夢の大レース「菊花賞」に愛馬が出走!(一口馬主の夢 3)
某日。中山競馬場での「セントライト記念」(菊花賞トライアル)。3コーナー、最内にコースをとる「ザダル」。前は5、6頭の馬が壁となり、左隣には川田騎手の「サトノルークス」がぴったり。「どん詰まり!」。前にも横にもどこにも進路がない。
「バシシュー(ザダルに騎乗する石橋脩騎手の愛称)、マジ大丈夫⁉︎」
レースは直線に入る。どうにか進路を作ろうと、強引に左の馬に体当たり。だが、相手も負けていない、内側に重心を傾けてくる。「ダメか⁉︎」。しかし我がザダルは怯まない。前走と同様、横の馬を弾き飛ばし、左斜め前に進路を取って強引に抜け出した。「やった!」。
と、思ったが、ゴール直前で力尽きて3着。我がザダルは、4戦目にして初黒星を喫したのだった。直線で他馬に抜かれたのは、今回が初めて。残念だったが、見応えは最高。3着までの馬には「菊花賞」の優先出走権が与えられる。これはゲットした。
しかしデビュー前の脚の手術から始まったザダルのキャリアは、脚もとの不安との戦い。優先出走権を得たものの、当のザダルは牧場に戻り、次走の予定は未定のまま時が過ぎていくことになる。大竹調教師も日々の更新で「泣き」しか入れない。「馬主」の私もピリピリする日々が続いた。
出資するザダルは1番ゲートを引き当てた
ところで我が軍団はザダルだけではない。先だって出資申し込みをした馬はどうかというと、抽選の結果、2頭をゲット。しかし今日は別のクラブ「キャロットクラブ」の抽選結果の発表日だ。こちらはこちらでドキドキする。
今年度ここまで出資が確定した2018年度産は、牡馬(オス)ばかりだったので、最後のキャロットクラブは牝馬(メス)を中心に申し込みを完了。ところが、獲得を確実視していた安価で人気の薄そうな1頭を抽選で外してしまい、結局こちらでは牝馬1頭のみのゲットとなった。2020年夏以降の新戦力は牡馬4頭、牝馬1頭という陣容で挑むことになった。
実は、予定としてはさらに「ロードサラブレッドオーナーズ」というクラブが残っているのだが、こちらはシーズン開幕前の最後の補強のためにとっておいてある。秘密兵器は最後まで温存とでも言っておこう。
さて、我が「軍団」を見渡すとこのところ絶不調。2019年の前半は23戦8勝と飛ぶ鳥を落とす勢いだったが、夏以降は9戦全敗。骨折から見事に蘇った「ロードアクア」の6月の勝利以降、11連敗の黒星街道が継続中だ。追い討ちをかけるように軍団の西のエースの「ガルヴィハーラ」が骨折療養から復帰する前に、再び骨折するという悲報まで舞い込んできた。あぁ、倒れそう。
そんなこんなのなか、ザダルの「菊花賞」参戦プランが大竹調教師から発表されたのは前述のレースの約2週間後だった。
早朝7時前。駅弁を携えて新幹線のホームに上がる。世間はラグビーW杯で予選リーグを1位通過したミラクル日本代表に沸いていたが、私にとっての天下分け目の戦いは、「淀(京都競馬場の愛称)」だ。今日は10月20日、ザダルの晴れ舞台・菊花賞(GI)の当日だ。予定していたゴルフのコンペはきっちりキャンセルしてスタンバイOK。なんと我がザダルは最内の1番ゲートを引き当てた。最高の次くらいの枠順にひとりでガッツポーズした。
待て待て。菊花賞を勝てばいくらの分配かな……と計算してみる。1着の賞金は付加賞を入れて1億5000万円くらい。調教師などへの進上金や、クラブ手数料をざっと25%くらい引いて400口で割ると……えっ、28万円か。GIを勝つとそんなにあるのか!(GIで入着したことがないのでひと桁多い数字に戸惑う)。いや、税金を引かれるから手取りは……とにかくザダルは一口4万円だし、ずいぶんの利益だな。これは助かる! と、皮算用は頭を駆けめぐった。(つづく)