ファーストクラスひとり旅、波乱の幕開け!(50代からの独身 5)
50歳を超えて独身になって、あっという間に3年がすぎました。ひとり身になって身軽になると、ツキというか運気がまわり始めるものですね。これまで書いてきた幸運な引越しや空き家リノベも、その事例かもしれません。
さらに今回、ビックリな体験プランに選ばれてしまいました。アメリカン航空のロサンゼルス往復「ファーストクラス搭乗体験」です!
かつて会社員時代に、出張でビジネスクラスを利用したことはありましたが、それは遠い昔で記憶もほとんどなし。シートが広めで食事がちょっと良かった、くらいでしょうか。
それが今度は、なんとファーストクラスですよ。
出国から波瀾万丈
そもそものきっかけは、2019年に「ファーストクラスで世界一周」を上梓した、友人でトラベルジャーナリストのたかせ藍沙さんの出版記念パーティーです。
独自のノウハウでファーストクラスに乗って世界一周を成し遂げた彼女は、海外旅行業界の中では有名な人物。下界を見下ろす六本木ヒルズクラブで行われたパーティーも、ある意味、天空の華やかな世界でした。
そのときの景品として「ファーストクラス搭乗体験」に応募したら、審査を経て選ばれたのです。通知が来たときには、そりゃもうビックリして、椅子から転げ落ちそうになったのでありました。
私の記憶では、25年ぶりのアメリカ合衆国。東京・ロサンゼルス往復3泊5日の「空の旅」です。
7月6日、出発の朝。なんとなくそわそわしていました。羽田発の夕方の便なのですが、早めに行ってJALファーストクラスラウンジで優雅にシャンパーニュ、なんて思っていたわけです。
ファーストクラスだし、いつもの京急バスじゃなくてタクシーだよな、ってことで、羽田に向かい、国際線のカウンターでパスポート出してチェックイン!
と思いきや、ププー、とアラームが!
「お、おれは何も悪いことしてないぞ~」なんて思いつつ、カウンターのスタッフに訪い合せると、
スタッフ「お客様、ESTAはお取りになっていますよね?」
私「(ぽかーん)…そのエスタってなんですか?」(札幌駅の地下街のことかと思った)
はい、超久しぶりの海外だった私は、ESTA(電子渡航認証システム)というものをまったく知らなかったのです。SNSにそのことを書くと「ESTAを出国72時間前に取得する」ことは常識らしく、その瞬間からはもうドキドキです。
スマホからアクセスしてESTAにエントリーしようとしても、パスポートの下にある数字と記号の読み取りがうまくいかない…。暑くもないのに、汗だくでありますよ。
偉そうにファーストクラスで~なんて言いながら出国できなかったら、しばらく家に引きこもるしかありません。
そんなことが頭をよぎりながら、アメリカン航空の担当者を待つことに。出発3時間前、ESTAなしのドキドキタイムであります。
結局、手取り足取りのご指導の下、PCからエントリーすることができて、1時間後には無事発券できました。
通常は短時間で発券というのは難しいのでしょうけど、このときはなにか特別な力が働いたのかどうか、今も謎のままです。
別世界だったファーストクラスのラウンジ
さあ、発券がすめば出国手続きを経て、JALのファーストクラスラウンジへゴー!でありますよ。
気分は一気にアゲアゲムード! アメリカン航空の方のアテンドもついて、もう迷うこともありません。それどころか全部案内してくれるので、超お気楽(いいのかな、ほんとって感じ)。
予想通り、ファーストクラスのラウンジは別世界でありました。滑走路や飛行機が見渡せる広々とした空間には、多くのフリーフードメニューやドリンク類が品よく並んでいて、空腹ならいくらでもイケそうな気配です。
客層はご家族から、いかにもビジネス風の方々まで幅広く、そして当たり前ですが、ワールドワイド。
ESTA取得に相当な時間を有してしまったので、ラウンジでのんびりというわけにはいきませんでしたが、シャンパーニュテタンジェで喉を潤し、ピンチョスをつまんで、短いながらも優雅な時間をいただきました。
アメリカン航空の配慮で、まだ機内清掃中の状態から搭乗させてもらい、クルーの方々にご挨拶。私が話せる英語は冗談のみですが。
「ぼくは25年ぶりにアメリカに行きます。好き嫌いはありませんが、お酒はシャンパーニュしか飲めません」
と言ったら、席に着くなり、シャンパーニュが並々と注がれます。半分飲んだらすぐに注ぎに来てくれるので、離陸前から気分は空の上です。
ちなみに、ファーストクラスとビジネスクラスの「違い」を体験するということで、行きはビジネスクラス、帰りはファーストクラスということになっています。
つまり、行きはビジネスクラスです。ファーストクラスも見せてもらいましたが、わずか8席しかなく、広さと空間とアメニティなどはビジネスクラスと大きく違います。
でも、ビジネスクラスもゆったりとしていて、居心地は申し分なしです。
和食の粋を空の上で
ほろ酔い気分で離陸してまもなく、お待ちかね、ディナータイムであります。事前に予約しておいた芝大門の高級和食店「くろぎ」の会席膳をじんわりと待つ私。
「くろぎ」は1年先まで予約で埋まるほどの人気店で、こういった機会でなければその料理をいただくことなど到底不可能。季節感と素材の組み合わせ、味わいのバランス、美しさと余韻。日本の食のすべてが凝縮された料理を、国境のない空の上でいただく贅沢。
いや、贅沢という言葉では表現しきれないほどの非日常でした。
さて、映画を見ない=モニターをつけない私は、いただいたWi-Fi環境でロサンゼルスの様子を探ったり、友人たちとメッセンジャーしたりしているうちに、いつしか飛行機の中とは思えない環境で深い眠りに着いたのでした。
11時間ほどでLAX(ロサンゼルス国際空港)に着陸。最後にもう1杯シャンパーニュを、と頼むと、
「そんなに好きなら1本持っていくといいよ」と、1本いただいてしまいました。かなり感激の瞬間で、これですっかりアメリカン航空ラブになってしまいました。
驚きのオプションサービス
ここで書いておきたいのが、今回の搭乗体験には驚きのオプションサービスがあったこと。「The Private Suite」と言いまして、到着後、飛行機横のタラップから降りるとき、お迎えの専用車に乗って特別ゲートから入国できるサービスが設定されているのです。
いくらファーストクラスで早く乗り、早く降りることができても、入国審査や税関はそれなりに時間やストレスがかかり、厄介なもの。それをすべて「特別待遇」でこなしてくれるのが、「The Private Suite」サービスでした。
専用車で空港をぐるっと回って、専用のラウンジでカフェタイム。そしていくつかの認証を経て、すぐにゲートの外へ。そこは正真正銘のアメリカ合衆国でありました。
そこにはまた別の専用車が私を待っていて、予約してあるホテル(250ドル×3泊)まで、さらに、その近くのサンタモニカピアまで連れて行ってくれるというのです。
さあ、急に気が大きくなった私ですが、その先にとんでもない事件が待っていようとは、夢にも思わなかったのでした。
(次回に続く)