「ひとりになりたいときに読んでほしい」朝日新聞を3年で辞めたフリーランス編集長
コンセプトは「ひとりを楽しむ」。さまざまな角度から「ひとり」というテーマを考えていきたい――。5月末に創刊した新しいウェブメディア「DANRO」の亀松太郎編集長が、コンテンツ制作会社「ノオト」の宮脇淳代表と対談するトークセッションが7月9日、東京都内でありました。
DANROは、朝日新聞社のバーティカルメディア(特定のジャンルやテーマを深掘りするメディア)プロジェクトの1つとして運営されています。トークセッションは、DANROを含む5メディアの戦略発表会の一幕として催されました。約10分の短いセッションでしたが、DANROのエッセンスがあらわれているので、ここで紹介したいと思います。
「ソロ的生き方」を追求している人を取り上げる
宮脇:今回はDANRO創刊ということで、おめでとうございます。編集長の亀松さんからどんなメディアなのか、改めてうかがいたいんですけれども。
亀松:ありがとうございます。(会場の)みなさん、スマートフォンをお持ちだと思うんですが、いまお手元に出していただいて「DANRO」と検索していただければと思います。ぜひ、サイトを見ながらお話を聞いていただければうれしいです。
宮脇:(サイトには)実際に記事があげられてるんですけど、亀松さん的に「この記事を見てもらうとDANROというのがわかりやすい」という事例があったりしますか。
亀松:見ていただくと、トップのロゴのすぐ下に「ひとりを楽しむ」と書いてあります。ひとりを前向きにとらえながら、ひとりの時間を楽しんでいる人を紹介している記事があるんですが、特に読まれたのが、プロゲーマーのカリスマといわれるウメハラさんのインタビュー記事。特にツイッターの反響が大きくて、よく読まれました。彼はプロゲーマーということで、まさにひとりで自分の道を切り開いてきた人ですね。
宮脇:この記事、私も読んだんですが、決してヒーローを紹介する記事ではなくて、すごい悩みながら、途中でゲーマーをやめて雀荘で働いたりとか、すごい人間臭い話なんですよね。なので、いい話だけじゃなくて、苦しみながらでも次を目指すとか、そういうストーリー性がめちゃくちゃありますね。
亀松:DANROは「ソロ的生き方を追求している人」ってことで、もちろん独身の人も含まれているんですが、それだけではなくて、ひとりの趣味とか、ひとりの仕事というものを自分なりに正面から考えている人を取り上げていこうと。
宮脇:亀松さん自身も、もともと朝日新聞に勤務されていて、20年ぶりに出戻ったんですよね?
亀松:僕は朝日新聞に大学卒業して入ったんですが、3年で辞めてしまって。会社にちょっとなじまなかったんですね。そのあと、まさにフラフラとひとりでいろんな会社を渡り歩いて。直近ではドワンゴというニコニコ動画の運営会社、それから弁護士ドットコムというサイトでやっていたんですが、実は今回も編集長を任せていただいているんですが、フリーランスなんです。
宮脇:そうなんですね。珍しい。なかなかこういう大手の会社だと、社員の方が編集長になるケースが多いんですけど、亀松さんは特別に。
亀松:ちょっと変な人ということで。そういうかたちで、僕自身がある意味、DANROっぽいというか、ひとりでフラフラ悩みながら、歩いてきている。そういう人たちをネガティブにではなくて、前向きに捉えていきたいと。
誰でも「ひとりになりたいとき」はあるはず
宮脇:面白いなと思ったのは、亀松さんと同じように編集スタッフの方、編集部員の方も似たようなタイプというか、ひとりでやって来た人が多いと聞いたんですが。でも亀松さんは独身かと思ったら、実は違うらしいですね。
亀松:そうなんですね。僕はいま48歳なんですけども、41歳になったところでようやく結婚して。独身が長くはあったんですが。いまはまた、ひとりもいいな、戻りたいなと思っているところです(笑)
宮脇:奥さんとか聞いていたら、大変だと思うんですけども(笑)。噂によると、編集部のみなさんも最初は独身の方が多かったのに、DANROに関わると結婚しちゃったみたいな。
亀松:これはほんと困ったことなんですけど、副編集長がですね、僕が編集長をやることになったあとに声をかけて転職してもらったんですが、その時点では独身だったんですね。「非常にDANROっぽいな」と思ったんですが、そのすぐあとに結婚してしまって。実は編集部に独身が少ないのが、悩みと言えば悩みです。
宮脇:実は私も結婚してだいぶ経ちますけども、いま2年ぶり2回目の別居中なんです(笑)。あ、誤解を招くとまずいんですけど、いろいろ事情がありまして。ただ最近よく考えるんですけど、結婚したからずっと一緒にいなきゃいけないとかではなくて、これからの生き方ってすごく多様化していきますよね。家族がいても親しい友達がいても、一人の時間をどういう風に楽しんでいくかっていうのは、人生においてすごく重要なテーマですよね。
亀松:今日ここにいらっしゃるみなさんは、独身でなかったり、フリーランスでなかったりする人が多いと思うんですが、実はDANROの「ひとりを楽しむ」というのは、生き方や考え方の問題です。既婚者であっても、組織に所属していても、ひとりになりたいときってありますよね。ひとりでやってみたいと思うことがありますよね。そんな方々にぜひ、DANROを読んでいただきたい。ですから、みなさんのためのサイトです。
宮脇:いまのインターネットって、ある記事がDANROで掲載されたのか、東洋経済オンラインで掲載されたのか、withnewsで掲載されたのかという点について、読者は正直そこまで注意を払っていないんじゃないでしょうか。こういうのが良かったねって、わりとコンテンツ単位で見られることが多いんですけども、つくり手である我々がとにかくいい記事を連発していけば、メディアの価値ってすごい上がっていくはずなんです。DANROさんはそこを目指していくのかな、と。いかがでしょうか?
亀松:そうですね。最初に言ったコンセプトは「ひとりを楽しむ」ということで、「ひとり」ということについて、いろんな角度から考えていきたいですね。そういう視点が現れているのが「DANROらしい」ということで、媒体の特徴を感じ取っていただけるといいかなと思っています。