「プロレスで無限に成長したい」次代のスター候補・吉田綾斗がローカルインディーにこだわる理由(プロレス月光物語 2)

(写真提供・吉田綾斗選手)

日本のプロレス界にはメジャーからインディーまで、実に140以上の団体が存在しているという。この世界での生き残りをかけて日々活動する。その中には、地方に拠点を置く「ローカルインディー」と呼ばれる団体もある。

千葉市をホームリングとしている2AW(ツー・エー・ダブリュー)は、そんな地域密着型のプロレス団体の一つである。

前身は、世界最大のプロレス団体WWEで活躍したTAKAみちのくが創設した「KAIENTAI DOJO」。2019年に「2AW」と名前を変え、新たなスタートを切った。現在は千葉市内のプロレス会場「2AWスクエア」で、熱気のある闘いを繰り広げながら、福祉施設訪問など社会貢献活動にも取り組んでいる。

この2AWのエースとして最前線で闘っているのが、吉田綾斗だ。183cm、98kgの屈強な肉体とスター性のあるルックス。レスラーになる前に総合格闘技やキックボクシングで培った格闘センスが光る逸材だ。

かつてシングルマッチで対戦した新日本プロレスの永田裕志は、吉田について「将来が期待できる原石。今後、日本プロレス界を背負って立つ人材になるのではないか」と高く評価している。

メジャー・インディーの枠を越えて、今後の日本プロレス界を背負う可能性を秘めた期待の星。まだまだ潜在能力を秘めた次代のスーパースター候補と、私も注目している。

2018年の秋には、私がナビゲーターを務めたトークイベントで、吉田にゲストの一人として登壇してもらった。そのときは想像以上のトーク力を披露し、イベントを盛り上げてくれた。

「スタイルは一つにとらわれたくない。アメプロ(アメリカンプロレス)であっても違うものであっても、自分に合うものは取り入れたい。ゴール(引退)まで、自分が得られるものはどんなスタイルでも得たい」

こんな発言に、吉田のプロレスに対する貪欲な態度が現れている。その一方で、イベント後の飲み会では写真撮影に応じたり、質問に丁寧な答える姿も印象的だった。

彼のポテンシャルは間違いなくメジャー級だ。それなのに、未だにインディーに残り、所属団体の底上げのために尽力している。私には「なぜ、ローカルインディーに残ろうとしているのか?」という疑問があった。

プロレスラーになってたくさんの人の感情を動かしたい

吉田は少年時代、テレビゲームがきっかけでプロレス好きになった。だが、将来の職業として、プロレスラーを志望していたわけではなかった。「プロレスは観るもので、やるものではない」と考えていたからである。

サラリーマンになって、普通の人生を歩む。そんな平凡な夢を頭に描いていた彼の人生を一変させる出来事が高校時代に起きた。

「初めてプロレスを生で観に行ったんですが、そのとき、リングの中よりも観客の方に興味が湧いたんです。選手が入場したり、技をかけたり、勝ったり負けたりするたびに、客席が大きく盛り上がる。プロレスはこんなにたくさんの人の感情を動かすことができるんだと知って、プロレスラーになりたいと思ったんです」

この衝撃を機に、吉田は格闘技を始めた。大阪の「M-FACTORYアメ村ジム」でキックボクシングを学び、「Style」で総合格闘技を学んだ。Styleは、総合格闘技DEEPの元ウェルター級王者・池本誠知が代表を務めるジムだ。

吉田はこれらのジムで格闘技の基礎を身につけたが、高校を卒業したとき、すぐにはプロレスの世界に進まなかった。

彼が選んだのは、フリーター。道路工事やトラック配送を始めとする、肉体を使う仕事を転々とした。色々な仕事をしてみたいという気持ちを優先し、プロレスラーになる夢を保留したのだ。

そして、22歳。ついにプロレスラーになるため一歩を踏み出す。さまざまな団体の試合映像を見ているうち、目に止まったのがKAIENTAI DOJO(現2AW)の一戦だった。2012年4月8日の後楽園ホール大会、TAKAみちのく VS 真霜拳號。その激闘を見て、この団体でプロレスラーになりたいと強く思った。 

KAIENTAI DOJOのスタイルは、近年のプロレス界の潮流とは一線を画している。相手を頭部から垂直に落とすなど危険な技の応酬が多くなっている中、「大技連発をしないで一点集中攻撃」という異色のスタイルをセールスポイントにしていた。

吉田は「昔のプロレスと現代プロレスの融合を目指しているところに惹かれた」という。

2015年4月、同団体に入門。半年後の11月、同じく新人のダイナソー拓真とコンビを組み、タッグマッチでデビューを果たした。黒のショートタイツとレガースという新日本プロレスの柴田勝頼を彷彿とさせるスタイル。格闘技経験で磨いたキックとバックドロップを駆使して、頭角を現していった。

インディーの世界を主戦場としながらも、メジャーの雄・新日本プロレスのシリーズにも参戦した。気持ちのいい闘いぶりと真っ向勝負でファンと関係者の心をガッチリつかみ、「いずれ新日本に移籍するのではないか」という声が上がるほど注目を集めた。

吉田が籍を置くKAIENTAI DOJOは2019年、2AWに団体名を変更、体制も変わった。吉田の他団体への移籍も噂されたが、結局、団体に残る決断をした。彼は「2AWの吉田綾斗」というアイデンティティーを持って、プロレスラーとして生きているのだ。

「いろいろな事を経験したからこそ、わかったことがありまして。どんな時でも、帰ったらここが一番と思えるし、どんな時でも、皆がいると思って頑張れたんです。本当に好きなんですよ、この団体が」

2020年7月、TKPガーデンシティ千葉で開かれた大会で、吉田は王者である大日本プロレスの怪物・岡林裕二に挑戦。怪力を誇る岡林の左腕への一点集中攻撃で試合のペースをつかみ、中盤以降は岡林の怪力殺法を耐え抜いた。

最後はトラ―スキックから得意のバックドロップを決めて3カウントを奪い、「第3代2AW無差別級王座」を戴冠した。

「今後、このベルトを懸けて強い相手、バンバン倒して、防衛ロードを吉田綾斗の真のエースへの道とさせていただきますので、これからの2AW、これからの新チャンピオン、これからの吉田綾斗に期待してください」

試合後にマイクを握った吉田は、そう高らかに宣言した。

「プロレスで無限に成長したい」

2AWのエースとして、団体を牽引する吉田は「インディーは見る人が決めること。自分が決めることではない」と語る。

メジャーとインディーというカテゴライズではなく、代替の効かないオンリーワンの団体だと、2AWのことを捉えている。自身がインディーレスラーかどうかも眼中にない。あくまでも「2AWの吉田綾斗」なのである。

「今後どのようなプロレスラーを目指したいのですか?対戦したい相手はいますか?」

吉田に質問すると、このような返答が返ってきた。

「今まで対戦したことがない人は全員やってみたい。海外に上がってみたい。海外への長期遠征とか行きたいのですが、今は2AWを上げたいので、いずれは…。自分はこうなりたいというゴールを決めたくないんです。こだわりをもたないというこだわりがあってもいいと思うんです。得れるものは得て、自分のものに吸収していきたい。プロレスをやっている間は無限に成長したいです!」

プロレスで無限に成長したい…なんて素敵な言葉だろう。どこまでも真っ直ぐに生きようとする姿勢がよく伝わってくる。ひとつひとつの質問に誠実に答えてくれる好青年でもある。

千葉が生んだローカル団体「2AW」のエースは、プロレス界次代のスーパースター候補。そのストレートな生き方とブレない信念で輝かしい未来に向かって歩もうとしている。

「俺は自分の人生、この2AWに賭けたいんや。絶対に何があっても、この2AWを諦めることはないから」

インディーという闇夜の月のもとで、太陽のように眩しい光を放つ男。それが吉田綾斗だ。今日も大好きな2AWのリングで、光彩奪目(こうさいだつもく)の存在感を放っている。

いまはコロナ禍で、2AWのある千葉も緊急事態宣言の対象地域となっている。こんな時期だからこそ、吉田綾斗の力を信じたい

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ジャスト日本 (じゃすと・にほん)

プロレス考察家。アメブロで「ジャスト日本のプロレス考察日誌」を運営。2017年と2018年に電子書籍「俺達が愛するプロレスラー劇場」(ごきげんビジネス出版)刊行。2019年より大阪なんば紅鶴にて一人語りイベント「プロレストーキン グブルース」を定期開催。2020年、単行本「インディペンデント・ブルース」(彩図社)発売。

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