「売れ残った海産物を安く買ってほしい」カニカニ詐欺にご注意を

Photo by Yu Kato

ひとり暮らしの高齢者を狙った「オレオレ詐欺」が社会問題になって久しいですが、最近は「カニカニ詐欺」が流行っているようです。

東京で暮らす50代の女性・矢吹愛さん(仮名)のスマホに11月某日、「北海道の海産物会社」を名乗る奇妙な電話がかかってきました。

電話の主は、20代と思われる若い男性。東北地方の訛りがキツい、訥々としたしゃべりで、純朴そうな雰囲気だったそうです。

“海産物会社”からの奇妙な電話

その男性は、矢吹さんの名前を口にしながら、「以前、海産物を購入していただいた方に電話をかけています」と説明し、次のように続けました。

「今日、地元で海産物のお祭りがあったんですが、コロナの影響であまり人が集まりませんでした。売れ行きが悪かったので、商品が余ってしまっています。今回、特別にお安くしますので、買ってもらえないでしょうか」

男性の口調からは困っている様子がうかがえ、矢吹さんは少し話を聞いてみてもよいかな、と思いました。

“海産物会社”の男性のアピールは続きます。

「お届けしたいのは、カニ、イクラ、サケなどで、本当ならば、2万5000円ぐらいいただきたいところなんですが、今後もお付き合いいただきたいので、さらに大海老を10本つけて、東京のお宅までの送料もこちらで負担します。それで、1万5000円でどうでしょうか」

本当に2万5000円の海産物が1万円引きで買えるのならば、お得と言えるかもしれません。ただ、電話で話を聞いただけでは決断できません。

「どんな商品なのか、ネットで確認したい」と矢吹さんは要望しました。

ところが、男性は「特別に注文してくれた人だけに提供するものなので、ネットには載っていないんです」と回答しました。

なんか、おかしいな。矢吹さんに不信感が芽生えました。気になる点はほかにもありました。過去に北海道で海産物を購入した記憶がはっきりしなかったのです。

この10年間に2回ほど北海道に旅行したことがあるので、もしかしたらそのときに買った商品のことかもしれない。でも、確証はありませんでした。

怪しさがどんどん強まっていく

「以前、購入したということですが、何を購入したのでしょう?」

矢吹さんが尋ねると、男性は「5、6年前のことなので、内容まではわからないんです」と答えました。

やっぱり変だな。矢吹さんの疑念が深まりました。自分の名前と電話番号を知っていて、「以前、海産物を購入した」と言っているのに、具体的な商品の内容がわからないというのは不自然です。

男性は「いまここで買うと決めてほしい」という態度でしたが、1万5000円というのは安くない金額です。

もし買いたくなったら、こちらから電話すればいいのかと、矢吹さんは確認しました。彼女のスマホには「070」で始まる着信番号が表示されていたので、そちらにかければいいと考えていました。

ところが、男性の反応は意外なものでした。

「この電話は発信専用なので、この番号では受けられない」というのです。ますます怪しさが強まりました。

男性は「080」で始まる別の番号を口にしましたが、矢吹さんは外出中で書き留めることができませんでした。

「ショートメッセージでその電話番号を送ってほしい」

すると、男性は一転、「今日は特別にこの番号でも受けられるので、こちらにかけてください」と、これまた妙な回答をしたのです。

怪しさMAX! おかしなことが多すぎます。矢吹さんは電話を切りました。

多発している「カニカニ詐欺」

翌日、矢吹さんは、スマホの着信履歴に残る男性の電話番号をネットで検索してみました。すると、同じ番号で似たような内容の「怪しい営業電話」をかけられた人が何人もいることが判明しました。

「すごく訛った感じではなしてくる。以前買ったこともないのに、ご利用ありがとうございます。この度のコロナで漁師さんの海産物を捨ててるんでー、ご協力くださいますよね?とのこと」

「以前取引あった人に連絡とのことでしたが覚えなし。コロナで売上悪く漁師さんも気の毒とか、だらだらと勝手に話していました。仕事中だから、と断ると、そのままブチっと切り、かなり悪質です。押し売りです」

「漁師さんがとってきた海産物がコロナで売られずに困っています。などと言って20,000円以上の物を14,000円でお届けします。との事。いったん良いよと言ったのですが、調べたらそんな会社はなくて、電話番号も契約者の特定出来ない怪しい物でした」

このような苦情の言葉が、情報を集めたページに多数書き込まれています。

さらに「070 北海道 海産物」で検索すると、他の電話番号でも似たような目に遭っている人がたくさんいることがわかりました。

これらは「カニカニ詐欺」と呼ばれているそうです。

ネットでは、カニカニ詐欺の手口を紹介して、詐欺に遭わないように注意を呼びかけているサイトもあるので、一度チェックしておくとよいでしょう。

ひとり暮らしで、このような怪しげな電話がかかってきたとき、すぐに相談できる相手がいない人もいるかもしれません。もし「北海道の海産物を扱う会社」の見知らぬ人から電話がかかってきたら、カニカニ詐欺かもしれないと疑ってみてください。

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