ひとりと1匹、介護の幸せをかみしめて過ごした(老犬介護記・上)

元気な頃のルールー

「平均寿命はとうの昔に越えたけれど、きっとうちの犬は長寿で、まだ当分生きてくれる」

と、どこかで思っていた老犬との暮らし。ところが、例外なく愛犬も老いて、病気をして、次第に歩けなくなり、介護生活が始まりました。体重が40㎏近くある老犬の介護は、体力的に大変かと思われましたが、それを上回る幸せなひとときでもありました。

愛犬の長寿動物表彰と老い

2019年9月半ば、大阪府獣医師会主催の長寿動物表彰式があり、私の愛犬のルールーも表彰してもらいました。大型犬で14歳7カ月といえば、長寿犬だったのです。もう走ることもほとんどなく、耳も遠くなって老いを感じさせましたが、それでも誇らしく思いました。

夏に健康診断を受けた時に肝臓に腫瘍があることがわかったのですが、高齢で大きな手術をするリスクを考慮し、積極的な治療はしませんでした。「もしも自分の犬だったら手術する」「いや、手術しない」と、獣医さんの意見も分かれたのですが、最終的に、私は手術をしないという決断をして、「どうか腫瘍が良性でありますように、進行して破裂しませんように」と願っていました。

その後、腫瘍は鳴りを潜めていました。ただ、腫瘍とは関係のない微量の貧血が進行して、これといって打つ手もなく、手をこまねいていたのです。それでも、いつも通り散歩をして、穏やかに過ごしていました。私も獣医師もいつしか、ルールーが15歳の誕生日(2020年2月)を迎えられるかもしれないと期待し、その日を目指していました。

寝たきり生活と介護の始まり

ところが、長寿動物表彰から間もない10月初旬、いよいよ脚がおぼつかなくなってきたのです。自力で立っていることができないとトリミングは難しいのですが、病院でなんとかシャンプー、カットをしてもらうことができました。いま思えば、それが最後のトリミングになったのです。

玄関ホールがお気に入りの場所だったので、そこでくつろいでいることが多かったのですが、ちょっと留守をして目を離したすきに玄関に落ちていることもありました。

10月中旬になると、なぜか右回りにくるくる旋回したり、お散歩に出ても右にしか曲がれなくなったりしたのです。「これは、認知症かもしれない」と思い、動物病院で診てもらうと「認知症、もしくは脳腫瘍と思われる」ということでした。

あれよあれよという間にまったく立ち上がれなくなり、寝たきりに。10月半ば、ひとりと1匹の介護生活が始まったのです。

一番日当たりが良く、外の空気が感じられる場所に移動

看取りの時に向けての心の準備

体位変換など、介護しやすいように人間用の布団を買い、リビングに設置。何か異変があったら、すぐに気付けるようにしました。

長時間取材に行かないといけないような仕事を減らせたのはフリーランスだったからで、もし時間の自由が効かない仕事だったら、毎日、介護ができるペットシッターさんに来てもらわなければなりませんでした。幸い、いつもお願いしているペットシッターさんが、車での移動に無償で協力してくれたので、通院の時などとても助かりました。

元気な時、排泄は必ず外でしていたのですが、オシッコや便が溜まると勝手に出てきました。すぐにパッドやペットシーツを交換しなければ、被毛や皮膚が汚れてしまいますし、尿がしみ込んだ冷たいパッドを当てておくわけにもいきません。

ごはんは手作りしていたのですが、介護が始まった当初は、膝の上にルールーを抱きかかえ、一口ずつ手ですくって食べさせました。私の腕の中で、一生懸命ごはんを食べる愛犬が、とても愛おしかったのを覚えています。

腕に抱き抱えてなでると気持ち良さそうな表情に

15年近く共に生きてきた愛犬の介護生活は、ひとりで大変なこともありましたが、濃密なひとときでした。

幸い呼吸困難や痛みに苦しむこともなく、あごの下をなでると、フーっと深いため息をついていたルールー。苦しむようなことがあってはならないと、獣医さんに安楽死について相談しながら、私は、看取りの時に向けて心の準備を始めました。(下に続く

支え合い生きてきた愛犬の死が教えてくれたこと(老犬介護記・下)

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渡辺陽 (わたなべ・よう)

大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく伝える」をモットーに医療から気軽に行けるグルメ、美容、ライフスタイルまで幅広く執筆。医学ジャーナリスト協会会員。ダイエットだけでは飽き足りず、マラソン大会出場を目指して、パーソナルトレーナー指導のもと、ひとり黙々とトレーニングに励んでいる。

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