存在感増す「Vチューバー」 東京ゲームショウでも注目集まる

Vチューバーユニット「GEMS COMPANY」のメンバー。4枚のモニターを組み合わせて等身大の姿を投影させている
Vチューバーユニット「GEMS COMPANY」のメンバー。4枚のモニターを組み合わせて等身大の姿を投影させている

世界最大級のゲームの展示会「東京ゲームショウ2018」が閉幕しました。過去最大となる668の企業・団体が出展し、4日間でこれも過去最高となる約30万人が訪れ、盛況で終わりました。世界的に見れば、ゲーム業界がまだ成長し続けていることを示せたと言えるでしょう。

その東京ゲームショウで、今年急速に存在感を増していたのが「Vチューバー」です。Vチューバーとは、バーチャルYouTuberの略で、YouTube上で活動するCGキャラクターのこと。投稿者が動画には出ず、代わりに2D3DのCGでできたキャラクターが登場するのが特徴です。

音声は生身の人間が声を当てている場合もあれば、「ボイスロイド」という読み上げ用音声合成ソフトを使用している場合もあります。配信者とキャラクターの性別が異なる場合は、ボイスチェンジャーを用いることも。

昨年末頃から注目が高まり、いまでは多数のバーチャルYouTuberが活躍。その数は、5000人を突破したとも言われています。

Vチューバーのアイドルユニットも

3DCGを活用しているVチューバーの場合は、CGを動かす機材やスタジオの必要性など技術的な要件の高さから、企業や団体の協力を得て運営されていることが多いのも特徴です。

例えば、株式会社ディアステージが運営するVチューバーユニット「GEMS COMPANY」があります。これは11人の女性キャラクターが、今年4月からVチューバーとして独立した活動をしていたのですが、当初あまりの技術力の高さに、「大手企業がバックにいるのでは?」と噂されていました。こうした中、スクウェア・エニックスが818日、「GEMS COMPANY」をプロデュースしていることを発表しました。

11人の女性Vチューバーによるアイドルユニット「GEMS COMPANY」

どういった狙いがあるのか、スクウェア・エニックス取締役で、「GEMS COMPANY」のプロデューサーを務める齊藤陽介さん(48)は、きっかけをこう明かします。

2014年にニューヨークで開かれた、初音ミクの単独ライブの様子を映像で見て衝撃を受けたことがきっかけです。観衆がステージに向かって盛り上がっているんですが、ステージの上では3Dの初音ミクがスクリーンに映されて踊っているんですね。これを見て、バーチャルのアイドル時代が来ると予感しました」

スクウェア・エニックスという会社の枠にとらわれず、メーカーの垣根を越えたバーチャル・アイドルとして活躍するのが狙いと、齊藤さんは話します。例えば各キャラクターがゲーム実況する際も、「自社作品以外のゲームをどんどん取り上げていってほしい」と言います。

ステージでVチューバーと共演する齊藤陽介プロデューサー(左)

東京ゲームショウのスクウェア・エニックスのステージでは、特別なモニターに等身大で映された「GEMS COMPANY」のキャラクターと齊藤さんがトークセッションを行い、開場を沸かせていました。

「今後は第一弾ユニットとしてCDを発売する予定です。ライブやMCなどといった展開もしていきたいですね。自社ではなく、他社にゲーム主題歌を提供していけるようになれば面白いですね」(齊藤さん)

誰でもVチューバーになれる!?

企業や団体などがプロデュースするVチューバーが人気を集める一方で、技術を持たない人でも、スマートフォン一つでVチューバーになれるサービスも始まろうとしています。そんなサービスが東京ゲームショウで注目を集めていました。

グリーの100%子会社・Wright Flyer Live Entertainmentが開発するスマートフォンアプリ「REALITY Avatar(仮称)」。10月末の正規版のリリースを目標に、現在テスト版を提供しています。これはiPhone Xなどで使用されている顔認証機能を用いることで、スマートフォンだけで3Dのキャラクターを動かせるというものです。

アプリ上で動かした3Dキャラクターを録画することで、YouTubeやニコニコ動画などの動画サイトに投稿することもできます。キャラクターの目や髪などのパーツをカスタマイズすることで、自分だけのオリジナルキャラクターが作れるようになっています。

グリーのブースでのREALITY Avatar(仮称)の紹介

開発を担当した、同社の江本真一さん(44)はこう話します。

「スマホ1つでVチューバーになれることをコンセプトに、10月末に正規版の実装を目指しています。今のところは顔しか動かせないのですが、画像認証技術の向上によって、全身を動かせるようになる日も遠くないと思います。アイドルや声優志望の人をはじめ、多くの人に楽しんでいただきたいです」

データ解析会社ユーザーローカルの調べによると、今年3月には1000人だったVチューバーの数が、912日には5000人を突破。その勢いを急速に広げています。2020年東京五輪の開会式でも、Vチューバーが活躍しているかもしれません。

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河嶌太郎 (かわしま・たろう)

1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。アニメコンテンツなどを用いた地域振興事例の研究に携わる。近年は「週刊朝日」「AERA dot.」「Yahoo!ニュース個人」など雑誌・ウェブで執筆。ふるさと納税、アニメ、ゲーム、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。DANROでは、アニメ・マンガ・ゲームの「聖地巡礼」について執筆する。

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