中国語の山に登っていないのに下山してどうする(僕の中国語独学記 4)

(イラスト・芥川 奈於)

台湾への取材旅行で中国語が全く聞き取れず打ちのめされた僕は、帰国してからしばらく呆然とした日々を過ごしていた。なんだか中国語の勉強にも身が入らず、ぼんやりしていた。

わかりやすく言えば、中国語の自信をへし折られ、モチベーションが一気に下降していたのだった。

こんなことではいけない。僕の最終目標は中国語で取材することなのだ。まだ1合目も登っていないのに下山してどうする。

僕はここで決心した。基礎を独学でやるのは効率が悪い。先生を雇おう、と。

中国語の基礎を叩き込もう

「中国語独学記」という連載タイトルを裏切ることになってしまうが、僕は台湾華語がペラペラの日本人の中国語レッスンをしばらく受講することにした。知り合いの田中佑典老師(中国語で先生の意味)が主催する「カルチャーゴガク」という語学教室だ。

授業はマンツーマンレッスン。ここで僕は、田中メソッドでみっちりと中国語の基礎を叩き込まれた。それこそ数字の数え方から、発音の法則まで徹底的に学んだ。

その次は単語だ。単語を知らなければ、会話は出来ない。単語もただ意味だけを覚えるわけではない。発音とセットで覚えるのだ。

前にも述べたが、中国語の発音は四声といって4種類ある。漢字2文字の単語だと、4×4で16通りの発音の仕方がある。その16通りの発音別に単語を分けて、徹底的に発音を声を出して単語を覚えるのだ。

中国人や台湾人が単語を認識するとき、もっとも重視しているのが四声らしい。だから、四声が狂うとまったく通じないのだ。

発音の区別が難しい単語の練習もみっちりやった。例えば

一起去吃飯吧!(一緒にご飯食べに行こうよ!)

これなんて激ムズである。

発音は「yi qi qu chi fan ba」なのだが、「qi qu chi」の区別が日本人にはほとんどわからない。この特訓のため、泣きながらsiriと格闘したことを僕は忘れない。

言語交換の相手を探してみたが・・・

こんな風にして、僕は数ヶ月に渡って基礎を固め直した。

これ以上の上達を望むにはもう実践しかないのでは? そんな気持ちになり、最初は留学を考えたが、コロナでダメになってしまった。身近な中国人の友達に相手になってもらうことも考えてみたが、みな忙しいので、誘うことも憚られる。

となると、お金を出して、オンラインレッスンを受けるのがいいだろうと思って何回かお試しをやってみたのだが、初級と上級のレベルの差が激しすぎて、合わなかった。

そこで思いついたのが、無料の言語交換アプリだ。僕は「Hello Talk」というアプリを使って言語交換の相手を探した。

最初にマッチングしたのが、上海の日系貿易会社に勤める40代の女性だった。一度話してみたら、日本語がかなりうまく、中国語を使うスキがない。というか、中国語を使わせてくれない。

そして每晩、ウィーチャットで電話がかかってくる。僕が風邪をひいたときなど、上海からよくわからない漢方薬が送られてきた。

俺は何をやっているんだろう……。どんどん中国語学習から離れていく……。このまま僕はこの人と国際結婚することになるんだろうか……。

そんな妄想が生まれるほど、僕は追い詰められていた。とにかく、この状況を打開せねば!

そして僕のとった行動とはーー(次回に続く)

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