どの馬に夢を託す? 一口馬主の運命が決まるとき(一口馬主の夢 2)

(Photo by Getty Images)

夏の某日。17時きっかりに仕事場を後にして、自宅へ向かう。「発送は一昨日だから、今日あたり着いているはず……」。そして自宅へ到着。車を停めてポストを確認する。来た!

夏から秋にかけては、一口馬主の新しい年度の「出資募集」が始まる季節。一口馬主の愛好家にとって、すべての出発点となるのが出資馬の選定だ。どの若駒に夢を託すかで「我が軍団」のこれから数年の運命が決まるので、気合いを入れずにはいられない。そういう季節だ。

「来た!」というのは、新たに加入を検討している馬主の会「シルク・ホースクラブ」のカタログ。ワクワクする気持ちを胸に、カタログとビールを手にして、自分の部屋にこもる。

さすが、アーモンドアイを輩出するなど今をときめくシルク・ホースクラブ。およそ競走馬のカタログとは思えないテイストで、女性週刊誌の付録みたいにハイカラな表紙だ。人気のクラブは違うなぁとページをめくる。

そして、募集馬の一覧を発見。うむ、総勢70頭か。多いな、どんな馬がいるんだろうか……。ビールをひと口、ふた口、さらにカタログに見入るのだ。

(この記事は、2019年9月8日に旧DANROで公開されました。記事内の情報は当時のものです。新しいDANROへの移行についてはこちらをご覧ください)

馬選びは「子供時代のボルト」の才能を見抜くようなもの

それぞれの仔馬について、写真のほか、価格や血統表、父馬や母馬等の解説、預託予定の厩舎(調教師)など、さまざまな情報が紙面一杯に記載されている。クラブのWEBサイトに行けば、仔馬の最新の測尺値(体格の測定値)や、歩いている動画も見ることができる。……正直、テキトー派の私には多すぎる情報なのだが。

オシャレな表紙の「シルク・ホースクラブ」のカタログ

「相馬眼(そうまがん)」という言葉がある。馬の能力を見抜く眼力という意味だ。

馬の見極めは奥深く、知識と経験とセンスを総動員して行うものなんだろう。だが、それは、小学生時代のサニブラウンやボルトの歩いているところや写真を見て、脚がどれだけ速くなるか見極めろというようなもの……。

素人の私にわかるはずもない。雲をつかめと言われているようなものだが、ああでもないこうでもないと将来の逸材を掘り当てるべく考え巡らすことが、何より楽しい時間なのである。

そして、いつも通り、「母馬が若い」「価格が高くない」「できれば牡馬(オス)」など、自己流の簡単な条件で馬を絞り込み、そこに挙がった馬を中心に独断と偏見の二次審査へと突入していく。

・お母さんは重賞勝ち馬か……値段8000万円超え、高っ!

・早生まれにしては体が小さいなぁ(←測尺値を見て)

・四白流星(脚が四本とも先が白く、顔に白いライン)はあまり走らんよね。

・このアメリカ系統の血統良さそうだな、ダート路線の戦力になりそうだ。

・預託予定の厩舎がマイナーだな。馬のデキがよくないのかなぁ。

などなど……。

並行して、ツイッターや競馬サイト「netkeiba.com」の掲示板などで、巷の評判や見解もチェックする。

この馬に決めたとか、あの馬は歩様(ほよう)がどうの、この馬は脚の形がどうのといった書き込みもあれば、目つきや馬格(馬の大きさ)、父親や兄弟についての分析もある。達人のように馬診断を披露するものから、「母馬に出資していました。息子に夢の続きを」といった情緒的なものまである。

気になった投稿は頭の中にインプット。出資馬選定の参考とする。

さらに近親馬の競走成績などもチェックする。このあたりは、インターネット時代に感謝。今では競走成績→出てくる。レース動画→出てくる。何でも出てくる、出てくる。ひと昔前だと、こういった情報は、業界外の者は簡単に収集できなかったものだ。

一方、情報を探れば探るほど、どの馬も走りそうな、走らなさそうな……どんどん迷いは深まる。

タイムリミットのギリギリまで揺れる思い

数日後、仕事の合間を縫って、当該クラブのWEBサイトへアクセス。発表された中間の申し込み状況を確認する。

募集口数の総数は500口なのだが、このクラブは申込者多数で抽選になる場合、既存会員が優先される制度がある。新規入会を狙う私にとっては、抽選対象になるような人気馬をゲットするのは難しいということだ。それらの制度を踏まえて、指名戦略を考えなればならない。

サイトを見ると、15頭ほど、すでに満口に近いかオーバーしている馬の名が挙がっている。私がリストアップした馬の名前もひとつあった。ヌヌヌ、この馬は無理か……。

その他の候補馬達はどうだ? 今のところ大丈夫そうだ。いや待て、なんで人気がないんだろう? 人気がないということは……私のチョイスは的外れなんだろうか? 思いはさらに揺れる。タイムリミットは近づいてくる。

結局、王道路線向けの馬、ダート路線でもいける馬、というようにバランスを考えて、苦しいながらも4頭に絞って申込書に書き込んだ。どうせ抽選で外れるので、よくて2頭買えれば良いだろうという腹だ。

今回は予算の都合上、牝馬(メス)は選ばなかった。後ろ髪を引かれる思い。未練がましいのは私の得意技ではあるが、得てして最後の最後に切った馬が活躍するというものだ。

あとは抽選結果を待つのみ。果報は寝て待て。

と、そう言えば今日は木曜日。今週出走予定の「シャイントレイル」(我が一口馬主生活の一期生)の出馬投票の結果が出ているはずだ。

例によって、クラブWEBサイトの会員ページへログイン。無事、三浦騎手での出走が確定とのこと。新潟競馬場か。今週末はテニスにゴルフにと、予定が立て込んでいるので観戦には行けんな……とか考えながら、元祖・超期待馬「ガルヴィハーラ」の近況のチェックへ移る。こちらは骨折療養中なのだが、今週はなんと調教師も視察に訪れたらしく、順調に回復しているようだ。ヨシヨシ……えっ⁉️

ガーン! 来週札幌競馬場で復帰予定だった我が軍団の最高価格ホース「イペルラーニオ」が脚部不安のため、牧場へ逆戻り。はぁ……。一気に気持ちが盛り下がる。なんてついてないんだと自分の運を呪うが、どうしようもないのがこの世界。沈んだ気持ちの行き場を見つけられないまま愛機Mac Book Airの電源を切った。

そして週末。娘を新幹線の駅まで送っていると途中でケータイが鳴った。

「おっと……」。やむを得ず路肩へ車を寄せて停車する。新幹線の出発時刻まで、まだ時間があるな。大丈夫だ。ポケットからiPhoneを取り出して、新機能の顔認証で待ち受けロックを解除。さっとブラウザを立ち上げる。

そう。今日もまた、愛馬のレースが始まるのだ。

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山本丈晴 (やまもと・たけはる)

広島在住、3児の父。子供の時から競馬ファンで東大ホースメンクラブBiBi元部長。長年のブランクの後、最愛のEPIPHANEIA(JPN)に出会って競馬観戦再開。夢を乗せて一口馬主道探求中。生業は社会保険労務士・行政書士。趣味は養蜂・不定積分・ゴルフ・テニス・猫・家庭菜園・数学を教えること・巨人。

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