氷温熟成の奇跡〜16万円の日本酒を味わう
赤坂プリンス クラシックハウスで開かれたSAKE HUNDREDのイベントで、「礼比(らいひ)」という特別な日本酒に出会った。その衝撃的な味わいは、日本酒に対する私の固定観念を根底から覆すものだった。
「こんな日本酒、初めて」
口に含んだ瞬間、軽やかで洗練された味わいが広がる。すっきり、なめらかで、ほどよい甘みがある。提供されたフィンガーフードもキャビア、ナッツ、チーズケーキと、まるで高級ワインを飲んでいるかのよう。
13年もの歳月を氷温で過ごし、熟成されたという「礼比」。その価格は、なんと16万5000円(内容量 500ml)。
あまりの高価格に一瞬、目が点になり、試飲させてもらったグラスの値段を逆算しそうになるが、一口飲めば納得せざるを得ない。これは、時間と技術への敬意を払う価値ある一杯なのだ。
「礼比」を生み出したのは、永井酒造という群馬県の蔵元。私は、彼らが出展していた「和酒フェス in 中目黒」にも足を運んだ。そこで出会ったのは、夏向けのスパークリング日本酒の「MIZUBASHO PURE」。そのさわやかな味わいが心地よく口の奥に響く。
発泡酒、熟成酒、ロゼワインのように赤く色づいた日本酒など、従来の日本酒のイメージを覆す個性的な酒ばかり。イベントに参加している人たちも30代の人が目立つ。日本酒に対するネガティブな先入観を持っていないようにみえた。
この中目黒のイベントには、41の酒蔵が243種類以上の日本酒を出していた。そのいくつかを味わって、新しい潮流を肌で感じることができた。
日本酒は、「淡麗、辛口、大吟醸」という従来のイメージから、ジャンルを超えた自由な表現へと変貌を遂げつつある。
この日本酒の変革は、新しい価値の創出とともに、伝統的な価値の再評価にも繋がっているのではないだろうか。礼比のような高価な熟成酒は、時間をかけた熟成技術と、その価値を正当に評価する文化の融合から生まれた結晶なのだ。
新しい熟成酒やブレンド酒の登場で、日本酒の可能性はさらに広がりを見せている。その未来は、まだまだこれから。私は、新しい日本酒の風を感じながら、次なる美酒との出会いの日を心待ちにしているのだった。