沖縄の「おもろまち」で「おもろかった〜」と笑い飛ばしたかった(地味町ひとり散歩 10)

前回の壺川に続き、那覇市内の町を散歩することにします。せっかく沖縄に来たのだからどこかおもろいところはないかな~と探したところ、その名もズバリ「おもろまち」というモノレールの駅を見つけました。

これはさぞかし、おもろいものたちが集まるところなのでしょう。さっそく行ってみました。

おもろまち駅の西側は「新都心」と言うらしく、オシャレなショッピングセンターなどが立ち並んでいるので、地味町とは言えません。そこで庶民的な反対側の出口から外に出て、南下していくことにしました。

すると、おもろそうな物が次々と現れました。

おもろそうなシーサー。歯がガタガタです。

おもろそうな音楽ユニット。おばあラッパーズ、盛り上がりそうです。

おもろそうな店。マスターのひげを引っ張りたいです。

おもろそうな豚。食べられるのに、親子でニッコリ笑っています。

おもろそうな鳥。小学生の甥っ子に描かせたのでしょうか。

おもろそうなスッポン。お安く設定されています。

おもろまちの「悲しい現実」

と、おもろそうな物はいっぱいあったのですが、ここで皆さんに悲しい現実をお伝えしなくてはなりません。

本当は「おもろまちはやっぱりおもろかったよ~。ワハハハッ!」と豪快に笑い飛ばしたかったのですが、実は僕が沖縄に滞在した2月は、コロナ禍で県独自の緊急事態宣言が出ていました。そのため、店はどこも閉まっているのです。やっていないのです。

きっとみんなステイホームで、それぞれ家の中でゲハゲハ笑いころげているのでしょう。

飲食店は軒並み閉まっていましたが、と、床屋さんは開いていました。

ちょうど僕の髪が中途半端に伸びていて、自分自身こそが一番おもろいことになっているのに気づきました。

これは良い機会だと、サッパリと刈ってもらい、スッキリしました。

悲しいビフォー。

嬉しいアフター。

お腹も空いてきました。が、なかなか開いている飲食店が見つかりません。

散々歩いて隣の駅まできてしまいましたが、やっと屋台のような沖縄そばの店を見つけて、食べることができました。肉がぶ厚くて、とてもおいしかったです。

沖縄そばは、いわゆる日本蕎麦ではありません。蕎麦粉は一切入っていないので、うどんとラーメンの中間といった感じでしょうか。

沖縄では専門店はもちろん、だいたいどこの食堂にもある定番メニューです。あの牛丼の吉野家でも、みそ汁の代わりにプラス120円で沖縄そばに変更できるくらい、ポピュラーな食べ物なのです。

初めて沖縄を訪れたのは「たま」のCM撮影

ちなみに、僕が最初に沖縄を訪れたのは1990年の初めごろでした。僕が当時やっていた「たま」というバンドの仕事でやってきたのです。

たまは、その前年の11月から12月にかけて、「いかすバンド天国」(通称”イカ天”)というアマチュアコンテストのテレビ番組に出たところ、あれよあれよと勝ち抜いて、グランドチャンピオンになってしまいました。

アングラなバンドだったので「ちょっと宣伝のつもり」で出ただけだったのに、時代が狂っていたのでしょう。ついには、元日に武道館で行われた「輝く!日本イカ天大賞」というイベントで大賞を取ってしまい、「たま現象」という言葉がはびこる事態にまでなってしまったのでした。

正式なメジャーデビューは1990年5月でしたが、それ以前も『週刊少年サンデー』を始めとする様々な雑誌の表紙を飾ったり、NHKの報道番組で「たま」が取り上げられたりするほどの異常事態でした。

そんな流れで、沖縄にはテレビCMの撮影のためにやってきました。「北海道アルバイトニュース」という北海道ローカルのCMなのに、なぜか沖縄で撮影しました。

強行軍のスケジュールで、撮影が終わってようやく晩ご飯を食べられるようになったのは、真夜中です。宿の近くで開いていたのは、サッポロラーメンのお店だけでした。

「初めて沖縄に来たのに、食べたのはサッポロラーメン」ということで、強く印象に残っています。

最後に、沖縄滞在10日間で見つけた缶ドリンクを紹介しましょう。

コーラ。ペプシはRyukyu(琉球)のロゴと「沖縄をもっと元気に!」のメッセージ入り。コカコーラはシーサーがこちらを見ているバージョンです。

オリオンビールのチューハイはマンゴー&パッション、白インゲン豆抽出物配合。ハイボールはトウガラシ抽出液配合です。やはり、南国っぽいですね。

こちらは沖縄限定発売品。左から、ほぼ沖縄かドンキホーテでしか売っていないA&Wのルートビア。「ビア」という名前ですが、ビールではなくて炭酸のソフトドリンクです。

よく言われるのが「サロンパス味!?」。癖になってはまる人と、一口飲んだだけで「ウゲッ!」と吐き出す人にハッキリ分かれます。僕は前者。その独特のクスリ臭さが大好物なのです。

その右隣は、空港で買ったパインジュース。続いて、ファンタが沖縄限定で出してるシークワーサー味。右端は、琉球泡盛カクテル「愛さ」。これでカナサと読むみたいですね。

そして、これは本土でも販売を開始したのかもしれないですが、人気が殺到して売り切れていたらヤバいと思い、慌てて買ったビールです。

ニュースにもなったので、ご存知の方もいるかもしれません。サッポロのラガービールなのですが、「LAGER」のスペルが間違って「LAGAR」になっています。

スペルミスのため、いったんは回収されることになりましたが、ニュースになったことで「そのくらいで廃棄するのはもったいない」という世論が高まり、急遽そのまま販売されることが決定されたのです。

このミスプリントビールは、コレクターとして絶対に手に入れておきたい一品ですね。

結局、沖縄で買った缶ドリンクは全部で56缶。飛行機はLCCの「預け荷物なしプラン」のため、中身が入っているドリンク缶は機内に持ち込めません。

そこで、現地で全部ひとりで飲んで、缶をきれいに洗って、リュックに詰め込みました。荷物はほぼ空き缶だけ、という状態で帰りの飛行機に乗り込みました。

空港のX線検査の人に苦笑いされること30数年。それが、僕の人生です。

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石川浩司 (いしかわ・こうじ)

1961年東京生まれ。和光大学文学部中退。84年バンド「たま」を結成。パーカッションとボーカルを担当。90年『さよなら人類』でメジャーデビュー。同曲はヒットチャート初登場1位となり、レコード大賞新人賞を受賞し、紅白にも出場した。「たま」は2003年に解散。現在はソロで「出前ライブ」などを行う傍ら、バンド「パスカルズ」などで音楽活動を続ける。旅行記やエッセイなどの著作も多数あり、2019年には『懐かしの空き缶大図鑑』(かもめの本棚)を出版。旧DANROでは、自身の「初めての体験」を書きつづった。

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