パンダが台湾にいた! こいつは自分が「かわいい」とわかってる

台北に住んでいる知人に「今度の台湾旅行では、動物園に行くつもり」と話したら、「へえ、台北に来てまで?」という反応だった。そういえば、台湾に行ったことがある人から、台北の動物園の話題なんて出たためしがない。

それでも、私は動物園に行きたいのだ。お目当ては昆虫館だ。でも、ネットで入場チケットの購入方法を確認していたら、パンダとコアラの写真が出てきた。パンダが台湾にいるなんて思ってもいなかった。

大雨の中、台北の「動物園」駅をでて5分ほど歩くと、台北市動物園の入口が見えてくる。その途中、コアラのマーチの巨大な看板や台湾固有の動物のオブジェを見かけたが、パンダに関連するものは見当たらなかった。やっぱりパンダはいないんじゃないか、という気がしてくる。

でも、いた。台湾には、パンダがいるのだ。

コアラ館の先にあった「パンダ館」

日本では、今年1月に上野動物園のパンダが中国に返されてから、パンダはどこにもいなくなった。泣いて見送る人がいたほど騒いでいたのに、今はもう遠い話になっている。なのに、台湾にパンダがいる、というのは不思議だった。

第一目的の昆虫館は、「蝶の谷」と書かれた展示の大半が屋外で、ジャングルの中の遊歩道を歩くような造りだった。大雨の中ずぶ濡れになりながら回り終えた後、ガイドマップ(日本語もあった)を見ると、パンダ(大猫熊)館は、コアラ(無尾熊)館のすぐ先にあることがわかった。

2階建ての、堂々たる建物だ。広々とした建物の中に入ると空調が完璧に効いていて、土砂降りの外とは別世界だった。パンダの運動場は広く、遊具もたくさんある。

殺風景なコンクリート建物のコアラとの扱いの差が歴然としていて、ちょっと笑ってしまった。さすがパンダ様、である。

上野で見たパンダはお尻を向けて寝ていた

上野動物園でパンダを見たのは、小学生のときだ。コンクリートのベッドのようなところで、ひたすら寝ていた。こちら側にお尻を向けたままで、動きもしない。かわいいとは思えなかった。大人たちが大騒ぎするほどのものか、と子ども心に首をかしげた。

それから数十年後の台北市動物園。目の前にいるパンダは、ちょこまか歩きまわり、じっとしていない。時折、丸太につかまって立ち上がり、ポーズを決めた。パンダって動くんだ。当たり前のことなのに、それが意外だった。

2階席まで視線を送る「アイドル」

パンダ館の1階は、ガラス越しに運動場を見られる。雨が激しかったためか、それほど混んでいなかったので、目の前の人に邪魔されずにパンダが動く様子をじっくり見ることができた。

順路にしたがって、2階へ続く螺旋スロープを上がっていくと、カフェがあった。窓側の席に座ると、ガラスの向こうに、さっきのパンダが見えた。パンダを見ながら食事ができるんだな。そう思いながら、やっと落ち着いてお茶を飲みはじめた。

そのとき、視線を感じた。

パンダがこちらをじっと見ていた。2階の席まで、ちゃんと目線を送るアイドルのように。こいつは、わかっている。自分がかわいいと、ちゃんと知っている。1階の観客だけでなく、2階まで目線を配る。さすがパンダ様。ファンサが過ぎる。

ケーキを食べながらパンダを眺める

年を重ねると、ライブをアリーナ席で見るよりも、スタンド席で座りながら見たいと思うようになる。パンダを座ってゆっくり眺められるなんて。こんないい席が、台湾にはあったのだ。

気がついたら、甘いものが好きでもないのに、特製のパンダケーキを注文していた。200台湾ドル、日本円で約1000円。にわかファンが、高額なグッズを買ってしまったようだ。頭が痛くなりながら、ケーキを食べた。

どうにか食べ終わったころ、私が座っている窓際のテーブルは満席になっていた。若いカップルが中国語で話しかけてきた。たぶん「席を譲ってくれ」という意味だろう。パンダを十分に堪能したので、すんなり席を譲った。私のファンミはこうして終わった。

台北に行くなら動物園へ

それにしても、日本であれほど騒がれたパンダが、東京から飛行機で4時間の台北の動物園で、ひっそりと待っている。なぜこの事実が、もっと広まっていないのか。

後で知ったことだが、台北市動物園には、パンダが3頭いる。母親の圓圓(ユエンユエン)と、その娘である圓仔(ユエンザイ)と圓寳(ユエンバオ)だ。私が見たのは、そのうちの2頭なのだが、うっかりしていて名前を確認し忘れてしまった。

台北に行くなら、パンダに会ってみる。そのために半日を使う価値はあると思う。

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