ライターたちが集まる東京・五反田の「オフィスっぽくない仕事場」

コワーキングスペース「CONTENTZ」管理人の鬼頭佳代さん(左)と運営会社代表の宮脇淳さん

「コワーキングスペース」に行ったことはありますか? コワーキングスペースとは直訳すれば、一緒に働く場所。フリーランスのライターやエンジニアなどが会員になって、打ち合わせスペースや会議室を共用しながら、それぞれ独立して仕事をする場所のことです。

この数年、東京を中心に、全国のビジネス街に広がっています。カフェのようにカジュアルな雰囲気のところが多く、1時間などの時間単位で利用できる「ドロップイン」というサービスを提供している店もあります。そのため、会社員がひとりで集中して仕事をするために利用するケースも増えているようです。

そこには、毎日同じ職場で同じ仲間と働くのとは違った「新しい働き方」を実践する人々がいます。コワーキングスペースの運営者は、どのような狙いでサービスを提供しているのか。利用者たちの素顔はどのようなものなのでしょうか。

コンテンツの作り手が集まる場所

第1回は、東京のJR山手線・五反田駅から徒歩4分ほどのビルの5階にある「CONTENTZ(コンテンツ)」です。ウェブメディアのコンテンツ制作を手がける編集プロダクション「ノオト」が運営。ライターやエンジニアを始め、ウェブ業界で働くクリエイターたちが主に利用しています。

「カフェっぽい雰囲気」を意識したというCONTENTZ

オープンしたのは、2014年7月。ノオト代表の宮脇淳さん(45)によると、当時は「コワーキングスペース」という言葉が徐々に知られるようになったころで、現在ほど普及していなかったといいます。

「調べてみると、編集をなりわいとしている会社で、『コワーキングスペース』をやっているところがなかったんです。人がやってないなら、やってみようと。うちは編集の会社なので、編集者やライターといったコンテンツの作り手が集まれるような場所にしようと考えました」

インテリアで気を使ったのは「オフィスっぽくしないこと」。明るい蛍光灯は使わず、落ち着いた照明にしました。大きな窓で囲まれた開放的な空間に、さまざまなサイズの机が置かれています。どれも木製で温かみを感じさせます。

開設から3年半の間、CONTENTZの管理人は宮脇さんが務めてきました。しかし今年1月、ノオトの編集スタッフ・鬼頭佳代さん(26)にバトンタッチしました。鬼頭さんは「自宅のリビングのように使ってくれたら」と話します。「奥には人工芝席やハンモックがあり、冬季にはこたつも出します。ここなら、うたたねすることもできるんです」

冬にはコタツもあって、リラックスできる

宮脇さんもリラックススペースの効用を強調します。「大企業の社員はトイレで寝ているという話もありますが、仕事中の眠いときに15分くらい寝られるスペースを作ったらいいと思いますよ。そのほうがすっきりするので」

前述したように、CONTENTZの利用者は、運営会社の狙いもあって、ライターや編集者などウェブメディア関係者が多めです。運営会社のノオトから、ライターに仕事を依頼することもあります。「ちょっとこういう仕事があるんですけど」とメッセージを送って、その場ですぐ打ち合わせできるのも便利なところ。

広いスペースを活用して、ライターや編集者が交流を深めるイベント「#ライター交流会」も頻繁に開催しています。最近は、地方のコワーキングスペースでもイベントを開催。ライターのネットワークは全国に広がっています。

「和歌山や島根に住んでいるのに、CONTENTZの会員になってくれている人もいるんですよ」(宮脇さん)

利用料金は月額9900円が基本ですが、土曜限定で、1時間500円のドロップインも利用できるようにしています。さらに、地方在住のライターや編集者については、上京したときに仕事ができるようにと、平日でもドロップインを利用できるようにしました。

「コワーキングスペース」もメディアの一つ

壁に面した「集中席」に座る奥岡権人さん

利用者の奥岡権人さん(24)は、取材した今年2月の時点で、フリーランスのライターとしてビジネスやデザインの記事を書く仕事をしていました。「家にいるとだらけてしまうし、カフェだと周りがうるさくて集中できない。CONTENTZは静かで落ち着いた雰囲気なので、よく集中できます」と話していました。

4月からは人材系の会社に就職しましたが、起業や副業に関心があり、「フリーランスのチームを作ってみたい。人と一緒に何かをやりたいので、バンドみたいな小さな組織を作りたいですね」と将来の展望を語っていました。

「2年以上利用している」という一條貴彰さん

コンサルタントの一條貴彰さん(32)は、個人でゲーム関連会社のアドバイザリー業務などをおこなっています。自宅がCONTENTZの近くにあるため、外での仕事がない限りはいつも利用しているといいます。

「朝、おはようございますと言うだけで、人とコミュニケーションが取れて、気持ちの切り替えができます。自宅だと誘惑が多く、だらけてしまって集中できません」

一條さんは本業のほか、ゲーム開発に関するライターとしても活動しています。多くのライターが集まるCONTENTZはその点でも魅力的でした。

「自分の作業スペースとしても利用している」という宮脇淳さん

こうしたコミュニケーションが起きるコワーキングスペースについて、運営者の宮脇さんは「僕にとって、コワーキングスペースもメディアの一つ」と語ります。

「紙やネットでなくても、その中で何らかの知見が伝わるのならば、メディアではないかと思います。要はいろんなことを伝えられるのがメディア。だったら、コワーキングスペースのような空間もメディアになれるんじゃないか、ということですね」

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