男もポールダンスを踊りたい!世界の表彰台に立つ「ポール男子」の先駆者

ポールダンスをご存じですか。銀色のポールを中心に回転したり、ポーズをとったりするダンスです。ストリップのイメージが強く、「女性のもの」と思っている方も多いでしょう。しかし最近は「筋力や柔軟性がつく」と、男性の習い事としても人気です。
男性ポールダンサーの数もじわじわと増えており、男性ならではのパワフルでアクロバティックな技も次々と生まれています。今回は、女の園と思われがちなポールダンス界に飛び込み、自らを表現する男性ポールダンサーの先駆者、ISSEYさんにスポットを当てます。(取材・伊藤あかり)
「男女混合」はおかしい! メンズ部門を創設
「ポール・スポーツ」マスター部門(40歳以上)の世界1位、ISSEYさん(48)。ISSEYさんは、これまで男女混合だったマスター部門を男女別にするよう働きかけて「メンズカテゴリー」を創設し、自ら3連覇しています。ただ、これまでの出場者はISSEYさんのみ。1人で守ってきたこの部門に、2018年は過去最多の4人の男性ポールダンサーが挑みます。
ISSEYさんは「2019年はマスター40歳カテゴリーに挑める最後の年。5連覇で有終の美を飾りたい。そのために、今年の大会も負けられない」と話しています。ISSEYさんが語るポールダンスの魅力とはーー。

僕以外全員女性 だけど気にしない
僕がポールダンスと出会ったのは39歳のとき。ストリップがメインのポールダンスショーだったんですが、有名なポールダンサーのバニラさんの演技に鳥肌が立ったんですよね。目の周りと唇は真っ黒、眉毛はない。エナメルのピタ-っとしたSMっぽい衣装で、めちゃめちゃパワフルな動きをするんですよ。
ポールの上に登ってそのままずっと踊ってる。「脇フラッグ」という、ポールを脇に挟んで体を床と平行に浮かす技があるんですが「あれをしてみたい!」と興奮しました。次の日には、主催者にバニラさんの連絡先を聞いて、「僕も習いたいんです!」って電話していました。
「女性の世界」っていうイメージもあったけど、やりたい気持ちのほうが強かったです。今を逃すとできないと思って。僕は飽きっぽいタイプで、サーフィンもスノボもトライアスロンも3カ月くらいでやめていますし。嫌だったらやめればいいなくらいに思っていました。
生徒は僕以外、全員女性。なので、半裸の女性がその辺をうろうろしているわけです。でも、僕はその頃、「ベティのマヨネーズ」っていうニューハーフ・バーでダンサーをやっていて、ニューハーフのスッポンポンは見慣れていたんで、全然気にならなかったです。むしろ、男性1人ということで優しくしてもらいましたね。

男性なので筋力を使う「パワー系」の技はすぐにできました。憧れの脇フラッグも。できることが増えてくると楽しくて、大会を目指すようになりました。初めて国際大会に出たのは2010年。40歳のときでした。開催地のオーストラリアのポールは日本と素材が違ったので、本番は見事にすべりましたが。
ただ、大勢の前で踊ったポールダンスはすごい達成感があって、「また出たい!」って思いました。それから、スイス、アメリカ、香港……と経験を積んで、5回目となる北京の国際大会で初優勝できたときはとてもうれしかったですね。

3年間表彰台にひとり
大きな転機はポール・スポーツの第1回大会です。シニア(18歳から39歳)は男女別なのに、40歳以上のマスター部門は男女混合。おかしいやろって思いました。一緒の部門に出る同年代の女性にも嫉妬されるわけですよ。「あんたなんか出たらパワー系、絶対有利やん」って。そんなこと言われても……って感じですし、フェアに判断してほしいって、思っていましたね。
協会は「競技人口が少ないから男女混合にしています」と言うんですけど、僕に言わせれば、「部門が分かれていないから競技人口が増えないんや」って思っていました。自分が先頭を切って「男女別にしてくれ」って協会に訴えていました。
それで、第2回の世界大会からマスター部門も男女別に分かれるようになりました。急な変更だったこともあって、国内大会は男女混合のまま。新しくできた世界大会の男性マスター部門の出場者は、僕1人だけでした。「楽してメダルもらってずるい」って思っている人もいましたけど、全く逆。すごいプレッシャー。文字通り自分との戦い。自分に勝たないと記録も塗り替えられないわけですからね。

3年間、ずっと1人で表彰台に上ってきました。自分が言い出しっぺである以上、絶対にこの部門を守らないといけない。出続けることに意味があると思っています。
2018年は4連覇がかかった大会。出場者は過去最多の4人で、シニアで4位だった人がマスターに上がってくるみたい。今のところの世界ランクでは僕が1位だけど、どうなることやら。とても楽しみ!
目標は5連覇での卒業。50歳になったら次の部門(マスター+50)に行くのでね。それまではメンズマスター40歳カテゴリーの創設者として、トップに居続けたいと思います。
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