相撲界初⁉︎ コロナ禍の「エア相撲大会」 ひとり相撲の動画で勝負

ひとりで相撲をとる「エア相撲」の大会が、オンラインで実施されています。

全国相撲形競技大会」と名付けられたこの大会は、相撲の形(かた)で日頃の稽古の成果を競おうというもの。参加者は「しこを踏む」動画や、ひとりで相撲をとる「エア相撲」の動画を送付し、それを見た審査員10人が順位を決めます。

中学生までしか参加できませんが、大会事務局には「大人の部門はないのか」といった声も届いているほど、反響があるそうです。

中学生以下なら未経験者でも、土俵がなくても参加可能

企画したのは、千葉県柏市で子供に相撲を教えている永井明慶さん(38)。

「新型コロナウイルスで、子供たちの大会という大会がほぼなくなってしまったんです。子供たちの日頃の練習の成果をかたちにしたいということで提案しました」

この大会で競うのは、3つの部門。四股(しこ)の美しさを評価する「シコ部門」、まるで相手がいるかのようにひとりで相撲をとる「1人相撲部門」、全国の相撲クラブがPRする「団体PR部門」があります。

それぞれ、決められた時間内の動画を撮影して投稿します。期間は2021年2月21日まで。

参加費は無料で、中学生以下であれば、相撲クラブなどに所属していない人や、女子も参加できます。また、土俵のない場所で撮影したものでもOKです。

事務局代表の永井さんによると、すでに作品は集まりつつあり、女子からの応募もあるとのことです。海を越えてタイからも「参加したい」との問い合わせがあったといいます。

「見る人に順位を決めてもらうのは、相撲界でも初の試み」

永井さんによると、シコ部門では柔軟性がポイント。「足が高く上がるとか、しっかりと腰が『割れて』いるかになると思います。あとはバランスですね。足を高く上げても、よろよろとしてしまっては意味がないので」。

1人相撲部門は「いかに相手がいるかのように相撲を取るか」が重要。「取り組みとしては、勝つ内容でも、負ける内容でもいいんです。簡単に相手を倒すというところよりも、見てもらう人に何を伝えるかっていうのがテーマなので」と、永井さんは言います。

「相撲の醍醐味って、やっぱりぶつかり合って、相手を倒すっていうところだと思うんですけれども、今回はそうではなくて、相手に触れず、しかも見てもらっている人に順位を決めてもらう。そのこと自体、きっと相撲界でも初めての試みだと思います」

永井さんは昨年11月ごろに企画を思いつき、2021年1月中旬に発表しました。

「公にする前に審査員の方々に話をしたんです。正直、『そんなのやってもさー』って言われるのかなと思ってたんですけど、みなさん、『面白いね』『新しいね』と前向きで」

発表したら、驚いたことに「大人の部門はないんですか」という問い合わせまでありました。

「予想以上に明るい反応が多くて、うれしいですね」

自身も9歳から25歳まで相撲に取り組んでいた永井さん。目のケガで断念したものの、一時は大相撲への挑戦も視野に入れていたほどでした。相撲の面白さは「シンプルで、かつ、時間が短いところ」と語ります。

「ルールをすぐ覚えられるところですね。簡単に言うと、土俵から出るか、足の裏以外が地面についたら負け」

そんな点に加え、約40人の子供に相撲を教える指導者として「相撲っていいな」と思うことがあります。

「稽古場に親御さんだけじゃなく、おじいちゃんおばあちゃんまでが、孫の頑張る姿を見に来る。前を通りがかっただけの、相撲とは無縁の方も、稽古場をのぞいて見入ってしまう。そんな魅力があるんですよね」

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土井大輔 (どい・だいすけ)

ライター。小さな出版社を経て、ゲームメーカーに勤務。海外出張の日に寝坊し、飛行機に乗り遅れる(帰国後、始末書を提出)。丸7年間働いたところで、ようやく自分が会社勤めに向いていないことに気づき、独立した。趣味は、ひとり飲み歩きとノラ猫の写真を撮ること。好きなものは年老いた女将のいる居酒屋。

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