沖縄で初めて、名誉領事になったフランス人の話(沖縄・東京二拠点日記 35)
![カーミージーの海岸。](https://danro.bar/wp/wp-content/uploads/2020/04/12806194/site_big/2161f66fabf53b217e66ee79d60744b3.jpg)
8月31日 脳卒中を経験してから食い物が変わり、朝はバナナ。米の代わりに豆腐を食べるようになった。沖縄には、沖縄にしかない「島豆腐」があるのでちょうどいい。あたたかい島豆腐にかぶりつくのがぼくは大好きなのだ(あんまりチャンスはないけど)。体重を落として(炭水化物を減らす)血圧を下げるのは医者から指示されていることなのだが、島豆腐はまさにぼくにとって「命(ぬち)ぐすい」なのだ。
昼に県議会議員(4期)をつとめ、那覇市長選挙で翁長雄志氏と争った平良長政さんと会う。場所は首里にあるビルの2階。沖縄の戦後政治についていろいろとお話を伺う。話が止まらず、1階のクラフトビール屋「ウォルフブロイ」で(一口だけビールを飲んでしまった。美味すぎた)続きを聞いた。
夜は泊へ移動して、いつもの「串豚」で京都からやってきた作家の仲村清司さんと共同通信社の奈良祿輔(ろくすけ)記者(文化部)と合流する。仲村さんが「開発」かまびすしい那覇の街を歩き回ってレポートするのを共同の記者が書くという企画。ぼくは焼いも焼酎の「鬼火」を少しだけ舐めた。
書き出して迷ったら「ゆんたく」
9月1日 炎天下、写真家のジャン松元さんと合流して、宮城由香さんと小渡真由美さんを撮影するために浦添唯一の天然海岸カーミージーへ。ぼくはお2人に会って聞きたいことが少しだけあったので、美しい海岸で言葉を交わした。
他者の人生を切り取るとき、書き出すと微妙なニュアンスで迷うことが多々ある。ぼくに語彙がないせいなのだが、そういうときは会ってゆんたく(沖縄方言でおしゃべりの意)するのがいい。撮影後、近くのスタバで冷たいものを飲んで別れた。
栄町へ出向き、仲村清司さんと共同の記者と合流して「おとん」へ。「ルフュージュ」へ「おとん」の池田哲也さんもいっしょに流れたが、先にいた若い人たちのグループにやたらにぎやかなのがいて、店の中に嬌声が響いていた。客はいい迷惑だ。注意をしようとしたが、オトナは我慢。ほどなくして若い人たちはお客たちに「うるさくてすみませんでした」と謝って帰っていった。
最近、アルコールをほぼ飲まなくなったせいか、うるさい客がいると落ち着かなくなる。注意というか、静かにしてもらえませんかと飲み屋の客に言ったこともあるが、モメたりするのもめんどくさい。
9月2日 午前中は屋外カフェ「ひばり屋」へ。写真家のジャン松元さんが「琉球新報」の撮影。仲村さんと共同の奈良記者も来た。
共同通信の奈良記者が書いた記事(『琉球新報』2019年10月4日) から一部、引用したい。東京五輪に向けて「祝祭」の裏側にスポットを当てようという奈良記者の意図だ。沖縄発祥といわれる「空手」がどう扱われるのか、仲村さんと奈良さんが那覇を歩いて考える企画で、おふたりの指摘になるほどと思った。
「2016年に東京五輪の追加種目となり、沖縄出身選手の活躍が期待される。だが『結局“日本チャチャチャ”になるのかな。スポーツには本土との同化をもたらす作用がありますから』と仲村さん。五輪の裏でも進む辺野古新基地の問題が、盛り上がりにかき消される懸念がある。
県によると、沖縄発祥の空手は戦後、爆発的に世界中に広がったが、その過程で伝統的な『型』が崩れてきた。さらに、本来の『ムチミ(しなやかさ)』が失われつつあるという。 県空手道連盟副会長の島袋章雄さんに話を聞くと『五輪と沖縄のアイデンティティーを世界に発信する大きなチャンスですよ』とする一方、『沖縄空手がそのまま五輪競技になったわけではない』とくぎを刺した。島の伝統が国に利用されることへの警戒感も浮かんだ」
「ひばり屋」に「おとん」店主の池田さんもあらわれた。そのあとはジュンク堂で森本浩平さんと合流して近くの我部祖河食堂 (メーキそば発祥の沖縄そば屋をうたっていて、本店は名護市のはずれにある)で「まかないカレー」なる昼飯を食べた。いたってフツーのカレーだった。
途中で友人の在日コリアンの女性とばったり遭遇。彼女は沖縄と在日コリアンの研究をしていて、母と娘で歩いていた。なんでも知り合いの葬儀に来ているそうだ。夜はひばり屋さんに戻り、近所の桜坂劇場1階の「さんご座キッチン」でオーナーの辻佐知子さんにインタビュー。桜坂劇場の知り合いのスタッフに挨拶した。桜坂劇場は映画・雑貨、古本・やちむん・カフェがあるというぼくにとっては最高の空間。そして各種の市民講座も催している。
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フレンチ・マン・イン・オキナワ
9月3日 フランスの名誉領事のジスラン・ムートンさんを前島の事務所に訪ねる。ジスランさんとは友人を介して安里のちいさなイタリア料理屋で知り合った。あとで調べたら、沖縄のいくつかの大学で教えたりもしている。
昨日まで里帰りしていたそうだ。こちらの新事務所はジスランさんのフランス語教室「アンスティチュ・フランセ沖縄」。宜野湾市から引っ越してきたばかりで、ジスランさんはひとりで家具の組み立てをしていた。沖縄にはフランス国籍を持っている人が130人ぐらいいるそうだ。
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知らなかったのだが、8人いる日本のフランス名誉領事のうち7人は日本人で、ジスランさんが初めてのフランス人だ。それも最年少。その字の通りフランスと関わりの深い日本人の名誉職なのだ。ジスランさんが2017年に名誉領事になったことで、彼の主宰するフランス語教室は、個人営業からフランスの公的機関になる。彼を「琉球新報」の連載で取り上げさせてもらえないかと思っている。
帰りに歩いて「ちはや書房」に寄って何冊か古本を購入。SNSでぼくが脳卒中をやったことを店主の櫻井伸浩さんが知って心配してくれていた。いろいろ話していたら夕方になったので「すみれ茶屋」に寄って近海魚を煮付けたりしてもらって晩御飯を食べた。さあ、東京に移動したら脳のMRI検査が待っている。
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