「飲む極上ライス」不思議な沖縄ドリンクを「古島」で飲む(地味町ひとり散歩 33)

コロナがやってくるまで、僕は毎年2月になると、タイのチェンマイに滞在するのが、10数年にわたる恒例行事になっていました。「避寒」のためです。でも、2022年は前年に続き、コロナのためにチェンマイには行けませんでした。

代わりに沖縄に行くことにしました。当初は1カ月間滞在する予定でしたが、コロナの感染者急増で最初のフライトはキャンセルに。少し感染者が減ってきたので、もともとの計画より期間は短くなりましたが、沖縄に滞在することにしました。

「沖縄に行くことは話さないでください」

そのフライトの前日、芸人のナイツさんとメイプル超合金の安藤なつさんがパーソナリティを務めるニッポン放送のラジオ番組に40分ほど、ゲストとして生出演しました。しかし、事前にスタッフから「沖縄に行くことは話さないでください」と釘を刺されました。

仮ではありましたがライブの予定が入っていたので、半分は仕事での沖縄訪問でしたが、それでも「不要不急の用事で沖縄なぞに行きやがって」というクレームがリスナーから来ることを恐れたのでしょう。このころは、外国どころか国内の移動にすら気を使わなければならないご時世でしたね。

ちなみに安藤なつさんは、僕が10代のころに参加していた民族音楽のグループ「芸能山城組」が好きだったそうです。その後、たまのファンクラブにも入っていたという生粋のファンらしいのですが、「えっ、『AKIRA』の芸能山城組にもいたんですか!?」と驚いていました。知らないうちにずっと僕を見てくれていたことがわかりました。

ナイツの塙さんもテレビドラマが好きで、「一昨年の『凪のお暇』も、今放送している『妻、小学生になる。』の音楽も、石川さんが参加しているパスカルズがやっているんですよね」と話していました。いろんな方面から僕に繋がっていることが分かりました。

僕はどちらの芸人さんも好きだったので、放送は大いに盛り上がりました。

新しいものと同じ速度で、古いものが消えていく

さて、話を沖縄に戻しましょう。那覇には「ゆいレール」というモノレールがあります。今回はその「古島駅」の近くにウィークリーマンションを借りたので、その周辺を散策してみます。

このあたりは、那覇の「新都心」と呼ばれる場所に近く、あまり沖縄らしさを感じられない地域でした。初めて沖縄に行った30年以上前と比べると、やはり相当に本土化が進んでおり、「東京と変わらないなあ」と思う部分も増えています。

旅の者としては、若干残念な気持ちになりますが、現地の人からすれば、本土と同じものが食べられたり同じ娯楽が楽しめるのは嬉しいことなのでしょうから、仕方ありませんね。

これは、中国やベトナムなどでも感じたことです。発展というのは進むときは一気に進み、いにしえの伝統の片鱗を根こそぎ過去へ葬り去ってしまう現場を何度も見てきました。

人はついつい新しいものに目がいきがちですが、新しいものと同じ速度で、それまで当然そこにあったものが消えていく。そのことには、なかなか気づかないものです。

「A&W」という沖縄だけにあるファストフード店がありました。メインのドリンクは、ルートビア。お店によっては、おかわりが無料でできるところもあります。

以前、このコラムの「おもろまち」の回で、ルートビアの缶ジュースを紹介しました。サロンパスのような独特な風味で有名ですね。好き嫌いが極端に分かれるドリンクですが、一度はチャレンジしてみてください。ちなみに僕は大好きです。

その名も「Tacos-ya」というタコス屋さんもありました。ご飯の入ったタコライスも有名ですが、もちろん蛸ライスではありません。

モノレールの終着駅は、隣の浦添市にある「てだこ浦西駅」です。こんな看板も立っていました。沖縄では「たこ」は蛸ではない。そのことは覚えていたほうがいいようですね。

小顔センターには、小顔の人しか入れないのでしょうか。

僕はどちらかというと、体が大きいというイメージがあると思うのですが、実をいうと顔だけは小さいのです。帽子などは子供用のほうがちょうどいいくらいです。

なので、たまにライブハウスなどで「一緒に写真を撮っていただけますか?」という女性がいると、必ずその人より少し顔を前に出して写るようにしています。

同じ距離で撮った場合、女性の顔が僕の顔より大きくなってしまうことが多いので、「んまーっ! 石川さんより私の顔が大きいなんて。この写真、破棄だわ、破棄!」となってしまうかもしれません。それを阻止するために、ちょっとした気づかいをしているのです。

うしマンション。「人間は入居禁止だモー!」という牛専用のマンションでしょうか。蛇口からは水ではなく、牛乳が出るのでしょうか。

東京で「ニヒル牛」というへなちょこアートショップを夫婦で経営している僕は、牛関係ということで特別に入れないものでしょうか。

白蟻百十番株式会社。「シロアリが出たら110番してください」というシロアリ駆除の会社ということはわかりますが、ずいぶん直接的な会社名ですね。

最近は公共事業の民営化が進んでいます。将来的には、警察も民営化され、「事件百十番株式会社」という名前になるかもしれませんね。

お昼は、シーサーもおいしそうにスパゲティを食べている、沖縄っぽい喫茶店に入りました。

こちらの「ゆし豆腐セット」は680円。崩れた湯豆腐といった感じのゆし豆腐に、サラダやポーク、たまご、それに立派なアイスコーヒーも付いて、なかなかお得でした。

ちなみに、テーブルは花札のゲーム機になっていました。店内にはゲーム用の両替機まで設置されている、昭和レトロなゲーム喫茶店でした。

このときは、コロナ対策のまん延防止期間中で、夜は飲食店が早く閉まってしまいます。晩ごはんは、スーパーマーケットでこんなお弁当を買いました。

ちなみに「うちなー」という言葉は琉球時代からあるそうで、うちなーに漢字をあてたものが「沖縄」ということです。

飲み物は、まだ買ったことがない種類の缶ドリンクを買いました。今回は「ミキ」の新作、ウコン入りが出ていました。

ミキは、ほぼ沖縄でしか飲まれていないドリンクです。元々は、少女が口の中で米を噛んで発酵させるという「口噛み酒」から来ているという、なかなかに濃い由来の飲み物ですが、これはお酒ではありません。「飲む極上ライス」という、ちょっとドロッとした不思議な飲み物です。

沖縄文化を知るために、こちらも一度は試していただきたいですね。

前の年と同じ時期に訪れた那覇ですが、この年は雨が多かったです。もちろん本土ほどではありませんが、若干肌寒い日もありました。

今回は沖縄でしたが、次の年こそは真冬にタイに行って、プールで「あっちいな~っ!」と言って、みんなをジクジクジクとうらやましがらせたいです。それこそが、僕のような自由業の醍醐味ですからね。

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石川浩司 (いしかわ・こうじ)

1961年東京生まれ。和光大学文学部中退。84年バンド「たま」を結成。パーカッションとボーカルを担当。90年『さよなら人類』でメジャーデビュー。同曲はヒットチャート初登場1位となり、レコード大賞新人賞を受賞し、紅白にも出場した。「たま」は2003年に解散。現在はソロで「出前ライブ」などを行う傍ら、バンド「パスカルズ」などで音楽活動を続ける。旅行記やエッセイなどの著作も多数あり、2019年には『懐かしの空き缶大図鑑』(かもめの本棚)を出版。旧DANROでは、自身の「初めての体験」を書きつづった。

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