池袋の東急ハンズが閉店した〜消えゆく「都心のホームセンター」の意義とは?

2021年10月31日をもって、池袋の東急ハンズが閉店した。

上京して以来、ずっと池袋を中心に生活してきたので、池袋のハンズには数え切れないほどお世話になった。

何か必要なものがあるときはもちろんだが、特に何か目的がなくても、池袋のハンズにふらっと行くことは多かった。

位置的にも好都合だった。ハンズは、池袋の東口方面を歩く上でメインとなる「サンシャイン通り」の一番端にあった。ひとりで目的も決めずに駅から歩いて、ハンズを見て回ってから、駅に引き返す。そんな風にぶらつくことも多かった。

ネットや雑誌などで良さそうなアイテムを見つけ、ハンズで確認してから買うことも多かった。

ホームセンターの店内をゆっくり回るのが楽しい

ハンズにはいつも新しい商品があった。自分の生活とさほど関係ないモノだとしても、新しいモノとの出会いは楽しかった。

もちろん、新宿や渋谷にも東急ハンズはあるし、同じ池袋の西武百貨店にはLOFTが入っているので、たとえハンズがなくなったとしても買い物そのもので困ることはない。

しかし自分にとって、時間をつかって遊べる場所が1つ減ってしまったことは、非常に寂しいのである。

考えてみれば、僕は東急ハンズを始めとして、様々なホームセンターに行くのが、ほかの人よりも好きかもしれない。

みなさんが銀座や表参道を歩いてウィンドウショッピングを楽しむのと同じように、僕はホームセンターに行って様々な品物を見ることを楽しんでいる。

特になにか目当ての品物があるわけではないが、ホームセンターをゆっくり歩きながら、並んでいる商品を見るだけで楽しい。

「1日中いられる」とは言わないが、1、2時間、ゆっくり店内を回って、いろいろ想像しながら楽しむのだ。

特に好きなのは、キッチン用品のコーナーで、このフライパンでどんな料理を作ろうかなどと想像する。フライパンばかりたくさんあってもしょうがないので、ほとんど買わないけれども。

以前、DANROで「料理がつらい」という記事を書いた。それと矛盾するように聞こえるかもしれないが、実際に料理をするときは1人暮らしの寂しさが想起されてつらいのだけれど、想像の中で楽しむ「エア料理」は掛け値なしに楽しいのである。

キッチン用品と同じく、掃除用具のコーナーも楽しい。だが、実際の掃除は好きではない。このように、ホームセンターで家庭用品を見ているときは、現実の自分の生活ではなく、理想の自分の生活を考えていることが多い。

ただ、ときには想像ばかりではなく、実際に必要なモノを買う。特に金具類や掃除用具などは、サイズ感が重要なので、実物を確認できるホームセンターで買うことが多い。

自分で家具を作ったりする大がかりなDIYはしないが、家の機能を保つための小規模な修繕にホームセンターは欠かせない。

1年くらい前。台所の収納戸棚のドアを止める部分が破損したので、磁石式のドアキャッチをホームセンターで購入して、自分で取り替えた。

「いつでも行ける場所」にホームセンターがあってほしい

一方で、部品のサイズが分かりやすく規格化されているものは、ホームセンターで探すよりもネットで探すことが多い。

つい先日、台所の水道のパイプを取り替えたときは、ネット通販を利用した。

そのときは、水道の吐水口にキッチンシャワーを取り付けたかったのだが、そのまま取り付けると、麦茶を水出しするために使っている2Lの冷水筒が吐水口の下に入らなくなってしまう。なので、吐水口の高さを上げることができる、斜めのパイプをネットで購入した。

水道のパイプのように規格の分かりやすいものは、品揃えの観点から見て、ネットで買う方が便利なのである。

ときには、都心から少し離れた巨大なホームセンターに、わざわざ電車を乗り継いで行くこともある。

そこには都心のホームセンターでは見られないような商品が並んでいる。面積も広いので、ゆったりと楽しめる。また、巨大ホームセンターの中を歩くだけでも結構な歩数になるので、なまじ近所を散歩するよりも歩く距離は稼げたりする。

大きなホームセンターの近くには別のショッピングセンターなどがあることが多いので、近隣の施設も合わせれば、それこそ本当に一日中楽しめる。

ひとり暮らしをしていると、生活の様々な雑事は自分ひとりで解決するしかない。

ホームセンターは家族連れにも嬉しい場所だろうが、ひとり暮らしにとって、欠かせない存在である。

たとえ、ホームセンターに行っても何も買わないことが多いとしても、必要になったときに「そういえば、あそこに売っていたな」と思い返して、買いに出かける。

ホームセンターとは、そういう繰り返しの場所なのだと思う。

そう考えると、確かに都心から少し離れた巨大ホームセンターは楽しいところではあるが、少なくとも僕にとっては「繰り返しの場所」ではない。いつでも行ける場所にホームセンターがあることが重要である。

確かに、品揃えだけで言えばネットで十分だろう。今後、地代が高くて、郊外よりも品揃えを揃えづらい都心のホームセンターは減っていく可能性が高い。

しかし、生活の一環としてのホームセンターという場所は、僕にとって欠かせない存在だ。それだけに池袋のハンズが閉店したことは残念だし、都心のホームセンターにできるだけ生き残ってほしいと思うのである。

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