田端銀座でスロベニア産ワイン 大人の週末、ひとり昼酒
下町風情を残す東京都北区の田端銀座商店街。あちこちに、昭和の時代にタイムスリップしたような、懐かしい光景が残っています。
その中で、思わず「ハイカラな」と形容したくなるワインショップ「qenohi」(ケノヒ)があります。金・土・日曜日の午後1時から午後7時までの週末限定営業ですが、買い物帰りにひとりでふらりと訪れてワインを楽しむ、週末の贅沢な時間を過ごす人々で賑わっています。(取材・吉野太一郎)
1000円台、コスパ抜群
店名の由来は、普段通りの日常を意味する「褻(ケ)の日」。昨年4月にオープンしたこの店では、「普段使いのリーズナブルな美味しいワインを扱いたい」と、1000円台を中心にしたボトルワインを約20種類、販売しています。
味はどれも洗練されて飲みやすさ抜群。店を切り盛りする斉藤恵子さんが「必ず試飲したものを並べていますから」と胸を張るワインは、ブランド銘柄ならもっと値が張りそうなものばかり。イタリア、フランス、チリ、アルゼンチン産など産地は様々です。
3人も立てばいっぱいになるカウンターで、試飲ができます。日替わりの3種類でグラス1杯500円前後。飲めるのは1種類1杯までですが、午後3時までは3種類で1000円のお得なセットもあります。クリーミーなフランス産ブリーチーズのおつまみ(300円)もおすすめ。
注目はこの店が直輸入しているスロベニア産ワイン「クェルクス」。人口約200万人、四国とほぼ同じ面積の小さな国ですが、イタリアとの国境に近いワイナリーで、質の高いワインを生産しています。知名度が高くないためお手頃価格なのが有り難い限り。
「好みの1本を見つけて」
斉藤さんは、エアロビクスのインストラクターや都内のカフェバー経営などを経て、還暦を迎えた4年前に一度は引退。長野県で野菜作りを始めましたが「まだもっと働ける」と思っていたところへ、娘から商店街の空き店舗で「店をやらないか」と勧められ、ワイン輸入業を営んでいた知人からも「事業を継いでほしい」と頼まれました。
「ワインを紹介するために、この価格でお出ししていますけど、ワインの好きな人、特に若い人とも話ができて、世代を超えて仲良くなれるのがうれしい。生きがいを感じます」
ワインは銘柄や産地、ブドウの品種など、種類が多くて難解な印象もありますが、斉藤さんは「難しく考えないで」と言います。「ご自身の好みでいいんですよ。日替わりの3種類を毎週末飲み比べて、詳しくなったお客様もいます。ぜひ好みに合った1本を見つけて頂きたいですね」