「大人の学び直し」必要と感じる人が7割…でも「何もしていない」人が多数という現実

Photo by Getty Images
Photo by Getty Images

ひとりの時間の過ごし方として、自分の将来のために何かの「勉強」にあてる人もいるでしょう。そんな社会人の「学び直し」がいま注目を集めています。政府の「人生100年時代構想会議」が昨年6月にまとめた基本構想では、リカレント教育(社会人の学び直し)の拡充がうたわれています。産学連携によるリカレント教育プログラムの開発や教育訓練給付の拡充など、「大人の学び直し」のサポートがさまざまな形で進められる予定です。

では、実際にこの「学び直し」について、社会人はどう考えているのでしょうか。筆記用具を販売しているゼブラが、40代・50代を対象に勉強に対する意識や勉強法について調査しました。その結果、多くの人が「学び直しの必要性」を感じている一方で、「現状は何もしていない」ということがわかりました。

定年後や副業・起業を見据えた「勉強の必要性」

調査は、WEBアンケートで40代・50代の上場企業の正社員3692人を対象に実施しました。

「今後、仕事のために新たな勉強が必要だと感じていますか」という質問には、73%の人が「感じる」と回答しています。

「おとなの学び直しに関する調査」(ゼブラ)

その理由として「長く働きたい」「収入を増やしたい」という回答が多くを占めました。次に「副業をしたい」「やりたい仕事がある」「独立・起業したい」という回答が続き、定年後も働きたい人や、副業・パラレルワークス(複数の本業)を望んでいる人たちが多いことがわかります。

「おとなの学び直しに関する調査」(ゼブラ)

勉強していない理由は「時間がない」「記憶力や集中力の低下」

「学び直しをしたい」と考えている人が多い一方で、こんな結果も出ています。「今現在、何か仕事に関する継続した勉強をしていますか」という質問に、約7割の人が「していない」と回答。その理由としては「何を学べば良いか分からない」「記憶力や集中力の低下」「勉強する時間が取れない」という回答が寄せられました。

「おとなの学び直しに関する調査」(ゼブラ)
「おとなの学び直しに関する調査」(ゼブラ)

勉強方法はひとりで気ままにできる「自習」が多数

また「今後仕事に関することで何を学びたいですか(複数回答可)」という質問には、「語学」が42%を占め、次いで「財務・金融・会計・不動産」「経営・人事・総務・法務」をという回答が続きました。実務上のスキルアップのほか、資産運用や独立・起業に役立つ知識を習得したいという意識が見えてきます。

それらの勉強方法については「書籍・問題集による自習」が47%と多く、次いで「セミナー」「学校/教室」「オンライン授業」という方法が並びました。ひとりで気軽に、今すぐにでも始められる「自習」を選んでいる人が半数近くいることがわかります。

目的意識の高い「社会人学生」

このような「社会人の学び直し」について、教育の専門家はどう見ているのでしょうか。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(以下、慶應SDM)の神武直彦教授は「慶應SDM修士課程の­­­新入生の6割から7割が社会人の学び直し学生」と語ります。

こちらの大学院では、必須科目の日本語での講義を全て土曜日に行うなど社会人学生が学びやすい環境を整えています。

神武教授は、社会人学生の特徴として「『学部時代にもっと学んでおけば良かった』という思いをもつ人や『仕事で普段経験していることを学びによって体系的に理解できるはず』と考える人、つまり『学ぶことの大切さ』を感じている人が多い」と話します。一方で「修了と同時に役に立つスキルや知識を得たいという動機が多いようだ」とも。

「そんな社会人学生と、興味や体験を重要視し、比較的時間に余裕がある社会人ではない学生がともに学ぶことは、お互いが体験や時間を融通しあえるなどの相互補完や共創が生まれるので、とても意義があると感じます」(神武教授)

自分の力で学ぶ「自己学習」と大学院などの専門機関で学ぶ「受講学習」。大人の学び直しにはさまざまな選択肢がありますが、いずれにしても、ひとりの時間をいかに学びに当てることができるかが、成功の鍵となりそうです。

この記事をシェアする

「ひとりで学ぶ」の記事

DANROクラブ

DANROのオーサーやファン、サポーターが集まる
オンラインのコミュニティです。

もっと見る