アフリカにある世界最大級の「電子機器の墓場」で生きる人々(ガーナひとり暮らし 3)
西アフリカの国ガーナ在住のネオです。今回は、首都アクラの郊外にある不法投棄場所を紹介します。ここは、「アグボグブロシー(Agbogbloshie)」と呼ばれ、世界で最も電子機器が不法投棄される”最凶最悪”の場所として名を馳せています。
ガーナに住んでいる私からすれば、このような負のイメージをシェアしたくはないのですが、ここに住む人々、子供たちの現状をお話したいと思います。
ここで山となったゴミの大半は、壊れた電子機器類、いわゆるパソコンや電子レンジ、テレビや冷蔵庫です。その広さはなんと150万平方メートル、東京ドーム約30個分。
首都アクラからは車でものの20分圏内にあるエリアです。地面はすべてゴミ。地平線の彼方まですべてゴミ。至るところにゴミの山とゴミをあさる人々、ゴミを食いあさる羊や牛……。ガーナは、アフリカのなかでも特に急速に成長を遂げています。しかしその成長の裏では、このような電子機器類の不法投棄が蔓延しているのです。
写真を見ても分かる通り、あちこちで不気味な発火による煙幕が立ちのぼっています。そこに近寄ると、プラスティックが燃える凄まじい臭いと、濁りに濁った川の奇妙な臭いを感じることになります。
煙が立ちのぼる場所には「日常」があった
なぜこのように、煙幕が立ち込めてしまうのか。
それは、この近隣に住む貧困層の人々(おもに子供たちです)が不法投棄された電子機器類を燃やし、燃え残った銅や鉄の残骸を売って生計を立てているからです。毒性の煙がのぼる場所で人々は、深刻な喘息、臓器不全、知覚障害、物理的なやけどや裂傷といった影響を受けます。ここでは、日本ではとても考えられない状況が、日常となっているのです。
この地に生まれた子供たちには、親が稼いできた「スカベンジャー(ゴミなどを拾い集めて生活する人)」としてのノウハウが、そのまま引き継がれていくことが多いです。そして、ここで生活をする人々の多くは、20代のうちに心疾患や癌で亡くなってしまうそうです。
私がこの場所を初めて訪れたとき、途中の集落で、現地のガーナ人から注意を受けました。
「アグボグブロシーのなかに入るのに、粉塵マスクをしないなんてあり得ない」
想像していた以上の注意喚起でした。「1日ぐらいだから大丈夫」と、マスクをせずに向かっていたのです。
実際に行ってみると彼らのアドバイスとは裏腹に、臭いがキツイだけで別になんともなかった、というのが素直な印象でした。しかし、2時間滞在したのち、帰り際に軽い頭痛と軽度の体の怠さが発生することになりました。
ここに住む人々に恐る恐る話を聞きました。
「僕らはここで生活できる基盤がある。生活基準を変えることは僕にはできない」
それぞれの環境と境遇があるにせよ、この場所に対する政府の是正があればこんな思いをせずに済むのに。命を削りながらその日を暮らすための収入を得る……。この場所で働く人達の収入は、1日8時間ほどゴミを漁って約30セディ。日本円で約600円です。
今、いわゆる高性能のスマートフォンや電子機器類を利用することで、様々な国が経済成長を遂げている背景の裏を垣間見た気がしました。