「タトゥー、刺青の方はシャツ等を」 禁止ではなく「お願い」で先手を打った海水浴場

東京五輪・パラリンピックが開催される2020年。訪日外国人の増加が予想されますが、公衆浴場などでのタトゥー(刺青)規制について、さまざまな議論が交わされています。こうしたなか、タトゥーを規制するのではなく、海水浴客に「お願い」するかたちで抑制しようとしている海岸があります。
伊豆半島の南東にあり、近くに須崎御用邸もある風光明媚(めいび)な地、爪木崎(つめきざき)海岸。夏は海水浴、冬には水仙まつりでにぎわいます。
この海岸周辺を管理する須崎区の自治会は、近年ほかの有名な海水浴場で問題になってきた風紀の乱れが、この小さな美しい海水浴場にも及んでくる前に手を打とうと、2019年から、たばこ、飲酒、バーベキューのエリアを定め、刺青(いれずみ)やタトゥーをしている人にシャツなどを着るよう「お願い」する方針をとり始めました。同区の土屋磯雄区長は「トラブルはなかった。2020年も同じように運用したい」と話します。
規制条例で他県の海水浴客が流入
――爪木崎海岸では、2019年から刺青やタトゥーをしている人に隠すように「お願い」をするという、試みを始めました。きっかけはなんですか。
土屋区長:夏の海水浴シーズンの前に、下田市の担当者と白浜大浜、白浜中央などの海水浴場がある七つの地域の区長らが集まって海水浴会議をしています。その席上、ある区長から苦情が出たのです。2014年に神奈川県逗子市が海水浴利用者の刺青、タトゥーに関して「他の利用者を畏怖させるものは露出禁止」、飲酒を「砂浜では禁止」などと定めた条例を施行し、近隣の海水浴場も規制が厳しくなりました。
このため、下田に海水浴客が流れてきているようで、同時に風紀の乱れが見受けられるようになりました。サマーベッドをずらっと並べておいて、使用するとお金を請求する行為も横行していて、警察に来てもらっても、いたちごっこになっているということでした。
地元で「いけんだ浜」と呼んでいる爪木崎海岸は、市の条例で定められた海水浴場ではありませんが、夏には海水浴客が多く訪れます。今後、下田の他の海水浴場のような問題が出る可能性があると考え、先手を打とうと思ったのです。

バーベキュー、飲酒、煙草のエリアを策定
――実際にはどのようにしたのですか。
土屋区長:バーベキュー、飲酒、たばこのエリアをそれぞれ定めました。また、刺青、タトゥーをしている人にはシャツなどで隠してもらいました。注意するときは直接注意するのではなく、該当する人を見かけたらアナウンスで協力を呼びかけるようにしたのです。あくまで「お願い」という形をとりました。
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