おひとりさまにも優しい! 大阪・福島の路地裏にひそむ「和食」の隠れ家

笑顔の大将、松尾勇人さん

私は、大阪で映像制作会社を創業し、20年ほど経営していましたが、いまは代表を次の世代に譲って、セミリタイア中です。社員には「いつでも現場仕事を手伝うよ!」と言っているのですが、すぐに口出しする大阪のおばちゃんは使いづらいのか、現場からは干され気味です。トホホ。

そんな感じで時間を持て余していたところに、コロナ禍でさらに「ひとりの時間」ができました。おかげで、近所を歩き回って「ええところ」を再発見することが増えたんですよね。

かつてはテレビの情報番組のディレクターとして、関西のあちこちに取材に行った身です。職業病なのか、いまもひとりで関西の「ええところ」を探し出すのが大好きです! DANROのコラムでも「こんないい店、あるよ!」と、私のオススメを紹介していきたいと思います。

路地裏にある「知る人ぞ知る名店」

最初に紹介したいご飯屋さんは、食通が集まる“大人の街”、大阪・福島の「隠れた家の和食 季節の音 心」。ちょっと長い店名ですが、私は「心(こころ)」と呼んでいます。

この店は、大将のキャラがいいんですよ。いつもニコニコしていて、見てるだけで幸せになります。

場所は、JR新福島駅と阪神福島駅の近く。大阪の北の中心・梅田からは西に1駅という好立地にあります。

でも、実際に行ってみると「路地裏の隠れ家」というのにふさわしい分かりにくさ。初めての人には絶対わからない場所に店があるんです!

「心」ができたのは11年前。ごく普通の民家を改装して、お店を構えました。古い建物が醸し出す暖かい香りが、なんとも心地のいい気分にさせてくれます。

「隠れた家の和食 季節の音 心」の外観はこんな感じ

「なんか、オススメある?」の一言から生まれる楽しみ

料理は、その日に仕入れた新鮮なネタで作る「お魚料理」が激うまです!

先日行ったときは、鮮やかなオレンジ色の鮭のお刺身をいただきました。普通の鮭は、白っぽく薄い色ですが、これは鮮やかなオレンジ色をしているんです。

どうやら富士山の近くで育てられたブランド鮭らしい。確かにアッサリしていて、旨味が濃い! 脂がのったサーモンもいいけど、ギトギト感がなく、爽やかな味わいなんです。初めて食べたぁ~!

店のメニューには「今日のオススメ」が書いてありますが、「なんか、オススメある?」と大将に直接聞いたほうが、より良い情報を仕入れられます。

鮮やかなオレンジ色の鮭のお刺身

他にも、お出汁に玉子がつかった「出汁巻」は絶品! お出汁を少しずつ飲みながらいただくと、最後の一滴まで味わえます。シメには「稲庭うどん」もいいですね。

ひとりで店を訪れたとき、長い一枚板のカウンターで、料理ができる様子を見ながら待つのも大好きです。

常連の特権としてありがたいのは、量の調整をしてもらえること。例えば「食べたいけど、ひとりでは多いなぁ」といった料理をハーフサイズで作ってもらったり、ちょこっと余った食材を食べさせてもらったり。

そういうところが居心地いいんですよね。創業まもないころは、新作メニューの試食をさせてもらったこともありました。

お出汁を一滴残らず飲み干したくなる「出汁巻」

「自分たちのお店」という隠れ家感がたまらない

11年前。私は「心」がOPENして3日目に、ひとりで偵察に行ったのですが、その美味しさに悶絶。すっかりこの店のファンになりました。

でも、開店当初は、路地裏にひっそりとたたずむ「心」の存在に気づく人はほとんどなく、大将は毎日、道でビラを配っていました。

「どないしたら、お客さんに知ってもらえるんやろ?」

なかなか客が入らなくて弱気になっている大将に、相談されたこともあります。

「大将、絶対値下げしたらダメですよ。ここ、流行りますから!!」

そう励ましたことをよく覚えています。

1階の店内。ひとりでカウンターに座るのも楽しいんです

その証拠に、グルメな友人にこの店を紹介すると、100%喜んでもらえました。

「狭いお店だから、他の人に教えないでね。私たちだけの秘密のお店にしよう」

そう口止めするのですが、必ずと言っていいほど約束は守られず、彼らもまた「秘密の店、他の人に教えたらダメだよ」と他の人を誘っていました。

今ではすっかり「知る人ぞ知る名店」になっています。

2階の個室。どこか旅行に来たような気分になります

それでも、売上が安定するまで5年ぐらいかかったそう。厨房の片隅には娘さんの写真が貼ってあり、「あ~もうアカン、と思ったら、コレ見て元気だすんですよ」と大将は微笑みます。

私にとって「心」は、波止場のような場所。仕事で疲れたときに「なんでもいいから、美味しいもの食べさせて」と閉店間際によく来て、大将に注文したものです。

今はコロナ禍で大変そうですが、「自分たちの秘密の店がなくなったら困る」と心配して食べに来る、私のような常連さんも多いようです。

お店の前の路地への入り口。この奥の右側にあります

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