逆名探偵コナン?「おとなこども歯科」に戸惑う「東別院」(地味町ひとり散歩 29)

2021年の冬のこと。出前ライブで名古屋に呼ばれました。その2カ月前にも、同じ名古屋で別の主催者のライブがあり、他の仕事でも訪れました。コロナ禍で地方ライブが減っていた中、この年は名古屋の当たり年でした。

出前ライブとは、オファーがあれば基本的に僕がどこへでも行って、歌ったり演奏したりトークしたりする企画です。僕は事務所に所属していないため、すべての連絡は直接メールなどで行っています(ただし、テレビや映画などメディアの仕事はデスクマネージャーに間に入ってもらいます)。

ただ、一つ一つのギャラ交渉が大変なので、自分の「定価」をホームページで公表し、依頼を受けています。

まあ、ミュージシャン仲間からは「自分の値段を公表している人なんていないよ!」と言われるのですが、相手がどのくらいの金額を想定しているか探るのが面倒という、僕のグータラさが現れている結果です。「金額がわかっているから呼びやすい」と言われることもありますが。

今回は、出前ライブの会場の近くにある地下鉄駅「東別院」のあたりを散歩することにします

会場の「はな咲」は小さめの居酒屋さん。スタッフとお客さんでギュウギュウになりながら、30人ほど集まってくれました。

店内には、僕が中高生の頃に夢中になった懐かしのアナログレコードがたくさん飾ってありました。キング・クリムゾン、EL&P、クイーン、山口百恵、フィンガー5、ピンクレディ…。思わず見入ってしまいました。

僕の歌「まちあわせ」の中に「♪兄さんはヨシムラでハムカツ買って食べ歩き~」という歌詞が出てきます。ここのメニューにもハムカツがあり、なんとその短冊に僕の顔が描かれているではありませんか!

なので、ライブでは「まちあわせ」の「ヨシムラ」を、ここの店名の「はな咲」に替えて歌ったら、お客さんからヤンヤの喝采をいただきました。

そんな「はな咲」の最寄駅である「東別院」の周辺を歩いてみましょう。

基本的には住宅街なので、こんな看板があちこちに貼られています。

「何か面白いものはないかな」と細道に入って、微に入り細に入り、キョロキョロといろんな場所を覗き込む中年の僕は、まさに不審者そのものなのかもしれません。

どれも同じ貼り紙なのかと思ったら、中警察署長の目つきが一番鋭かったですね。この目つきの人が近くにいたら、とりあえずその場からスッと離れるのが得策のようです。

以前、この「地味町ひとり散歩」の「長太ノ浦」や「茶所」の回でも紹介した「キング」という缶コーヒーの宣伝が顔を出しました。主に中京地区だけで見かける缶コーヒーなのですが、「噂のネボケKINGコーヒー」と銘打たれていました。以前はなかった広告です。

特にネボケ顔には見えないのですが、そういう名前が付いたようです。新しく蓋付きの350ml缶も発売されていたので、さっそく買い求めました。

王妃か、もしくは王女らしき女性も、新たに描かれていました。この後「噂のネボケQUEEN紅茶」が発売されるのかもしれませんね。

別の自販機では、珍しいホットエナジードリンク、その名も「暖」を手に入れました。ホット飲料だけあって、エナジードリンクにしては珍しく、無炭酸でした。

「見ざる聞かざる言わざる」の像も見つけました。しかしよく考えてみると、鼻だけは、どの猿も塞いでいません。「嗅がざる(猿)」はないのですね。

なので、この猿たちがもし一斉に襲ってきたら、スカンクのような刺激臭を与えれば一網打尽にできるのかもしれませんね。

ウサギとカメは、あの競争の後、こんなところで仲良くしているのですね。

童話は「めでたし、めでたし」で終わることが多いですが、その後もずっとめでたかったかどうかは定かではないので、「童話のその後」って気になることがありますよね。

桃太郎は、いきなり襲われた鬼の残党たちに復讐されなかったのか。

浦島太郎は、何も悪いことをしていないのに、大きな財宝を手に入れただけでおじいさんにされてしまったが、その後はどうなったのか。

三年寝太郎は、睡眠障害を克服できたのか。

ボロボロの廃墟を見つけました。何も自虐的に「腐」と書かなくても良いのではないでしょうか。まあ、確かに完全に腐っていますが。

「おとなこども歯科」というのは、大人でも子供でも誰でもOKということですよね~

そう思って、中に入ってみたら、

「あなたはただの大人じゃないですか!ここは“おとなこども”、つまり、大人の顔・声・体型だけど実は子供、という“逆名探偵コナン“のような人のための歯医者なのだ。帰りたまえ!」

と言われてしまったら、困惑しますね。

「東洋のシンドラー」と呼ばれ、「私に頼ってくる人々を見捨てるわけにはいかない。でなければ、私は神に背く」という言葉を残した杉原千畝の道というのもありました。

そこを歩いていくと、公園に出ました。そこには見事なピンクの富士山がありました。

そういえば、冒頭で書いた「どこでもやります出前ライブ」では、富士山の六合目の山小屋でライブをやってくれというオファーもありました。五合目までは車で行けますが、そこからは登山です。

山小屋でライブをやった後、さらにその先の宝永火口という場所でも歌ってくれということで歌いましたが、酸素が少なくてなかなか苦しかったです。薄着でギターを抱えて歌う僕の姿を見た完全装備の登山者たちが、不審そうな顔をしていました。

この記事を読んで「あそこで石川に歌ってもらったら面白いんじゃない?」と思いついた人は、ぜひ僕のホームページをチェックしてみてくださいねっ!

さて、歩いているうちに隣の駅に着いてしまいました。その名は「金山総合駅」という変わった名前の駅でした。総合格闘技みたいなものでしょうか?

いくつかの鉄道が交差する場所にあるのだと思いますが、そうすると新宿の駅も「新宿大総合駅」と名乗らなければいけないですね。

では、名古屋にもう一泊して、次は別の町を散歩してみましょう。

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石川浩司 (いしかわ・こうじ)

1961年東京生まれ。和光大学文学部中退。84年バンド「たま」を結成。パーカッションとボーカルを担当。90年『さよなら人類』でメジャーデビュー。同曲はヒットチャート初登場1位となり、レコード大賞新人賞を受賞し、紅白にも出場した。「たま」は2003年に解散。現在はソロで「出前ライブ」などを行う傍ら、バンド「パスカルズ」などで音楽活動を続ける。旅行記やエッセイなどの著作も多数あり、2019年には『懐かしの空き缶大図鑑』(かもめの本棚)を出版。旧DANROでは、自身の「初めての体験」を書きつづった。

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