インスタで人気の「独身アラフィフ男子」 背伸びしない「普段着ごはん」を毎日投稿

インスタグラムで毎日更新される色とりどりの料理写真。「アラフィフ男子のキッチン365日」の名前で投稿しているのは、普段マスコミの仕事をしている吉田正幹さん(52歳)です。

この4年間、料理などの写真を投稿し続け、現在のフォロワー数は1万1000人、投稿数は約1500になりました。独身アラフィフの吉田さんが料理を本格的に始めたのは5年前。料理が苦手でも、簡単においしく作れるコツを聞きました。

けんちん汁とカブの塩もみ(吉田さん提供)

40代後半で本格的に料理を始める

料理はもともと嫌いではなかったという吉田さんですが、これまでは外食が多い生活を送っていました。かれこれ30年ほど仕事をするうち40代後半になり、ある思いが芽生え始めたと言います。

「自分の名前で仕事をしたいと考えるようになりました。若い頃、役者になりたいと思っていましたが、今からその道に進むのは難しい。もう少し気軽に始められるものと考えたとき、料理だと思いました」

5年ほど前に本格的に料理をはじめ、同じタイミングでSNSにも料理の投稿をするように。ネーミングは「アラフィフ男子のキッチン365日」としました。

「アラフィフ男子のキッチン365日」のインスタグラム

「タイトルは『365日』とすることにしました。そう看板を掲げたからには、約束を果たすべく、これまでほとんど毎日、料理写真を投稿しています。ここまで続いていることに、自分でも驚いています」

コンセプトは「背伸びをしない普段着ごはん」。「おいしい」を大切にしているため、調理器具や調味料にも全力で頼ります。

「手料理を始めた目的は、節約のためではありません。食材にもこだわります。そのとき食べたいものを作るため、週の買い出し費用の平均は 5000~6000円ですね。でも、3食外食するよりは安いと思っています」

おすすめの料理器具と調味料

本格的に料理を始めるようになってから、使う調理器具と調味料が変わったそうです。そこで、料理をしたことがない人向けに、おすすめを聞いてみました。鍋や包丁などの基本の器具および、塩、コショウなどの常備調味料が自宅にあることを前提としています。

【調理器具】圧力鍋もしくは無水鍋

「カレーや煮込みがあっという間にでき、普通の鍋としても使えます。最初にトライしてもらいたいのはポトフですね。2食目は、牛乳などを足してアレンジしたらシチューなりますし、その後さらにカレー粉を入れたらホワイトカレーが作れます」

【調味料】塩昆布

「塩昆布は常備しておいてほしいですね。例えばキャベツが余ったら、混ぜるだけで一品料理になりますし、パスタにも使えます。食材が同じでも、見た目と味が変わると飽きません」

圧力鍋で作った「いわしの生姜煮」(吉田さん提供)

1週間の献立は10分で決める

吉田さんが週の献立を考える時間はわずか10分。その週に食べたいメイン料理と、付け合わせを考えることで、おのずと買うものが決まってきます。

「例えば、ハンバーグが食べたいなと思ったら、付け合わせは人参のグラッセにしようと決める。きっと魚も食べたくなるだろうから、バターソテー用に白身魚を買おう。バターソテーの魚は作り置きに向いていないから、これは週の前半のメニューにしよう、などパズルを組み合わせていくように献立を決めていきます」

献立を考える際、愛用しているアプリは「瞬間日記」だと言います。アプリにメモした内容がそのままスマホのカレンダーとリンクするため、管理しやすいそうです。

とはいえ、計画的に献立を考えても、突然飲み会などが入り、予定が崩れることもしばしば。そのときは、柔軟に考え、予定通りにいかなくても仕方ないと構えます。また、料理に気が乗らないときもあるとのこと。それでも、考えることは止めないそうです。

「そういうときに作ったのが『かきもち茶漬け』でした。豆もちにお茶漬けの素を入れただけです。手抜きなんですが、インスタグラムでは『このアイデア素敵!なんで思いつかなかったんだろう』といううれしいコメントがつきました」

インスタグラムに投稿した「かきもち茶漬け」。コメントは週に10前後寄せられ、「いいね!」は平均300~500がつく。(吉田さん提供)

料理と仕事に共通するのは「段取り力」

料理には「段取り」が大事だと吉田さんは言います。週末に1週間分の作り置きを準備するため、効率よく作るために頭を使います。

野菜などを包丁とまな板を使って切る場合、一度に全部済ませてしまうことで洗い物が少なく、時短になることに気づきました。

「その習慣が仕事に何らかの形で役立っているかもしれません」

これまで本業のメディアの仕事をしていた吉田さんですが、今後はそこに「料理」を追加し、二軸で進めていく予定です。どちらを軸足にするか、その時々でフレキシブルに変えていきたいと言います。

「不安はありますが、何とかなるのではという思いもあります。料理を始めるにあたり、影響を受けたのは作家の故・向田邦子さんでした。向田邦子さんのエッセイ『食わらんか』のある言葉が、今の気持ちのすべてを表していると感じています」

それは「まず気に入ったものをつくり、食べ、それからおもしろい本を読み、残った時間をやりくりして仕事をする」という言葉だと言います。

現在、自宅を小料理屋のようにして料理をふるまったり、作った総菜を近くのバーに置いたりしている吉田さん。自分のお店を出したい夢は少なからずありますが、実現に当たっての大変さも感じています。

「今したいことは、旦那さんが単身赴任だったり、子供が反抗期で話してくれなかったりする女性向けに、頑張らなくても作れる料理のヒント集を書いてみること。男性と女性では好む料理が違うと感じることがあるので、近い将来、その橋渡しができたらいいですね」

火鉢がある吉田正幹さんの自宅

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小野ヒデコ (おの・ひでこ)

1984年東京生まれ横浜育ち。同志社大学文学部英文学科卒業。自動車メーカで生産管理、アパレルメーカーで店舗マネジメントを経験後、2015年にライターに転身。現在、週刊誌やウェブメディアなどで取材・執筆中。興味あるテーマはアスリートのセカンドキャリア。英語は日常会話に困らない程度できます。

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