直せるのじゃ。人間も猫もね!

取得番号11719ちゃん。改めまして、コヤナギくるみちゃん。

今日からあなたはわたしのものよ。

心なしか誇らしい表情のくるみ

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コヤナギユウ

デザイナー・エディター。1977年新潟県生まれ。「プロの初心者」をモットーに記事を書く。情緒的でありつつ詳細な旅ブログが口コミで広がり、カナダ観光局オーロラ王国ブロガー観光大使、チェコ親善アンバサダー2018を務める。ひょんなことから猫を飼い、2019年2月に乳がん発見のためキャンサートラベラーへ転身。5年後には海外移住してみたいと夢見るアラフォー。神社検定3級、日本酒ナビゲーター、日本旅のペンクラブ会員。

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