日本最南端の駅「赤嶺」 黒猫がのんびり昼寝する街を歩く(地味町ひとり散歩 34)

今回は町としては「地味町」ですが、ここを目指して遠方から訪れる人もいるような町。正確には「駅」です。

上の写真はちょっと見づらいですが、石碑にその理由が書かれています。そう、ここは「日本最南端の駅」なのです。

沖縄唯一の鉄道である「ゆいレール」というモノレール。その那覇空港駅の次の駅である「赤嶺」は、まさに日本の南の端に位置する駅なのです。ここより南で、駅があるのは、もう台湾になります。

しかしその石碑以外は、観光として特に見るべきものがない、のどかな沖縄の町といった印象でした。シャッターが閉まった飲み屋の前で、黒猫がのんびり昼寝をしていました。

僕はこれまでの人生で、沖縄に結構来ています。回数は10数回程度ですが、1回の滞在で短くても1週間は滞在するので、トータルで何カ月間は沖縄に滞在している計算になります。

以前、このコラムで書いたように、沖縄で最初に訪れたのはCM撮影でした。なぜか北海道ローカルのCMを正反対の沖縄で撮影するというものでした。

ライブのために沖縄に来たことも数多くあります。たま時代のあるときは、ツアーで九州まで来ていて、そこから沖縄に渡るはずだったのですが、台風のせいで中止になってしまいました。

長いツアーの最後の会場が那覇で、その後はオフという予定でした。そこで、たまのメンバーたちはみな「ツアーの後、沖縄バカンスを一緒に楽しもう」と、家族などを呼んでいました。

僕らの家族が乗った飛行機は、東京から定刻通りに飛んで、沖縄に到着しました。しかし、僕たちが乗るはずだった福岡からの便は欠航になってしまいました。台風がひどくて、3日間も飛行機が飛べなかったのです。

僕らを除いたそれぞれの家族がポツンと沖縄に着いてしまったものの、ものすごい台風で、ホテルからほぼ一歩も外に出られない状況だったそうです。

結局、ライブが中止になった半年後くらいに、那覇で振替のライブを行ったのですが、そのライブで奇妙な出来事がありました。

ライブで「禁忌的なこと」を口走ってしまった!?

当時のたまのレパートリー曲の中には、僕が歌の途中に即興でセリフを言うものが何曲かありました。セリフは毎回変えていて、地方に行ったときは、その地方の名産や方言を織り込んで語っていました。

ネットが普及していなかった時代のことです。コンサートのスタッフやホテルのフロントのお姉さんに「地元の人しか知らない言葉やお店を教えてください」と聞いて、「これを出せば地元の人ならバカウケですよ」と言われた言葉をセリフに入れて、意気揚々としゃべっていました。

ところが、那覇のライブでは、お客さんたちがポカンとしています。「あれれれっ!?」と思ったら、あとで原因がわかりました。座席の前のほうはみな、東京などから来ていた「追っかけ」の人たちだったのです。沖縄のことはほとんどわからず「?」となってしまったそうです。

「後ろの席にいた地元のお客さんは笑っていたよ」と言われましたが、その声は遠くて聞こえません。ライブ中は「何か言ってはいけない禁忌的なことを言ってしまったのではなかろうか!?」とビビったものでした。

「一週間ぶっ通しライブ」泡盛で乾杯

沖縄でソロライブを開いたこともあります。最初に開催したライブは、僕のホームページにあるチャットに偶然入ってきた人がきっかけです。「今度那覇にバーをオープンさせるんですが、そこで記念イベントをやってもらえませんか?」と言われ、気軽にOKしたのです。直接会ったこともない人と画策した企画は「一週間ぶっ通しライブ」。

月曜から土曜まで、僕のガラクタパーカッションと地元ミュージシャンのセッションを繰り広げました。相手のミュージシャンは日替わりで、ロック、民族音楽、ジャズ、ムード歌謡、フォークとジャンルもバラバラ。リハーサルなしのぶっつけ本番で、ライブが始まるまで相手がどんな音を出してくるかわからない、スリリングな毎日でした。

最後の日曜は、楽器をギターに持ち替えて、僕の弾き語り。そんな7日間でした。狭いバーは満員でした。演奏中にベリーダンサーであるママさんが即興で踊ってくれるなど、大いに盛り上がって泡盛で乾杯しました。

ライブのほかにも、僕の空き缶コレクションに関するテレビ取材で、何度か沖縄に来たことがあります。

NHKの番組では、4日間ほどロケをしました。公園でたまたま話しかけた米軍のアメリカ人のお宅にお邪魔し、基地内のスーパーマーケットでしか売っていない缶ジュースをもらって飲む、という展開もありましたが、これはちょっと仕込みのある「プチやらせ」でしたね(笑)

民放の番組では、ロケの後に石坂浩二さんとスタジオで対談しました。会った瞬間、石坂さんから「あっ、本物のランニングさんだ!」と言われました。僕はすかさず、「いえいえ、そちらこそ僕が子供のころの二枚目俳優の代名詞、本物の石坂浩二さんじゃないですか!」と返しました。

ちなみに、僕の名前「石川浩司」はよく「石川浩二」と誤植されます。これは、絶対に石坂「浩二」さんに影響されているのだと思います。

そのほか、八重山民謡界の大御所で、県の無形文化財にも指定されている大工哲弘さんと一緒にレコーディングに参加させてもらうなど、沖縄はなにかと「よく来る土地」になったのでした。

さて、思い出話が長くなってしまいました。赤嶺の町を歩いてみましょう。訪れたのは、2022年の2月のことです。

まずは腹ごしらえです。沖縄料理もいいですが、ステーキも有名ですね。

1000円のステーキ屋さんがあったので、「味は期待できないけど、記念に食べていこうか」と思ったら、ここが実に美味い!

溶けたバターに胡椒をふりかけたら、絶品でした。

これまで沖縄で有名なステーキのお店に行ったこともありますが、ここが一番美味しかったです。赤嶺駅近くにある「池谷牛肉店」というお店。ぜひおすすめしたいののですが、どうやら2022年の夏から休業してしまっているようで、残念です。今度、沖縄に行ったときに再開しているといいのですが。

ちなみに以前、訪れた某ステーキ店では顔バレして、「あんた、たまの人じゃないかね~!」と、店員さんに大声で言われました。周りのお客さんにも聞こえてしまい、恥ずかしくて大急ぎでゴゴゴとステーキを飲みこんで、店を出ました。

「駄がし屋」という駄菓子屋さんがありました。単刀直入、いいですね〜

「おそば」という沖縄そば屋さんもありました。沖縄の人は、店名を考えるのがてーげーめんどくさかったのでしょうか。

横浜家系らーめんは知っていましたが、「沖縄家系らーめん」は知りませんでした。「家系」というのは、各地にあるものなのでしょうか?

石川県にもあったら「石川家系」になって、まるで我が家の家庭料理のようになってしまいますね。

沖縄のファストフード店「Jef」。ゴーヤーバーガーはなんとなくわかりますが、「ぬーやるバーガー」はまったくどんなものか想像できません。なんかヌルヌルしてそうな気がしますが。

まあ、最近はネットで調べれば、どんなものかすぐに分かるんですが、僕はあえて調べません。興味がある人は、自分で調べてみてくださいね。

「ぱんだまんま」は、笹ご飯を食べさせるレストランでしょうか?

売り切れていましたが、沖縄ではレタスはフルーツ用なのですね。

ピカソ美容室。なんかとてつもなくシュールな髪型にされる気がするのは、僕だけでしょうか?

「畳」という漢字は昔、こんな風に書かれていたのでしょうか。田がいっぱい。もし「四角アレルギー」の人がいたら、四角だらけで、とても見ていられませんね。

看板の「看」の字だけデザインされて、キャラクターっぽくなっています。でも、そこで力尽きたのか、「板」はそのまんまですね。

この公園の巨大なすべり台の下には、トイレがありました。子供がすべっている途中でおちんちんがこすれて、おしっこをしたくなっても、すぐに行けるので実用的ですね。

「耐震工法のお墓造り」というのは、沖縄以外では見たことがありませんね。まあ、お墓といっても、沖縄はご覧のように「石造りの小さな家」のような独特の造りなので、地震にも強い設計が望まれるのでしょうね。

南国は樹木が成長が早いです。ビルの屋上がほぼ森になっているマンションがありました。このまま放っておくと、いつの日かビル全体が自然にかえるのでしょうか。

宅地だけでなく、軍用地も売買するんですね。さすが沖縄です。

そして、この散歩をしていたちょうどその日、ロシアがウクライナに侵攻する戦争のニュースが流れてきました。

できるだけ早く、このタクシーのように「平和」になることを、強く強く願います。

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石川浩司 (いしかわ・こうじ)

1961年東京生まれ。和光大学文学部中退。84年バンド「たま」を結成。パーカッションとボーカルを担当。90年『さよなら人類』でメジャーデビュー。同曲はヒットチャート初登場1位となり、レコード大賞新人賞を受賞し、紅白にも出場した。「たま」は2003年に解散。現在はソロで「出前ライブ」などを行う傍ら、バンド「パスカルズ」などで音楽活動を続ける。旅行記やエッセイなどの著作も多数あり、2019年には『懐かしの空き缶大図鑑』(かもめの本棚)を出版。旧DANROでは、自身の「初めての体験」を書きつづった。

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