青春は一度だけ……じゃなかった。(青春発墓場行き 26)

(イラスト・戸梶 文)
(イラスト・戸梶 文)

僕のイケてない青春を書き綴ったこの連載、『青春発墓場行き』も今回で最終回です。最初は、単なるイケてないエピソードを書いていたつもりが、段々と僕の半生を振り返る連載になっていき、自分でもいつまで続くのだろうか、現在を書くまでやるのか? といった疑問を常に抱きながら、半信半疑でこの連載と向かい合ってきました。

自分の人生を振り返ることは面白くもありますが、ツライ作業でもあり、そして、なにより、まだ40ちょっとの僕がやる作業でもないだろ、という気持ちもありました。そんなことやってるヒマがあったら、今現在を全力で突っ走れよ、それが青春だろ? と、どこからともなく幻聴が聞こえてきて、僕を苦しませることもありました。結果、『DANRO』のサイト休止とともに連載も終わることとなり、正直ちょっとホッとしている自分もいることは確かです。

この連載がはじまったきっかけは、僕がフェイスブックに、「青春できなかった思い出をエッセイに書きたい」と投稿したところ、初代編集長の亀松さんが、それを見て、僕に連絡をとってきてくれたことでした。曰く、青春というのは、「ひとりを楽しむ」というこのサイトのコンセプトに合っているということでした。

で、めでたく連載をさせていただけることになり、僕も気合を入れて書き始めました。最初は月に2回の隔月連載だったのですが、徐々にそのペースは崩れていき(僕のせい)、ふわっとした連載感覚になって、読んでいただいてた読者のみなさんには、いつ最新記事が掲載されるのかわからなく、ご不便をおかけしたことに対して申し訳ない思いでいっぱいです。それなのに僕が嬉しかったのは、読者のみなさんがたくさんあたたかいコメントを書き残してくれたことでした。それが僕の執筆のなによりの励みになりました。この場を借りてあらためてありがとうございますと言わせてください。

「青春」できなかったこともまた「青春」だ

連載のタイトルは、ノンフィクション作家の沢木耕太郎さんの名作『深夜特急』(新潮社)のなかに出てくるヒッピーバスに書いてある落書き「from youth to death」から取りました。70年代、ユーラシア大陸をバスだけでひとり旅に出た沢木さんは、トルコからオランダまでそのバスに乗ることになります。僕は、まさに自分の人生にタイトルをつけるなら、そんな文言になるだろうなと思いました。この刹那的な散文からは、色々な解釈が想像できます。そのどれもが、僕にとっては、リアリティを持って、浮き上がってきました。人生とは、「from youth to death」だな、と。そしてこう結論づけることになりました。散々、「青春できなかった」と連載のなかで書いてきましたが、青春できなかったことも、また青春なのだと思います。すべての人に平等に青春はある。今はそんな気持ちになっています。

残念ながら、僕の今現在まで話は進められませんでしたが、それはまたどこかで。当然、僕の人生はこれからも続きます。ライフ・ゴーズ・オン。何かに夢中になることを忘れずに、そして、変化を恐れずに、「青春で1、2、3、ジャンプ」していきたいと思っています(岡村靖幸『あの娘僕がロングシュート決めたらどんな顔するだろう』アルバム「家庭教師」)。最初は、こういうふうに、当時流行った自分の思い出の曲の歌詞を絡めて入れていたのですが、途中からやらなくなっちゃいましたね。なんか権利関係がめんどくさそうだったので……。っていう話はどうでもいいです。では、本当に最後です。改めて、読者の皆様、今までお付き合いありがとうございました。みなさんの人生が今青春している人には、いつまでも、そして、まだ青春していない人には、これから、青春で満たされますように。

人生で初めてぎっくり腰になった日に 神田桂一

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