和田彩花、アイドルグループ「アンジュルム」卒業し8カ月、ソロでの現在地

ソロで活動する和田彩花さん(撮影・斎藤大輔)
ソロで活動する和田彩花さん(撮影・斎藤大輔)

アイドルグループ「アンジュルム」を2019年6月に卒業した和田彩花さん(25)。2009年に前身の「スマイレージ」が誕生したときからのメンバーで、卒業までの約10年間、リーダーを務めました。卒業後はソロで活動します。

一方で、ふとしたきっかけで興味を持つようになった美術の探求にも力を入れており、大学院で研究を深めてきました。ソロになった心境と、ツアーにかける意気込み、アンジュルムへの思いなどを聞きました。(取材・上山崎雅泰)

ソロになり「自分を立たせる」

「ひとりで美術館に行った時は、ラジオで感想を一方的にしゃべってます」(撮影・斎藤大輔)
「ひとりで美術館に行った時は、ラジオで感想を一方的にしゃべってます」(撮影・斎藤大輔)

――ソロになって、グループで活動していた時との違いを感じますか。

和田:ソロだと、自分がいないと成り立ちません。だからこそ、臆することなく「自分を立たせる」必要があります。それができるのは大きいんじゃないかな。好きなものがハッキリしてるし、むしろ、みんなに合わせることは結構得意じゃないから(笑)。

――それでも、グループで長年活動されていました。

和田:でも、入ったきっかけは自分自身の意志じゃないです。物心つく前から入って、色んな考え方を吸収していくけど、それって自分の意志とは関係なくて。もちろん、その中でできることはあるけど、自分でやりたいことや「自分はこうだ」というのができてからは、ちょっと抑圧って感じてしまうこともあります。合わせることは、意識的にしていかないとできないタイプです。それでもグループが成り立っていたのは、メンバーのみんながいたからこそです。

大好きな美術を学び「現実」に目が向くように

「画家が残した色とか、画家ごとの感覚によって配置も違ってきます」(撮影・斎藤大輔)
「画家が残した色とか、画家ごとの感覚によって配置も違ってきます」(撮影・斎藤大輔)

――「自分はこうだ」といった自意識が芽生えたのは「美術」がきっかけだったそうですね。

和田:美術を勉強するため、大学に行ったことが大きかったです。「印象派の父」と呼ばれるエドゥアール・マネが好きなんです。

――そもそも、美術に興味を持ったきっかけは?

和田:東京駅に貼ってあった展覧会のポスターです。2010年春のことです。ある日、レッスンの時間を間違えてしまって、早く駅に着いたから、マネの展覧会を見に行きました。自分で行きたいというよりも、偶然という感じです。でも実物の絵を見て、心打たれました。

マネは美術界で近代を切り開いていった画家です。マネを通じて近代について調べていくと、現在につながる動きを確認することができます。さらに、マネがやったことって、自分の身近なテーマにもつながっていくことに気付きました。

ーーどういうことですか?

和田:少し説明させて下さい。マネの少し前の画家、クールベは「現実」にすごく目を向けました。それまで絵画は「理想」を実現するための世界でしたが、「現実」という視点を入れました。マネは、もっともっと身近な、目にするものを絵画に描いていくことを実践したんです。

さらに、絵画は何を描くかという主題と、何で描くかという二つから出来ています。絵の具のゴツゴツした感じや、筆の跡といった造形につながるところです。そのバランスが時代によって少しずつ変わってきた。それを知ることがすごく楽しいです。

――そうした考えを自分に引きつけてみた?

和田:ステージに立って、ある意味「虚構」を思いっきり作っている立場の人じゃないですか、私って。長らくそういう世界にいたからこそ、もちろん虚構にすることで伝えられることはあるけども、やっぱり、自分の生活だとか、自分自身とか、そういう「現実」は切り離せません。切り離すことで、何か表現できるとは私は思わない。だから、現実に目を向けることは、すごく大切だなと気付いたんだと思います。

「絵の具とか、筆の跡とかで画家のクセが分かる。そうした造形美がすごく好きです」(撮影・斎藤大輔)
「絵の具とか、筆の跡とかで画家のクセが分かる。そうした造形美がすごく好きです」(撮影・斎藤大輔)

――ところで、大学院では修士論文が大変だったそうですね。

和田:先日、ようやく書き終えました。マネのひとつの作品がテーマです。1年休学しましたが、2年間を通して、ずっとそのテーマと向き合ってた感じがします。芸能活動との両立にはなったけど、うまく調整しながらやりました。

――満足いく内容になりましたか?

和田:説明しにくい部分をどう説明していくかは、すごく難しかったです。自分では分かってても、先生は私の論文を読んでも分からない。何度も指摘されて、何度も書き直しました。すごく大変でした。終わってみてからも、そんなに達成感はないし、正直、もっとできたかもしれないという思いもあります。でも、ちょっと悔しさが残ってるからこそ、そういう部分を通じて成長していければいいなと思います。

いつかメンバーとの接点作りたい

「人生の選択はひとによって違う。それぞれだけど、それはとっても素敵なこと」(撮影・斎藤大輔)
「人生の選択はひとによって違う。それぞれだけど、それはとっても素敵なこと」(撮影・斎藤大輔)

――(2020年)2月24日から初のソロライブツアーが始まります。

和田:名古屋、大阪、東京の3カ所です。カバー曲はなくて、全て作詞したオリジナルです。

――例えば、どんな内容の曲ですか。

和田:都市をテーマにした曲は、都市の中で、自分の痛みに向き合う、といった内容です。あとは、昨秋にあった30人ほどの限定のイベントから生まれたものもあります。8割が女性でしたが、色んなことを語り合うというものでした。その空気が本当に良くて、それをもとに書きました。今までのファンの方に来て頂くのはもちろんうれしいですが、そうじゃない人にも来て欲しいです。

「ひとりになったからこそ、意志があっての活動になるし、周囲に広がっていきます」(撮影・斎藤大輔)
「ひとりになったからこそ、意志があっての活動になるし、周囲に広がっていきます」(撮影・斎藤大輔)

――最後に。和田さんがアンジュルムを卒業されてから、メンバー4人が卒業、あるいは卒業予定です。多いですね。

和田:みんなのお姉ちゃん的には「色んな所に影響あっての卒業なんだよ」と思ってて、みんなにはそう教えたい。でも、自由奔放でいいじゃないですか? 卒業の仕方とか。面白いなあと思って見てます。それがアンジュルムだから。卒業のタイミングとか、自分の気持ちの通りにいく所は「らしくていいな」と思います。ファンと交流できるコミュティサイトだと、ファンの人たちは私よりも寛容な心なので、私もそう思わないと、と思いました。

――でも、ファンにとってはやっぱりさみしい。

和田:アンジュルムって、人が入れ替わるごとに空気が変わる、毎回コロコロ変わっていくところが素敵なところだと思います。卒業でメンバーの人生が終わる訳じゃないから。単純な夢ですが、またどこかでみんなで集まれればいいな、と思います。グループを結成するとかではなくて。みんなが色んな道で仕事をしていく中で、接点ができたらいいな。それがアンジュルムなんだろうな、と最近思います。だから、私がみんなとの接点を持てるように頑張って作っていきます。でも曲は歌わないです(笑)。

ひとりの時間とは「自分を知る時間」。「自分の趣味、趣向、関心の向きどころを知ることができます」(撮影・斎藤大輔)
ひとりの時間とは「自分を知る時間」。「自分の趣味、趣向、関心の向きどころを知ることができます」(撮影・斎藤大輔)

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