異例の反響があった「いいインコの日」 記念日登録した「セキセイ」の西川会長に真意を聞く
新元号「令和」初日の2019年5月1日に、創業87周年を迎えた老舗の文具メーカー「セキセイ」。オフィスで使うファイルやケース、思い出の写真を入れるアルバムなどを製造・販売している会社ですが、2018年には「いいインコの日(11月15日)」を登録したことで話題になりました。
鳥のセキセイインコにちなんだのです。インコの愛好家からも好評だったという記念日登録の舞台裏について、同社の西川雅夫会長にインタビューしました。
「これだけの反響があったのは初めて」
――11月15日を「いいインコの日」として記念日登録したときの反響は、どのようなものでしたか?
西川:非常に多くの方からツイッターなどで「ありがとう」とコメントをいただきました。日本記念日協会にも、200通近くのお礼メールが届いたそうです。「これだけの反響があったのは初めてだ」と記念日協会の担当者はおっしゃっていました。
企業が記念日を申請する場合は、自社の商品に関連するケースが多いそうです。そんな中、今回の記念日登録は「愛鳥家のために」という形で珍しかったため、大きな反響があったのではということでした。
――セキセイ株式会社が11月15日を「いいインコの日」として記念日登録した経緯は?
西川:その少し前から会社のツイッターを始めたのですが、インコに関する投稿を行うとすごく反応がよかったんです。85周年を迎えた2017年に、セキセイインコに絡めた記念キャンペーンを行ったところ、愛鳥家の方からたくさんフォローがありました。
そうしてフォローしてくれた方々は11月15日に「いいインコの日」というハッシュタグを付けてたくさんの投稿をしていました。調べてみたところ、日本記念日協会に登録された記念日ではありませんでした。
そこで、SNS担当者から「日ごろツイッターでお世話になっている愛鳥家の方々に恩返ししたい」という提案があり、「いいインコの日」の記念日登録を行いました。
――御社がインコとの関わりを深めたのは、いつ頃からでしょうか。
西川:2017年ですね。85周年を迎えるにあたって、社名の由来である「セキセイインコ」に関する取り組みを行っていこうという話になりました。もともとのコーポレートアイデンティティー(CI)は昭和の終わりに制定したのですが、インコとの関わりが分かりにくいものでした。
そこで、「セキセイの由来がセキセイインコであること」を打ち出さないといけないということで、セキセイインコのバッジを新しく作り、社員全員が1年間、着用していました。さらに、創業85周年を記念してセキセイインコのグッズを2万個ほど取引先に配りました。
その後、メモスタンドやフック、ぬいぐるみなどのセキセイインコのグッズも売り出すようになりました。もっと「かわいい」をアピールしていかないといけないんじゃないかという声が強くなり、翌年にはセキセイインコを前面に出したCIを制定しました。
かつては会社で「インコ」を飼っていた
――セキセイという社名は「セキセイインコ」に由来するということですが、どのような背景があったのでしょうか?
西川:セキセイはもともと、1932年(昭和7年)に先代の父・西川誠一郎が大阪で立ち上げた会社で、創業時は「西川誠一郎商店」という名前でした。父は大阪の文具卸商である奥村商店で8年ほど勉強して、独立しました。それから今年(2019年)の5月1日で87周年を迎えます。現在は社員一丸となって、100周年に向かって頑張ろうとしています。
その西川誠一郎商店ですが、1949年にセキセイ文具株式会社となりました。社名を変更した理由は、当時小鳥を飼うのがすごく流行していて、「誰からも愛される会社にしたい」という思いからです。ある会社から「セキセイ」という社名を譲り受けました。「セキセイ」と名前がついてから70周年になります。
――ところで、西川会長はインコなどの鳥を飼われていますか。
西川:今は鳥を飼っていないですね。その代わり、セキセイインコのグッズは大量にありますよ。実をいうと私が子どもの頃は、会社でセキセイインコを飼っていました。会社の入り口に鳥かごをつるして、2羽つがいで飼育していました。私も小学4年生の頃からハトを飼い始めました。全部で30羽近くいて、レースにも出場したりしました。
鳥は、人間が夢見た「空を羽ばくこと」ができるのが素晴らしいと思っています。セキセイでは、日本の伝統工芸である輪島塗の「蒔絵」で鶴を描いたボールペンを作っていますが、私自らデザインしました。この鶴のボールペンを含んだシリーズは「雅風」といい、2016年の伊勢志摩サミットでオバマ前大統領にもそのうちの一つをお使いいただき、お持ち帰りいただきました。
――今後、インコをモチーフにした文具を発売する予定はありますか?
西川:これまでのセキセイの文具の納入先は、官公庁や自治体が多かったんですね。そのため、セキセイインコのような鳥をデザインした可愛らしいものではなく、フォーマルなものが求められてきました。しかし、官公庁への納入もコンピュータ導入で減少しています。時代とともにオフィスも変わっていきますが、いつの時代も人は「かわいいもの」に対して愛着を抱きます。そうした点から、今後もセキセイインコをモチーフにした製品を販売したいと思っています。
――インコに関するイベントについてはどうでしょうか?
西川:セキセイでは年に2回、1月と7月に展示会を開催していますので、セキセイインコをモチーフにしたグッズの展示などもできたらと考えています。