43歳のおっさん、100mを全力で走る!写真判定機で測ってみた!

写真判定で計測する100メートル走。結果に文句をつけられない

もう20年以上、全力で走ってないな……。テレビで「運動神経悪い芸人」を観ていたときに、ふと思いました。運動神経が悪い人たちを観て笑っているお前は、いったいどれだけ動けるんだ、と。

そこで、100メートル走のタイムを計測してみることにしました。

ネットで調べたところ、「全国統一かけっこチャレンジ」というイベントが、各地で開催されていることがわかりました。各地の競技場などが主催し、スポーツ庁が後援する、わりとちゃんとしたイベントです。

50メートル走の部と100メートル走の部があり、写真判定装置で計時してくれるそうです(「計時」という言葉も今回初めて知りました)。3月に神奈川県の「柳島スポーツ公園」で開催された回に、100メートル走の部でエントリーしました。

中学時代は「足が速い」ほうだった

小学生のころ、足が遅かった筆者は「かけっこ」が嫌いでした。あまりに遅くて、小学4年の体育の授業で50メートル走をしたとき、先生から「本気で走っていない」と叱られたくらいです。母親は「私は陸上部だったから、あんたも速く走れるようになる」と励ましてくれましたが、子ども心に「頼りない理屈だなぁ」と思っていました。

ところが中学生になると、少しコツのようなものがわかり、走るのが楽しくなりました。顔全体で風を感じるような走り方ができるようになったのです。

それとともに記録も伸びました。中学2年生のときには、100メートルを「13秒6」で走れるようになっていました。これは「どちらかといえば速い」といっていい記録でしょう。うれしかったので、今でもタイムをおぼえています。ちなみに、中学生記録は10秒75(1991年)だそうです。

43歳になったいま。年齢は当時の約3倍になり、体重は7キロ増えました。運動といえば週1、2回のジム通いくらい。たばこは吸いませんが、お酒はガブガブ飲んできました。

なにひとつポジティブな要素が見つからないものの、「15秒台は出せるだろう」という予感だけはありました。

「100メートル走に出る人たちはガチ勢」

3月14日、朝。JR茅ヶ崎駅からバスで会場に向かいました。バスには「かけっこ」に挑むのであろう人たちが、4、5人いました。筆者と同世代とみられる人もいれば、若い人や女性の姿もありました。天気は快晴。富士山がとても大きく見えました。

出場者のリストによれば、この日100メートル走に参加するのは、約200人。下は5歳から上は79歳までいました。

おのれの実力を知らされる前に撮った写真

受付を済ませると、着替えて競技場の一画でウォームアップです。筆者の「出走」は11時10分。それまで約30分、時間がありました。とにかくケガだけはしないようにと、まずは入念に準備運動をしました。

それから10数メートルの距離を何度かダッシュしてみると、少しずつ走る感覚を思い出してきました。腕を振る、太ももを高くあげる、そして足の裏の先の部分で走る。そんなイメージがよみがえってきました。

いつのころからか、足の裏をベタっと地面につけて歩いたり、走ったりするようになっていたのだと気付きました。

中学・高校時代は、いわゆるヤンキーにからまれても瞬時に逃げられるよう、もっと軽やかに歩いていたことを思い出しました。大人になって余裕が出てきた証(あかし)なのかもしれませんが、でんと構えすぎて重心が後ろに偏っていたようです。

ひとりでダッシュを繰り返していると、若い男性のグループから「100メートルの部に出る人たちは『ガチ勢』だからね」という声が聞こえてきました。彼らは50メートル走の部に出場するようです。ここへきて、少し不安が募り始めました。

40代のおっさんたちがスタートラインに並んだ

やがて、筆者を含むグループへの集合アナウンスがありました。ゲートに到着すると、走る組ごとに並びます。

同じ組で走るのは、筆者を含めて6人。リストによれば、ひとりが42歳、その他5人は43歳でした。隣のレーンで走る人を見ると、太ももの筋肉が筆者の腹まわりぐらいありました。「これが『ガチ』の人か」と、先ほど漏れ聞いた会話に納得しました。

いよいよ「出走」です。スターティングブロックを使う人もいましたが、筆者は使い慣れていないので、使いませんでした。それでも、体をかがめるクラウチングスタートでスタートを切りました。なかには立ったまま「かけっこ」のかたちでスタートする人もいました。

電子ピストルの音が鳴ると、一気に駆け出しました。隣の「太ももの人」はすごい速さで、すぐに置いていかれました。腕を振って足をあげて、全力で走ります。ただ、走ってはいるのですが不思議と「風」を感じませんでした。

全力で走るおっさんたち(中央が筆者)

また、前を走る人たちとの差がまったく縮まりません。「あれ?」と思っているうちに終わった感じです。

ゴールには写真判定のマシンがあって、あとで記録証が発行されるのを待ちます。走者はその場で解散です。

と、まもなく太ももが筋肉痛に襲われました。走り終えた直後であるにもかかわらず、です。おそらく、ふだん使っていない筋肉がびっくりしたのでしょう。結局、痛みは5日間ほど続きました。

1位の人に10馬身くらい差をつけられた

30分ほど待ったでしょうか。筆者の組の記録証の完成を知らせるアナウンスがありました。記録は「16秒28」! 

体感として中学のころほど速くないことは覚悟していましたが、それでも思っていたよりも遅く、ショックでした。

記録証と一緒に渡された写真判定の紙は、自分が競走馬になったようで面白かったのですが、先頭の「太ももの人」とは10馬身くらいあけられていることもわかりました。

1位の人は12秒台でゴール。同年代なのに4秒近く差があった

「若いころは走るのが速かった自分」はどこへ行ったのでしょうか。

茅ヶ崎からの帰り道は、ずっと結果を引きずっていました。帰宅してネットで調べてみると、筆者の記録はどうやら40歳代の平均くらいで、決して遅くはないのですが、それでも43歳はまだ40代の前半です。それを考えると、もっと速く走りたかったという思いがあります。気分としては「完敗」でした。

今回のイベントでの記録は、公式な記録とはならないようですが、マシンで計っている以上、いいわけはできません。せめてこれからの人生、なにごとも全力を尽くして駆け抜けたいと思います。

……というか、来年も絶対、この「かけっこチャレンジ」に出るからな!

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土井大輔 (どい・だいすけ)

ライター。小さな出版社を経て、ゲームメーカーに勤務。海外出張の日に寝坊し、飛行機に乗り遅れる(帰国後、始末書を提出)。丸7年間働いたところで、ようやく自分が会社勤めに向いていないことに気づき、独立した。趣味は、ひとり飲み歩きとノラ猫の写真を撮ること。好きなものは年老いた女将のいる居酒屋。

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