飛び出し坊やが手を振ってくれる「膳所」の町(地味町ひとり散歩 6)

秋も押し迫った大津の街。人目を避けて、こっそりと歩く男女がいました。ふたりは、駅から少し離れた隠れ家のようなジャズ喫茶へと入っていきました。

「ここのオススメは何だい?」

「ナポリタンがおいしいわ」

「喫茶店のナポリタンって、なんだか懐かしいな」

男が言うと、女はフフッと小さな笑い声をあげました。

男は50代の既婚者。20歳以上若い女はまだ独身のようです。この逢瀬がもし彼の妻にバレたら。いや、男は遠く埼玉から旅に出ている流れ者です。素性が知られることはまずないでしょうが・・・

・・・という恋愛小説まがいのことがありました。実はコレ、僕が20年以上にわたって毎日更新しているホームページの読者との体験なんです。

ホームページでは、いろんなコーナーへの読者投稿を募集していて、その投稿ごとにポイントが加算されていきます。1000ポイント貯まると「僕が食事奢ります。一緒に食べましょう」というプレゼントがあり、その食事会が滋賀県の大津であったのです。綺麗な女性だったな~。ムヒヒ。

で、せっかく大津まで来たので、散歩もすることにしました。でも、大津は県庁所在地で、地味駅ではありません。そこで、女性と別れて、ひとりで大津の隣駅の「膳所」にやってきました。

なぜか気になる「駐車場遊びおじさん」

この「膳所」という地名も難読地名ですね。普通に読んだら「ぜんしょ」か「ぜんどころ」かな、と思ってしまいそうですが、「ぜぜ」と読みます。

思わず「あまちゃん」を思い出してしまいましたが、あれは「じぇじぇ」ですね。

駅から町に出ると、辻々に、他の地方ではあまり見かけないものがたくさんあることに気づきます。

これが滋賀県名物「飛び出し坊や」です。

よほど他の土地に比べて、子供たちがヒャッホーと道路に飛び出す率が高いのでしょうか。最初にこれを作った人は、まさかそれが県内中に広まり、いまや土産物屋さんでストラップとして売られるほどの滋賀県名物になろうとは、思ってもいなかったでしょうね。

飛び出し坊やの次に多いのが、同じ滋賀県の信楽の名物「信楽焼き」のタヌキです。下腹部に付いている袋は、八畳敷きとまではいきませんが、デカいです。家々の玄関先にかなりの頻度でこれが鎮座していました。

こんな看板もありました。ということは、大人は遊んでもいいのでしょうか。キャーキャー言いながら、大人たちが人の車の屋根やボンネットにボンボン乗ったり跳ねたりしている姿が想像されます。飛び出し坊やと同様に「駐車場遊びおじさん」も気になりますね。

これはどういうことでしょう。この高校の生徒は、エサに釣られて教室を飛び出し、エサをパクパクとついばむのでしょうか。どんな高校生なのでしょう。謎です。

「赤ちゃんの駅」は、やはり赤ちゃん専用で、親御さんですら中には入れないのでしょうか。オギャーオギャーと泣く赤ちゃんたちは、いったい電車でどこに運ばれるのでしょうか。気になります。

琵琶湖の水にちょっと触れてみた

滋賀県といえば、やはり琵琶湖を抜きにしては語れないでしょう。子供の頃、地図帳で滋賀県を見たとき、「こんなに湖が大きかったら、滋賀県の人たちはみんな、湖沿いのへりに立ってブルブルふるえながら、『押すなよ、押すなよ』とダチョウ倶楽部のようにしていたのではないか」と想像していたのですが、そんなことを考えるのは僕だけでしょうか。

大人になると、滋賀県には琵琶湖以外にも少しは土地があって、湖に落ちないようにビクビク暮らしているわけではない、と知りました。

電車や車の窓から「あれが琵琶湖かぁ」と眺めたことはありますが、直接触ったことはありませんでした。幸いにも、膳所駅から10分ほどで琵琶湖にたどり着いたので、湖の水に手で触ろうと思いましたが、寄る年波のため、水に触ろうとして屈んだらそのまま態勢を崩して湖にドッボーン、あわや湖の藻屑、ということも十分に考えられました。

なので、手ではなく足先(靴ですが)で、琵琶湖にチョイと直接触れることにしました。

その後、直前にスーパーで見つけたこの缶ジュースを飲んで、喉を潤しました。「スパークリング 米麹甘酒 ラムネ味」というものすごくたくさんの要素が詰まった新製品です。

ちなみに、ラムネとサイダーは中身は同じものです。違うのは、ラムネはビー玉入りの容器に入っているが、サイダーはそうではないという点だけです。これは缶で、もちろんビー玉は入っていないので、正式に表記するなら「スパークリング 米麹甘酒 サイダー」とすべきですね。缶ドリンクコレクターとしてのしょうもない蘊蓄でした。

なんだかんだで、少々歩き疲れました。そんなところに、いい具合で銭湯がありました。

小さめの銭湯ですが、中ではジャズが流れ、サブカル的な貼り紙も多い面白い銭湯だったのですが、当然のように脱衣場は「写真撮影お断り」だったので、写真は撮れませんでした。

関西に多い電気風呂もありました。でも、以前京都で入って「これは拷問か!?」というほどのビリビリショックを受けたので、それ以来、僕は入ることができなくなってしまいました。

お風呂からあがってさっぱりしたところで、ふと思いました。「今まで着ていて汗だくになってるTシャツをまた着るのは嫌だなあ」。

すると、なんとこの銭湯では、オリジナルのカッコいいTシャツを販売していました。さっそく購入し、ポカポカと気持ちよく帰途につきました。

全国の他の銭湯も、そこだけのTシャツを販売すれば、コレクターなどが出て、巡礼する人も出てくるのではないでしょうか。ご検討をお願いしたいです。

飛び出し坊やがいつまでも手を振ってくれている、そんな膳所の町でした。

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石川浩司 (いしかわ・こうじ)

1961年東京生まれ。和光大学文学部中退。84年バンド「たま」を結成。パーカッションとボーカルを担当。90年『さよなら人類』でメジャーデビュー。同曲はヒットチャート初登場1位となり、レコード大賞新人賞を受賞し、紅白にも出場した。「たま」は2003年に解散。現在はソロで「出前ライブ」などを行う傍ら、バンド「パスカルズ」などで音楽活動を続ける。旅行記やエッセイなどの著作も多数あり、2019年には『懐かしの空き缶大図鑑』(かもめの本棚)を出版。旧DANROでは、自身の「初めての体験」を書きつづった。

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