「プロレスは原則、ひとりで観戦したい」ファン歴2年弱のプ女子が思うこと

2018年5月に開催された全日本プロレス、後楽園ホール大会。ジェイク・リー選手と野村直矢選手。若手の注目株ふたりがぶつかる

新日本プロレスの夏のビッグマッチ「G1 CLIMAX 28」が8月12日、幕を下ろしました。A/Bブロックに分かれたリーグ戦で、20名の超人たちが1カ月に渡って競い、優勝決定戦で勝利を収めたのは棚橋弘至選手。膝や腕の痛みに耐えながら、最後まで諦めずに技を受け、返す姿は本当に美しかった……。

一方の私は、生きることに面白さや可笑しさを感じる一方で、「人生100年時代とかやめて……あと70年も生きていたくないよ、正直しんどいわ」と思いながら日々生きている、バツイチ独身32歳女です。

それでも人生は楽しい(どっちなんだ)。というのは、生きていると思いがけない出会いがあって、それが生活に彩りを与えてくれるから。心にぽっかり空いていた穴を満たしてくれるから。

30歳になるころ、ひょんなことから「プロレス」と出会い、主にひとり観戦をするようになり、プロレスにハマるにつれて、生きていることにちょっと希望を持てるようになりました。前出の棚橋選手も、私の人生に光をさしてくれた人のひとりです。

離婚で生じた心の穴を埋めてくれた

プロレスとの出会いは、離婚して約半年の2016年5月。元夫と別れて2〜3カ月は辛くて惨めで、「自分には女性としての魅力や面白味がないから、別れたいって言われたんだろうな……」と凹んでいましたが、半年経ったその頃には「彼、女を見る目がないのよ、フフフ」と茶化す程度に、気持ちも回復していました。

それでも離婚で生じた心の穴は埋まりきっていなかったと思います。そのタイミングでプロレスと出会ったのは、「デスティーノ」以外の何者でもないなと、今振り返っても思います。スペイン語で「運命」。新日本プロレス所属の人気レスラー、内藤哲也選手の必殺技の名称でもあります。

書棚に置いたプロレス関連書籍の一部。左から3冊目の『プロレスという生き方』は今でも時々読み返す

ある晩、家でTBSラジオの「荻上チキ・Session-22.」を聴いていると、『プロレスという生き方』(中公新書ラクレ)という本を上梓したプロレスキャスター、三田佐代子さんが出演していたんです。

三田さんは、プロレスを見たことがない、当時の私のようなリスナーに向けて、プロレスの魅力を話していました。そういえば、30年生きてきてプロレスを見たことがない。「見ない・知らない・興味ない」でスルーするんじゃなくて、一回は見てみよう。

それまで私が抱いていたプロレスのイメージは、長身・長髪でお腹が突き出た、相撲で言うところの「あんこ型」(太っている)のおじさんレスラー同士が戦う、といったものでした。後に超自分勝手で偏った思い込みだと判明するのですが……。

人生初プロレス観戦はDDT。興奮で震えた

予習目的で三田さんの著書を購入。翌日届いたその本は、プロレスの知識がまったくない人間が「入門書」にするにはもってこいの内容でした。読了後、「プロレス、絶対見にいくぞ!」とテンションが一気に上がったのを覚えています。

できるだけ早く見にいきたい。できれば本書で相当なページ数を割いて紹介されていたDDTプロレスリング(以下、DDT)を最初に見たい。早速「プロレス 観戦 方法」「DDTプロレス 観戦」などとキーワードを打ち込み、チケットぴあでチケットを手配し、忘れもしない2016年5月29日(日)、後楽園ホールへ初めて足を踏み入れたのでした。

選手のコスチュームやテーマカラーに基づいて作られる紙テープ。投げ込まれる一瞬のうちに美しい花を咲かせて散る

人生初のプロレス観戦となったDDTの大会では、とにかく驚くことだらけでした。

女性客が4割くらいを占めていたこと。リングインしたレスラーに向かって、ファンが愛を込めて投げ込む紙テープの舞う様が綺麗なこと。選手の体型はさまざまで、あんこ型もいればソップ型(細身)もいて、動く度に筋肉が隆起したり強調されたりと、作り込まれた肉体を見るのもひとつ醍醐味だということ。芸術としか思えないプロレス技があることetc.。

興奮で震えながら会場を後にしました。もっと見たい。別の団体も見たい。いろいろなプロレスが見たい――。普段、低テンションな自分ですが、水道橋駅に向かうなか、珍しく滾って(たぎって)いたと思います。

プロレスファンとして、東京に住んでいて良かった

初観戦以降、自分でも驚くほど、プロレスにのめり込んでいきました。DDTから始まり、全日本プロレス、大日本プロレス、プロレスリング・ノア、新日本プロレス、WRESTLE-1、ドラゴンゲートプロレス、KAIENTAI DOJO、ランズエンド、FREEDOMS、みちのくプロレス、信州プロレス、九州プロレス、新潟プロレスetc.。

予定が合うものから次々と見にいくようになったんです。何度も見にいく団体もあれば、ご当地団体を見にいく遠征、東京を拠点とする団体の地方巡業を見にいく遠征も含みます。地方遠征に関する記事も書いたので、読んでいただけると嬉しいです。

だいたい月2〜3回は観戦するのが恒例になりました。東京で暮らしていて良かったと思うのは、プロレスの試合が頻繁に開催されていることです。

プロレスファンにとっての聖地である後楽園ホールを筆頭に、両国国技館や先日閉幕した「G1 CLIMAX 28」の会場となった日本武道館、小さめの箱でいうと新木場1stリング、新宿FACEなど、プロレスの会場となる場所はたくさんあります。

試合に集中できるから、ひとり観戦が好き

技の美しさ、身体表現のすごさにただひたすら圧倒されたり、鍛え上げられた肉体、常人離れした肉体に敬意を表したり、推しレスラーを「下の名前」で声援しまくったり、今のはどういう意味だったんだろう、とプロレスラーの言動から考え込んだり……これらはひとりで会場に行くからこそ没頭できること。

連れが一緒だと、そういうわけにもいきません。特に初心者からは「ねえ、あれってどういうこと?」と質問されたり、連れのリアクションに何かしら反応したりしなければならず、試合妨害される(失礼)こともあります。さらに、相手に情報がないぶん、最低限の知識を伝えたり、今リング上で起きていることを少し解説したりと、気を使うんですよね……。そうなると一つひとつの攻防を見逃すことも。

もちろんときには誰かと観戦に行くのもいいし、それなりに楽しいときもあるんですが、基本的にはひとりで行くほうがプロレスに深く入り込めるなと感じています。

推しの一挙手一投足に注目したいし、彼らの動きをきちんとこの目で見届けたい。大事な瞬間を見落とすなんてしたくない。そんな気持ちがとても強いため、これからも私のひとりプロレス観戦は、生きている限り続いていくことでしょう。

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