ランニングを長く続けるコツとは 三日坊主ランナーからの脱却

ゆっくりと自分のペースで走る(イラスト・古本有美)
ゆっくりと自分のペースで走る(イラスト・古本有美)

柄にもなく走ることを始めた。もともと運動することや汗をかくことが好きではないので、ランニングなど全くもってやる気はなかったのだが、いくつかの理由が重なって心境の変化があり、とりあえず走ってみることにした。

実は過去に何度かランニングを習慣化しようと試みたのだが、いずれも長続きしなかったため、自分にはどだい無理なことだとあきらめていた。だが、汗をかかずに済むのとひとりでできるという理由から週1ペースで始めたプール通いは、自分でも不思議なくらい長続きしている。別に水泳が好きではないのになぜ続いているのかを考えてみたところ、いくつかの要因がみえてきた。

とにかく無理をしないことが続くコツ

何より大事なことは、決して無理をしないということである。泳いでみて、今日はもう少し頑張ってみようとか、先週よりも長く泳いでみようとか絶対に考えないように決めている。今日はもうそろそろいいかな、と思ったら時間が短くても上がるようにしているし、毎回何メートル泳いでいるかを決してカウントしないことにしている。

もともと水泳が好きなわけでもないし、特に何か目標があってやっているわけでもないので、とにかく無理はしない。これが今まで続いている大きな理由だと思う。

ある時など、あまりに早かったのか、プールの受付にいる女性に「えっ、もう上がったの?」と驚かれたことさえある。

そしてもう1つ、水泳の良いところは外部の情報が遮断された環境にひとりでいられることである。プールには携帯もなく、文字通り裸の状態なので、余計な情報が入ってこない。そのため、普段は考えないことをふと思いついたり、日常でなんとなく考えていたことを深めたりできる。こうした時間はなかなか貴重なものだ。

過去の失敗に学び、極めてゆっくりと走り始める

さてランニングであるが、これを始めたのは複数の小さな理由が重なったためである。初代Apple Watchからシリーズ4に買い換えたこと、たまたま図書館で村上春樹の走ることについての本を借りて読み始めたこと、そして気候が穏やかな季節だということ、こうした理由がなんとなくつながって、ふと走ってみたくなってきたのだ。

幸い自宅のすぐ隣に大きな公園があって、常に散歩やランニングをしている人々がいるので、走る場所には困らない。いざ走り始めるにあたって、水泳の教訓を生かし、決して無理はしないことに決めた。

実は過去に何度もランニングを試みているのだが、どれも長続きどころか三日坊主にすらならずに終焉を迎えてしまったのは、ひとえに己の限界にうかつにも挑戦しようとしてしまったからだ。

たまにしか走らないものだから、つい1回のランで元を取ろうとしてしまい、自分の限界をやや超えたペースで走っては、あまりに苦しいからもう二度と続かないということをくり返していた。

そこで今回は、決して無理をせず、ゆるゆるとしたペースから始めることにした。ワイヤレスイヤホン(AirPods)を装着し、Nike Run Clubというアプリを立ち上げてみて、ビギナー向けのメニューを選んでみた。

インストラクターの声を聞きながら走るのだが、初心者向けの内容なので決して無理はしないようにと指導してくれる。まさに私にぴったりのメニューだったので、そのやさしい指示に従いながら極めてゆっくりなペースで20分ほど走った。

走り終わった後もだいぶ余裕が残っていて、これなら続けられそうだと感じた。今回はインストラクターの声を聞きながらのランだったが、次は好きな音楽を聞きながら走ることにすれば、様々なことを考える時間にもなるだろう。

こんな自分でも続けられると思った矢先に

かくして私の人生で初めて、ランニングが持続することになった。走ることそのものを楽しめるようになったためだ。以前はやせなきゃ、体力を付けなきゃという他の目的のために走っていたのでまるで続かなかったが、今回は走る行為そのものが目的なので続けられるし、これがけっこう楽しいのだ。

休みの日、少し早めに目が覚めたら、まだ涼しいうちに走ってみるかという気になる。自分のペースに合いそうな音楽を聴きながら、ゆるゆると走って行く。

そしてひとりで走りながら、どうでもいいことを思い浮かべたり、普段は考えないようなことを吟味したり、ふと思わぬ発想がにじみ出てきたりもする。体を動かすことや、流れる景色、空気などの外部環境も相まって、脳の普段使わない部分が刺激されるような感覚だ。

走ることそのものがあんがい楽しいし、なんとなくいいことをしているような気分もあるし、何より運動が嫌いで過去に何度もランニングで挫折していた自分がランを続けられていることへの半ば倒錯的とも言える快楽心さえ芽生えてきた。こんな自分でも、健康で文化的な生活が送れるかもしれない……。

だが、幸福な日々はそう長くは続かない。こうして楽しく走ることを続けていたのだが、急に腰を痛めてしまった。初めはだましだまし走っていたが、とうとう日常生活にも支障をきたし始めたので病院で診てもらったところ、しばらくは走るのはやめましょうということになった。背に腹は代えられない。腰は大事にしないといけない。そういうわけでしばらくランニングはお預けとなってしまった。

ドクターストップがかかって、実は「もう走らなくて済む」とほっとするのではないかと我が身を疑ったのであるが、意外とそんなこともないようである。公園でランニングしている人たちを眺めては、また走りたいなと思うので、どうやらまだ続けられそうである。あとは腰が治るのを待つばかりだ。

この記事をシェアする

松本宰 (まつもと・おさむ)

編集者。住まいのマッチングサイト「SUVACO(スバコ)」とリノベーション専門サイト「リノベりす」の編集長。住宅に限らず、己が心地良い居場所を探し求めてさまよう日々。好きなものはお酒と生肉とラーメン。

このオーサーのオススメ記事

ひとり時間に「手紙」を書くと、ゆったりした時間が戻ってくる

なぜお酒を飲むのか? 外で飲めない今だから考えてみた

あえてひとりで挑戦したい、銀座・天龍の巨大餃子

個室のない私が「畳半分のワークスペース」を手に入れるまで

ウォークマンの不便さで、濃密だった音楽との付き合い方を思い出した

迷子というひとり遊びのすすめ

松本宰の別の記事を読む

「ひとり趣味」の記事

DANROクラブ

DANROのオーサーやファン、サポーターが集まる
オンラインのコミュニティです。

もっと見る