「加熱式たばこ」専用の喫煙所がほしい! 愛煙家だけど「たばこの匂い」は不快
火を使わず煙を出さない「加熱式たばこ」の登場は、愛煙家の喫煙スタイルを大きく変えました。喫煙者である私の経験を振り返ると、紙巻きたばこを吸っていた頃は、周りの人から煙の匂いを嫌がられ、喫煙所では周囲の視線を冷たく感じたものです。匂いや黄ばみが染み付くのを避けるため、家の中や車の中でたばこを吸うのもご法度でした。
しかし、たばこ特有の匂いを軽減した加熱式たばこが登場してからは、匂いのことを周囲から言われる機会も少なくなりました。今では、屋外で強い「吸いごたえ」がほしいときはフィリップ・モリスの「IQOS(アイコス)」を、自宅で仕事に集中したいときや車の中では、匂いがほとんど残らないJTの「Ploom TECH(プルーム・テック)」を使い分けています。
「加熱式たばこ」と「紙巻きたばこ」の棲み分けを
私と同じように、加熱式たばこに「匂いの軽減」を期待するユーザーは多いのではないでしょうか。煙を出さない加熱式たばこに慣れてしまうと、紙巻たばこを吸ったときに周囲に漂う煙の匂いや、自身の衣類などに残る煙の匂いは、「こんなに臭くて不快なものだったのか!」と、喫煙者でありながら驚かされるほどです。
最近では、その不快感が最も強くなるのが、商業施設や飲食店、街中にある喫煙所です。多くの喫煙所では「加熱式たばこ」と「紙巻たばこ」は区別されておらず、両方のユーザーが同じ場所でたばこを吸います。すると、自分の吸っている加熱式たばこがどんなに匂いを軽減しても、喫煙所にしばらくいれば、紙巻たばこユーザーが出す煙の匂いが衣類にたっぷりとついてしまいます。
加熱式たばこのユーザーが増加する一方で、加熱式たばこ専用の喫煙所はまだほとんどありません。「匂いの軽減」という加熱式たばこの価値を生かすには、喫煙所などの喫煙環境も、「加熱式たばこ」と「紙巻たばこ」で棲み分ける必要があるのではないでしょうか。
こうした問題提起について、たばこメーカーはどう考えているのでしょうか。1月17日にPloomシリーズの新製品を発表した日本たばこ産業(JT)の広報を担当する片原琢久矢さんに話を聞きました。
加熱式たばこの喫煙環境
――普及拡大にあわせて、加熱式たばこ専用の喫煙環境を作っていく活動について、どのように考えていますか?
片原さん:喫煙環境をどのように提供するか。つまり、分煙にするか、禁煙にするか、全面喫煙するか、加熱式たばこのみを許可するかは、各店舗や施設管理者が判断する形となります。一方、JTでは、たばこを吸う人と吸わない人が共存できる環境づくりを目指して、事業者などに対して「分煙コンサルティング活動」を行っています。2004年から2018年までで累計約2万6000件のコンサルティングを行いました。プルーム・テックのみが使用可能である「No Smoking Ploom TECH Only」の趣旨をご理解いただくために、飲食店などへの提案も行っており、2018年末の時点で3300店舗で採用されています。
――喫煙所が、紙巻きたばこを含む「全ての喫煙が可能な場所」と「加熱式たばこのみ喫煙が可能な場所」に分かれていると、利用者にとって良いのではないでしょうか?
片原さん:そうですね。同じ「たばこ」として一括りにされていますが、加熱式たばこと紙巻きたばこには違いがあります。煙と蒸気(ベイパー)の違い、匂いの濃さの違いなど様々です。匂いに関しては、紙巻きたばこを100%とすると「Ploom TECH」と「Ploom TECH+」は99%以上、「Ploom S」も95%以上カットされています。喫煙所を設置する事業者には、この違いを認識していただいた上で、法令や地域の条例などに従い、ご判断いただければと考えています。
――加熱式たばこの喫煙環境の推進のために、同じく加熱式たばこを展開しているフィリップ・モリス(IQOS)やブリティッシュ・アメリカン・タバコ(glo)と協力するという選択肢もあると思いますが、いかがでしょうか?
片原さん:各社ではそれぞれ自社製品の使用を許可する独自の店頭表示を制作して、飲食店などに配布していますが、3社が合同で飲食店向けに「加熱式たばこのみ使用可」とする店頭表示の制作も行っています。紙巻きたばこの喫煙は禁止するものの、「加熱式たばこであれば使用可」とする飲食店は、増加傾向にあります。こうした中、多くの飲食店から加熱式たばこ全製品を対象とする店頭表示を作成してほしいとの要望をいただき、3社が合同で制作することになりました。
――喫煙人口が減少傾向にあるなか、市場全体では加熱式たばこが伸びています。フィリップ・モリスは将来的に紙巻たばこを加熱式たばこに置き換えることを名言していますが、JTでは紙巻きたばこのビジネスを今後どのように見据えているのでしょうか。
片原さん:当社としてはお客様自身が選べるように幅広い選択肢を提供することが重要だと考えています。お客様によってはシーンによって加熱式たばこと紙巻きたばこを使い分けるという人もいるでしょう。すべてを加熱式たばこにしていくことや、紙巻きたばこのビジネスから撤退するといったことは全く考えていません。
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加熱式たばこユーザーの増加に伴い、少しずつではあるものの、街の中の喫煙環境にも変化の兆しが生まれているようです。加熱式たばこと紙巻きたばこは同じものか、異なるものか。人によって考え方は大きく異なり、受動喫煙防止条例の制定を巡っても議論されています。こうした中で、非喫煙者、加熱式たばこユーザー、紙巻きたばこユーザーがそれぞれ心地よく過ごせる世の中が実現することを願いたいところです。