社会のルールは「絶対」ですか? 路上生活を知る者たちの「生命のダンス」

映画「ダンシングホームレス」のワンシーン(C)Tokyo Video Center

息苦しい閉塞感が日本列島を覆っています。新型コロナウイルスがもたらした混乱は社会の隅々におよび、私たちの間にギスギスした空気が漂っています。感染拡大防止のかけ声とともに広がる「同調圧力」。まるで戦時中のようだという声すら聞かれます。

そんな過剰な集団主義に反発するかのように、個人ひとりひとりの「自由な表現」にこそ価値があるのだと訴えかける映画があります。路上生活経験者による異色のダンス集団の姿を追ったドキュメンタリー「ダンシングホームレス」です。

「個人の自由な踊りを何よりも重視している」というこのダンス集団には、強制的なルールがありません。自由主義を徹底することで、路上生活経験者の肉体に潜む「原始的なパワー」を引き出そうとしているのです。

クライマックスの13分に及ぶダンスシーンは、まさに圧巻。「生命のダンス」と呼ぶにふさわしい自由奔放な舞が披露されます。

代表作「日々荒野」を演じるダンス集団「新人Hソケリッサ!」(C)Tokyo Video Center

路上生活の経験者に宿る「原始的なパワー」

「路上生活を経験した身体から出てくる魅力がある」

映画の中でそう語るのは、ダンス集団「新人Hソケリッサ!」を主宰するダンサー・振付師のアオキ裕キさんです。「日々生きることに向き合わざるを得ない状況」を体験してきた路上生活経験者の肉体には、原始的なパワーが宿っているのだというのです。

アオキさんはかつて、有名タレントのバックダンサーやミュージックビデオの振付師として活躍していました。しかしアメリカで同時多発テロに遭遇し、それまでの自分は「表面的なことにとらわれていた」と気付きます。

「人間の内面の奥深さを表現しなければいけない。そのためには、どうすればいいのか」

そう自問自答していたとき、東京の新宿駅前で、ある光景に出くわします。路上ミュージシャンがにぎやかに演奏している横で、ホームレスの男性が尻を出して、平然と眠っていたのです。


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亀松太郎 (かめまつ・たろう)

DANROの初代&3代目編集長。大学卒業後、朝日新聞記者になるも、組織になじめず3年で退社。小さなIT企業や法律事務所を経て、ネットメディアへ。ニコニコ動画や弁護士ドットコムでニュースの編集長を務めた後、20年ぶりに古巣に戻り、2018年〜2019年にDANRO編集長を務めた。そして、2020年10月、朝日新聞社からDANROを買い取り、再び編集長に。最近の趣味は100均ショップでDIYグッズをチェックすること。

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