ファーストクラスひとり旅、なぜか野宿の危機!(50代からの独身日記 6)

日本からもアンティークバイヤーが朝からたくさん来ていた「Rose Ballフリマ」。DANROのTシャツ着て気合を入れるわたし。
日本からもアンティークバイヤーが朝からたくさん来ていた「Rose Ballフリマ」。DANROのTシャツ着て気合を入れるわたし。

(「ファーストクラスひとり旅、波乱の幕開け!」から続く)

50歳を超えて独身になって早3年目。3度の引越しの度に、生活は目まぐるしいモデルチェンジを繰り返し、ついにロサンゼルスへのファーストクラス体験に選ばれてしまいました。しかし、その先には予期せぬ事件が次々と勃発!

さて、ESTAを取らずに羽田空港に着いたものの、なんとか「危機」を乗り越えてたどり着いたアメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス市。The Private Suiteというスペシャルサービスであっという間に入国し、お迎えの車でサンタモニカのホテルまでGo!であります。

ただですね、あまりにもすんなりスピーディーに入国しちゃったので「アメリカに来たぞ感まるでなし」なわけですよ。ほら、入国のときに並んで、愛想の良くないおじさんにパスポート見せて、「どこに行くんだ?ホテルは予約してあるのか?」とかあるじゃないですか。そしてゲートの先にはレンタカーのカウンターとか、英語でのアナウンスとか、あるのを見て聞いて「あー、ガイコクに来たぞ」感みたいな。

ロサンゼルスのダウンタウンを抜けて、気持ちよくサンタモニカへGo!のはずが…

ファーストクラスならではのサービスで、いきなり「路上」に出ちゃった私は、車内に用意されたドリンクを飲みながら外の風景を眺め、これから向かう豪華なホテル(一泊300ドル+α×3日)とサンタモニカの風を想像し、なんとなくアゲアゲ気分です。少なくともゆったりとした静かな車内では。

なぜだ? カードが使えない!

チェックインには早かったものの、荷物は預けられるだろうと思ってホテルに寄り、レセプションで話すと、「大丈夫、あなたは特別だから、もうお部屋を用意してあるよ」と。ほんとかな? と思いつつパスポート見せてクレジットカードでチェックイン!

と思いきや不穏な気配が…

フロントマンが怪訝そうな表情をしています。

小さく「ピピー」と音がする。

フロント「クレジットカードが認識されないよ、別のカード持ってる?」

私「おかしいな、先週も使ったんだけどな、じゃあ日本発のカードで」

フロント「それはなんですか? 使えないよここでは」

私「えーーーー、そんな…」

(調べると磁気異常でした。そして日本発カードは使えず)

その時点で「マジ、まずいぞこれは」。

なんせアメリカはカード社会だと聞いていたし、自分でもそう思っていたので、現金は「チップやなんかに使う50ドル」しか持っていなかったのですよ。

どうしようもありません。

ここはですね、一旦頭を冷やす意味でも、荷物は預かってくれるというので、待たせてあるキャデラックワゴンでサンタモニカピアまで行くことに。

さっきまでの流れる風景を見ていた優雅な自分は「まるで初めて海外に来たぞ」的な、おどおどツーリストになってしまったのです。

・クレジットカードが使えない

・現金もほとんどない

・キャッシングも限度額がある

さらに追い打ちをかけたのが、ネットでは他のホテルも当日予約ができないという現実…。それでもあの手この手使ってたどり着いたのが、サンタモニカピアに面する超豪華ホテル、「R」であります。

電話をしてみると空いている、と。一瞬浮足立ちましたが、そのお値段は日本円で約13万円とTAX。それが3泊も続くと失神してしまいますわたし。

その瞬間に頭をよぎったのは、車窓から見えたいくつかの美しい「公園」なんですね。

そうです、「野宿」でありますよ、野宿。英語だとなんというのかな。

海を見ながら野宿をイメージ

まさか、ファーストクラスチケット持ってやってきた中年実業家?が野宿なんて、これこそお友達には言えませんよ。

私は賑やかなサンタモニカピアを歩きながら、ぼーっと野宿をイメージせざるを得ない状況。海なんかまったくキレイにも見えず、歩いている人もオサレには見えず、江ノ島海岸のほうが全然いいじゃん! とか、とてもやさぐれた気持ちでただ、ぶらぶらと歩くだけ。

海沿いを30分は歩いたでしょうか。ベニスビーチというところにたどり着きました。そこは割と静かなところで、海を見ながら公園野宿を現実と捉え「充電とかどうする? トイレはあるのかな」とか考え始めるともういけません。

そのときにふわっと涼しい風を感じたときに、ちょっとしたひらめきが。

「こんだけ広いロサンゼルス。日本人がやってるゲストハウスが一つくらいあるだろう」と。

検索すると1軒だけヒットしたのです。カレンダーを見ると、もちろん当日予約など受けていません。そこでトップページにあった電話番号にかけてみると!

つながりました!その時の気持ちたるや、わかります?

事情を説明すると「とにかくおいでよ」と。その言葉にどれだけ救われたか。近場のスタバで、入国後5時間経って初めてドルを使いコーヒーを。そしてUberを呼んで、泊まれなかったホテルで荷物をピックアップして約40分、着いたところはロサンゼルスで最も古い景観保護地区にある「アメリカ古民家」であったのです。

ISAO HOUSEで出会ったユニークな方々。ISAOさんは上の写真の真ん中。

その「おうち」はISAO HOUSEという、まさにISAOさんが経営するゲストハウス。案内されたおうちは日本でいうと古民家ですね、古き良きアメリカ映画に出てくるようなお家でありますよ。

そこのリビングには若い男女ゲストがいまして、しばし歓談タイム。ISAOハウスに住んでる人もいたり、入れ代わり立ち代わりゲストがやってきたりして、ホテルとはまったく違う世界だったわけです。

ERIKAさんは世界中を放浪ワーキングしている生命力の強い美女、TAKAMURAさんは現在神楽坂「梅花亭」で修行中、かつ日光の老舗和菓子店「湯沢屋」の跡取り、ソニーを辞めてスペイン巡礼の旅に出るAKATSUKAさん、ああ、青春だよなあ、みんな。DANROなおじさんもしばし年齢を忘れたよ。

大学巡りと街歩きが心地よかった2日目。

ちなみに宿泊費は3泊で180ドル。サンタモニカのホテルとは段違いなのはプライスでありますよ。支払いは日本で登録している決済システムで完了!

サンタモニカの海を眺めながら、ひとり優雅に過ごす西海岸の休日が、予想もしなかったLAゲストハウスタイムの始まりです。

まるで貧乏旅行みたいな贅沢旅行

そもそもロサンゼルスに行きたくて行ったわけではないので、どこに行ってみたいというのは全くないという不思議な旅行者のわたし。翌日は近くに南カリフォルニア大学があることがわかり散歩に出掛けたり、図書館で本を読んだり、ダウンタウンの繁華街まで散歩したりといった時間の過ごし方。予定がない旅は久しぶりかも。

日本からもアンティークバイヤーが朝からたくさん来ていた「Rose Ballフリマ」。DANROのTシャツ着て気合を入れるわたし。

翌日はERIKAさんに誘われて、アメリカ最大のフリマ「Rose Bowl Flea Market」に行くことに。そこはなんと現金世界なんですね。その時私はドルを25ドル位しか持ってなかったのですが、Uberの割り勘分をドルでもらったりとかしながら、なんとか13ドルの入場料を確保。

朝8時からすごい人ですよ、でもって半端ない広さとテントの数々。ああ、アメリカすごいや、と素直に感服であります。

ドルがないので当然買い物なんてできません。ERIKAさんのお買い物の付き添いは楽しかったなあ。女性はこういうの大好きなんだなあ。古着とか靴とかアクセサリーとか。買物する彼女はイキイキとしてかっこよかったなあ。僕はインテリア雑貨なんか見ながらぶらぶらしつつ、気がついたら疲れちゃって、フードコートで学生のバンド聴いていたり、ですよ。

助かったのはホットドッグが2ドル、ビールロング缶が5ドルだったこと。ランチ15ドルとかだったら餓死ですよ、異国の地で。

食事はお決まりのステーキと、シンプルなインド料理だけで終わったLAでの3日間。

さて、あっという間に明日は帰国の日。何しに来たんだろ? と思ったものの、これから付き合っていける友人もできて、刺激ある時間でありました。ちなみにERIKAさんの買物品は、私がファーストクラスで日本に持ち帰り、ご実家に送りしたのでありました。

最後の晩餐はTAKAMURAさんとダウンタウンにステーキ食べに行って、大満足。この時点で、ドルはぴったり「ゼロ」になりました。

使ったお金は手持ちの50ドルと宿泊の180ドル、そして円で払った2万円位という、まるで学生時代の貧乏旅行を彷彿とさせる「贅沢」な旅は、いよいよファーストクラスでの帰国の朝を迎えるのでありました。

(続く)

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嶋啓祐 (しま・けいすけ)

地方創生という大きなテーマの中にある「食」をテーマにした「地域起こし」に従事。北海道生まれではあるが、島根県に異常に詳しい。ミョウガやネギ、クレソンといった癖のある野菜を好む。古事記に出てくる舞台をすべて巡り、10年前から御朱印を収集。コンビニの便利さが嫌いで、近寄らない。蒲田に引っ越し、酒場巡りの毎日を過ごす。

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