「いじりに負けたくない」冬でも「ホットパンツ+タンクトップ」で街を歩く理由

「かなけん」さん(かなけんさんのブログより:新型コロナ感染拡大前に撮られたもの)

ピチッとしたタンクトップに、超ミニのホットパンツ姿で街をかっ歩する男性がいます。タンクトップは身長110cmのキッズ用のもの、ホットパンツはサイド丈10cmというこだわりぶりです。

男性は、かなけんさん。写真の印象では現在43歳の筆者と同年代か、少し年上に思えますが、年齢・職業ともに非公表とのことです。私服で出かける際は、自ら「Cool&Active(クールアンドアクティブ)」と名付けたこのファッションを貫いてきました。冬の寒い時期でもベストを羽織るだけ。スケートやスノーボードに出かけるときも同じ服装です。

この独特のファッションの原点は中学時代にさかのぼります。かなけんさんは、小学校に入ったばかりの弟に被服費をまわすため、必要に駆られてタンクトップに半ズボンで過ごしました。いつしかそのファッションに誇りを持つようになり、現在に至ったそうです。

ときには好奇の目にさらされ、「恥ずかしい」と思うことがあるというかなけんさん。それでも己のスタイルを貫き通してきた理由について聞きました。

(かなけんさんのブログより)

「かっこいい」と言ってくれる人も

ーーホットパンツにタンクトップというファッションが生まれたきっかけを教えてください。

小学生のころからずっと短パンを履いていたというのがありまして。大人になってからもそれを続けてきちゃったというのが、正直なところなんですけれども。ただ、それだけでここまで続けられたというわけでもなくて。

子供のころ、いわゆる半ズボンを履くのは小学生までだったと思うんです。当時でも中学生になるまで履いていた人は他にいませんでした。だから、からかいの対象になったんですけど、そのときに「半ズボンでも負けないぞ」という気持ちが芽生えて。それが今まで続いたきっかけかなと思います。

ーー弟さんに被服代をまわすために始めた「半ズボン」姿が、なぜ「かっこいい」と思えるようになったのでしょうか。

やっぱり冬ですよね。寒いのに頑張ってるというところ。そして自分としては頑張っているんだけれども、周りの人にはそれがわからない。どれだけ頑張ってこの格好をしているのかを理解してもらえない。そのギャップからだと思います。

ーー「理解されないかも」と思いながらも続けてきたということですね。

そうです。理解されにくい状況のなかで、自分としては頑張ったわけです。「こいつ、なんで中学3年にもなって、半ズボンなんて履いてるんだ?」と思われながらも。こっちとしては、笑われても寒くても続けるっていうのは大変なことなんですけどね。

でも、当時からそれをわかってくれる友だちとか女子もいたんです。「そういうところ、かっこいいね」って。すると、自分がやっていることはすごいことなんだなって思えるようになってきたんです。

(かなけんさんのブログより)

ーーかなけんさんは「ファッション」というものをどうとらえていますか。

有名デザイナーなんかは皆さんそうだと思うんですけれども、絵画とか彫刻と一緒で、やっぱり「表現」だと思うんです。自分は有名デザイナーと同列ではないですけれども、寒くても薄着で頑張るというファッションを表現としてやっています。ふだんからそれを意識しているわけではないんですけれども、やはり表現だと思います。

ーー下はいつもホットパンツだとして、上着はどこまで厚着していいか、決めているんですか?

長袖は着ちゃダメってところですね。

ーーベストまではOKということですね。

そうです。全体の見た目で意識しています。シャツとベストの色がかぶらないようにするとか。シャツが黒ならベストは白とか、逆にシャツが白系ならベストは濃い色とか。

ーー靴や靴下にもこだわりがあるように見えます。

それもやっぱり全体のシルエットで。当初はレッグウォーマーをしていたんですね。ふつうのソックスだと太ももの筋肉やふくらはぎのボリュームに対して、足首が細く見えるんです。そのシルエットが気に入らなかったので。

レッグウォーマーが古くなったので同じようなものを探したのですが、気に入ったものが見つからなくて。たまたまルーズソックスが売っていたので、「ちょうどいいや」って感じで、今はルーズソックスを履いています。白なのでやっぱり肌色と合うんですよね。色彩として合う。今度は靴を何色で合わせると良いかなと考えて、赤系だなと。靴は赤で合わせるようにしています。

ーー露出が多い脚のほか、腹筋や腕をかなり鍛えているようですね。

一時期はランニングに凝っていましたが、今はまったく鍛えていないんです。ただ、これは今までのメディア出演や自分のブログでは明かしていないんですけど、18歳から22歳まで自衛隊にいたんです。陸上自衛隊の第一空挺団っていう部隊に4年間在籍していました。その当時にものすごく鍛えたので、それが今でも残ってるのかなと思います。

(かなけんさんのブログより)

「出かける前には鏡の前で気合いを入れる」

ーーかなけんさんの生き方や考え方には、なにかの影響があるのでしょうか。

誰かの影響というよりも、自分のなかで生まれたものだと思います。というのも、中学生のころにかなり「いじり」があったものですから。ブログにも書けないほどの激しい「いじり」でした。それには負けたくないというのが大きかったと思います。

大人になってからも、街に出れば笑われることもありますけど、中学生のころの「いじり」に比べたら、全然たいしたことじゃない。中学生のころの「絶対に負けない」という気持ち、それが原動力になってるのかもしれないですね。

ーー「もうやめよう」と思ったことはないんですか。

ちょっと思うことはあります。笑われたり、すごく寒い日だったり。冗談で「ユニクロでズボンを買っちゃえば楽になれる」なんていうこともあります。でもそこに逃げるってことはないですね。

ーー仕事中や自宅で過ごすときも同じ服装なのでしょうか。

仕事はスーツを着なければならないので、ふつうにスーツを着ています。家のなかではもっとラフな、ひざ丈ぐらいのジャージみたいなものを履いています。ただ、私用で外に出るとき、ちょっとコンビニに出かけるときには着替えています。

ーーブログでは「毎朝鏡に向かってからでかける」と書いていましたね。

服を着替え終わったあと、全身が写る鏡の前に立って、はみ出ちゃいけないところがはみ出てないかとかチェックするんですけれども、そのときに「よし、今日も頑張るぞ」ってあらためて気合いを入れる。そんなイメージです。

笑われたり、写真を撮られたり、変な人たちにからまれたりするので、家を出る前はやっぱり不安があるんです。弱気な部分が必ず出てくるんですね。

ーー盗撮されたり、SNSでさらされることについては、どう思っていますか。

最初はすごく嫌だったんです。写真だけでなく、そこに添えられる言葉が「変な人がいた」みたいな感じなので。でもよくよく考えてみると、こんな格好をして外を歩いてる人がいるんだっていうのを知ってもらわないと、こうしたファッションが広がることがないと思うようになったんです。最近は広める、PRするための媒体としてなら、「さらされる」ことも使えるんじゃないかと思っています。

ただ、無断で撮影するんじゃなくって、ひとこと声をかけてくれれば、こっちも「好きなだけ撮ってもらって構わない」という気持ちはあるんです。実際に、街なかで「写真を撮らせてください」って言ってくれる人もいるんですけれども、そこで会話が生まれたり、「頑張ってください」って言ってくれる方がいたりする。声をかけてくれたほうがお互いに気持ちよく写真を撮れるんじゃないかなと思っています。

(かなけんさんのブログより)

ーー「Cool&Active」をやってきて良かった、と思うのはどんなときですか。

声をかけられたときとか、家に帰ってお風呂に浸かりながら「今日も一日、よく頑張ったな」って思うときですね。寒かったり恥ずかしい目に逢ったりしても、めげずに頑張ったなという、その達成感は毎回あります。

ーーかなけんさんのように自分を貫くことは、難しいと思うのですが。

自分がどこまでそれをやりたいのかっていう、その本気度ですよね。どんなことをやるにしても、反対意見とか障害とかがあると思うんですけれども、それでも自分がやりたいんだという気持ちをどこまで強く持っているのか。結局は、誰かの言葉に負けるというよりも、自分のなかでそれをやりたい気持ちが折れてしまうかどうか。最後は自分との戦いなんじゃないかなと思います。

ーー自信を持てない人たちに、かけられる言葉はありますか。

ひとつは、こんな私でも、かなけんでも自分を貫いてるんですから、皆さんだったらもっと自分を貫けるはずだと思います。あと、最後はやっぱり自分なんですよ。本当にやりたいんだったら他人の意見なんか聞かないで、頑張って貫いてほしいですね。

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土井大輔 (どい・だいすけ)

ライター。小さな出版社を経て、ゲームメーカーに勤務。海外出張の日に寝坊し、飛行機に乗り遅れる(帰国後、始末書を提出)。丸7年間働いたところで、ようやく自分が会社勤めに向いていないことに気づき、独立した。趣味は、ひとり飲み歩きとノラ猫の写真を撮ること。好きなものは年老いた女将のいる居酒屋。

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