男のひとり料理、美味しく作って余らせないコツ(50代から独身 2)

ひとり暮らしだと、ついスーパーやコンビニの総菜少量パックを買ってしまいがちです。でも、失敗しない調理のコツを習慣化してしまえば、無駄な出費を抑えて、毎日適量の食事をある程度バランスよくとることができるようになります。

荒川区から目黒区へ

離婚後、世田谷は赤堤から荒川区の町屋に引っ越して、快適なモノなしシングルライフがスタートしました。

ただし、その物件は1年半後に建て壊しになるアパートでした。せっかく掴んだシングルライフ、いろいろなところに住んでみたいな、とは思っていたのですが、1年半はあっという間に過ぎますね。

近くで探そうとしていたところ、たまたま出雲に嫁いだ友人から、奇跡ともいえるオファーがありました。

「私が前に住んでいたお部屋、空いているけれど1年くらい使ってみる?」

それも目黒区の一等地で、駅から徒歩3分という好立地でありますよ。いわゆる閑静な高級住宅街。送ってもらった写真を見て、即決。荒川区から目黒区へ引っ越すことになりました。

広いキッチンには食洗機、オーブン、グリルが完備。斜めに配置されていて使い勝手も抜群でした。

そのお部屋は、ほぼすべての家具や食器類が設置済という、ちょっと変わったところだったのです。ご自分が生活していた当時のそのままの状態で嫁がれたので、高価で貴重な食器、調理器具・設備、冷蔵庫、洗濯機、そしてワインセラーまで完備。モノなし生活を送っていた私にとってはまさに渡りに舟でした。というか、ドキドキワクワクですね。

その部屋の内装はテレビで何度も取り上げられ、有名俳優のお宅訪問番組にも出たという、非常に個性的な空間だったのです。多くの欄間を活かしたインテリアに琉球畳、天井空間を吹き抜けにしたお部屋の間取りは2LDK+お洒落なロフト付き。さらにはお風呂横には小さな壺庭も。

ロフトから見下ろしたリビング

驚いたのは、リビングに斜めに配置されたお洒落なアイランドキッチン!

これを見た瞬間「これだけの設備があるのだから、毎晩の外食をやめて、ここでちゃんと真面目に自炊しなきゃ!」と思ったわけです。

かつて飲食店を経営していたとはいえ、調理場で仕事をしていたわけではないし、料理教室に継続して通った経験もありません。

つい多めに作って残してしまったり、野菜なども余らせて腐らせてしまったり、買ったことを忘れて同じものを続けて買ってみたり(これは単なる物忘れか)。どうもうまくいかなかったこれまでの自分。

そこでたどり着いたのが、調理技術の師と仰ぐ水島弘史シェフの「低温・低速調理本」でした。数ある料理本やレシピ本も読みましたが、水島シェフの一連の本は失敗しない、ある程度保存もできる料理について論理的に、そしてわかりやすく書かれています。

「美味しい料理を作ろう!」と気張らずに、失敗しない調理を正確に作ることを意識して、特に気を付けたのは火加減と塩加減。肉も魚も野菜も調理法を問わず、「塩は素材に対して0.8%」というセオリーを守り、弱火と中火を使い分けてつくっていくものです。

必要なものは、ハカリと温度計と計量カップ、そしてキッチンタイマー。

皮目をパリッと、中はふんわり

値段も安価で調理しやすい鶏肉料理を2つほどご紹介しましょう。ひとつは「鶏ハム」。これは鶏の胸肉を40度前後からゆっくりと温めて、70度近辺で肉質を締めてふんわり感を出す料理です。最初のひと品のほか、サラダやパスタの具材にもなるという、これ以上コスパのいい料理はないと思います。3日程度なら保存も効き、調味料を変えると翌日の酒の肴に変身です。

調理の決め手は、鶏胸肉を温める水の量に対する塩の割合を0.8%にすることと、40度と70度の茹でる2段階の温度設定です。500mlのお湯で温める場合は4gの塩を入れることになります。パサつかずふっくらとしたやさしい味わいの、鶏ハムの出来上がりです。

ソースはオリーブオイルとトマトドレッシング、そして粒胡椒で香りを。

自作の「鶏ハム」

次に「鶏モモ肉のソテー」。皮目をパリッと仕上げて中はふんわり、見た目もこんがりと焼き上げる、いわゆるメインディッシュになるキメの料理ですね。

グラムを量って同じように塩を0.8%用意します。ポイントは冷たいままのフライパンに油をひき、皮目を裏にして載せてから弱火でゆっくりと火入れをしていくこと。表面が暖かくなったころ、にじんでくる灰汁をキッチンペーパーでしっかりふき取ります。そして5分~7分ほどでひっくり返すと、きれいなきつね色に焼きあがっているのですよ!

塩胡椒はそのあとで大丈夫。裏返して余熱で3分ほど温めれば出来上がりです。ゆっくりと加熱することで、ストレスなくお肉はこんがりとした色をつけてくれます。

鶏モモ肉のソテー

皮目のぱりぱり感と肉のふっくら感がたまりません。ソースはバターと白ワインでさっぱりと。

この2つの料理は分量と手順を間違えなければ、スーパーで安価に売っている素材を使ってもプロっぽく作ることができるものなので、超オススメです。

もしも料理が残った場合はちゃんとタッパーに入れて、必ず翌日に食べるようにしましょう。なんとなく冷蔵庫に入れておくだけだとほぼ間違いなく「忘れてしまいます」。

例えば翌日の朝ごはんとして、サンドイッチの具材にしちゃいましょう。マヨネーズと共にパンに挟んでさっくりと。前日のものを味を変えて翌日に食べてしまうことによって、冷蔵庫内に無駄な「在庫」をなくし、フードロス予防につながるわけです。「もったいない」と思って翌日に必ず食べてしまうのがコツなのです。

ロフトから撮影した1枚。ひとりでいただく食が少しずつ広がっていきました。

さて、幸いにして「嶋がなんか面白いところに引っ越して料理始めたらしいぞ」と噂が広まり、週末にぼちぼちと友人たちが集まってくれるようになりました。当時の2018年は地方出張が非常に多い時期で、出張先の北海道や長野県、島根県などで旬のフレッシュな素材や調味料を買ってきては、上述した鶏料理に添えたり味付けしたりすることができました。

最後に。料理本はキッチンに平置きしておきましょう。視覚的にもそこに「料理本」があると今夜も何か作ろう!というスイッチが入るのです。

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嶋啓祐 (しま・けいすけ)

地方創生という大きなテーマの中にある「食」をテーマにした「地域起こし」に従事。北海道生まれではあるが、島根県に異常に詳しい。ミョウガやネギ、クレソンといった癖のある野菜を好む。古事記に出てくる舞台をすべて巡り、10年前から御朱印を収集。コンビニの便利さが嫌いで、近寄らない。蒲田に引っ越し、酒場巡りの毎日を過ごす。

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