「貯金4000万円を目指す」 30歳新聞記者が「あえて結婚しない」理由
高橋一生主演で話題になったドラマ『東京独身男子』のように、女性にモテるのに、あえて結婚しない「AK男子」と呼ばれる若者が増えています。
とはいえ、平日はバリバリ仕事をこなし、休日は趣味や恋愛を楽しむといった、同作で描かれたサラリーマン像はごく一部でしょう。
地方に目を移せば、映画館や遊園地などのデートスポットは少なく、収入も都心ほど高くありません。おまけに親戚づきあいで周囲からの「結婚プレッシャー」も多いはず。
今回話を聞いたのは、そんなAK男子には不向きな、関東のある地方都市で「結婚しない生活」を送っている西田篤史さん(仮名・30歳)。「今後も結婚するつもりはない」ときっぱり語ってくれました。
なるべく日常からはみ出さない生活
地元の高校を卒業したのち、東京都内の名門私大に進学。就職活動では新聞社から内定をゲットし、今年で8年目。今は地方支局に勤務中です。
「入社以来、一貫して記者職です。平日は地元の議会や役所を取材しています。記事を書くため深夜まで残業する日もありますが、何もなければ17時には退社できます」
帰宅前には、自家用車でスーパーに寄って、牛乳や納豆を中心に食材を購入。外食はほとんどせず、自炊で済ませているといいます。
「ふらっと飲みに行ける友人やお店もないので、基本的に一人で完結する生活を送っています。大学時代も含めると一人暮らし歴は12年。話し相手がいなくても退屈になることもないですし、むしろ今の日常生活から、なるべくはみ出ないようにしています」
”性的な関係”を持った相手もいない
なるべく静かに暮らしたいーー。その理由を「着替えるのが億劫だから」だと語ります。
「そもそも家に帰ったら、誰かがいることが嫌なんです。プライベートを他人と分かち合いたい気持ちが全く湧かないし、恋愛も結婚も、僕にとってはマイナスのほうが大きいと思っています。好きな人がいたとして、そもそも自分が本当に好かれるのか、誰かを好きになることができるのか、何かすることができるのかがわからないんです」
有名企業に就職して、身元もしっかりしている。傍から見ると彼女がいてもおかしくない状況ですが、実は「これまで一度も彼女がいたことがない」と言います。
「彼女がいたこともないですし、風俗にも行ったことがないので、”性的な関係”を持った相手もいません。もちろん性欲はありますが、生身の女性が気持ち悪いというか……化粧や整形って、女性がきれいに取り繕って、何かを隠す行為じゃないですか。それが嫌なんです。だったら二次元のほうが、作られた部分しか存在しないし、裏がなくて好きなんです」
そう言われると、単なる「二次元好き」にも聞こえますが、アニメ鑑賞やゲームなどにも熱中していないようです。そんな西田さんですが、周囲の視線が気になることはないのでしょうか?
「親は基本的に自由にさせてくれます。家族関係も悪くはありませんし、結婚について話したことがないだけです。どちらかと言うと、上司や取引先から、結婚や縁談について、あれこれ質問をされます。この前も『いつ結婚するんだ?』と聞かれたので『来世ですかねぇ』と笑ってごまかしておきました」
本気(マジ)な人には絶対に敵わない
高校・大学時代こそ、「誰よりもアニメに詳しくなりたい」と思った時期もあったそうですが、今は新作をほとんどチェックしていないとか。
「本気(マジ)な人には絶対に敵わないことがわかったんです。それ以降、自分のなりたい姿と、なれない姿に向き合うのに疲れちゃって。休日は『シャーロック・ホームズの冒険』(ジェレミー・ブレット主演のテレビドラマ)と、『水曜どうでしょう』をネットで見て、たまにポケモン捕まえに行くだけです」
どうやら、いまでも『ポケモンGO』を楽しんでいるようです。誰かと恋愛したり、新しい趣味に没頭せずとも、充実した生活を送ることができる秘訣は何なのでしょうか。
「記者として、好きな仕事ができていることが大きいです。上司や先輩から振られた仕事は嫌いですが、自分で発見したネタを追っかけるのは好きですね。だから、このまま記者としてペンを置かずに、ずっと書き続けられたら理想です。ただ、会社は嫌いなので、こうやって支局にいたまま、早く定年になってほしい(笑)」
早く定年退職にならないかなと思う日々
また、当面の生活が安定していることも精神衛生上、プラスに働いているようです。
「今は年収600万円あります。食費も月3万円、家賃は8万円。会社から家賃補助が3.5万円あって、生活費もほとんどかからないので、貯金も1000万円になりました。4年前から将来のために原資50万円だけで株投資も始めていて、優待目当てでビックカメラやタカラトミーなどを保有しています。老後資金2000万円問題とかありますけど、僕の場合、順調に進めば定年までに4000万円くらい貯められそうです」
たしかにお金には不自由しないでしょうが、ひとりぼっちだと、将来の不安もあるのではないでしょうか。だが、本人は「それは特にありません」ときっぱり。
「死ぬときは誰でも死にますし、家族の関係が幅広いと、葬式とかの手続きで迷惑をかけるかもしれませんよね。だったら、一人きりで最期を迎えたほうがいいと思うんです。もちろん、現実を想像できていないだけかもしれませんが」
都会のAK男子と違って、かなり内向的。なぜ、こうした発想に至ったのでしょうか。
「何かやっても、うまくいかないという刷り込みがあるかもしれません。若いときに色々とやってみたけど、うまくいかなくて……。自分の限界をすぐに作ってしまうというか。ドッジボールが下手だったり、調子に乗って空気の読めないことをしたり。その程度なんですが、いまだに引っかかってるのかもしれません」
生きていれば、どうしても承認欲求や性欲などがついて回るもの。だが、そこに悩まされない西田さんは、ある意味、究極の「AK男子」といえます。病気さえなければ、優雅な一人暮らしが送れるのではないでしょうか。