岩合さんみたいになりたいにゃあ! 野良猫を撮影するコツは?

耳に切れ込みの入った「地域猫」(撮影・土井大輔)
耳に切れ込みの入った「地域猫」(撮影・土井大輔)

街を歩いているとき、ふと野良猫を見かけて、写真に撮りたくなる。猫好きならそんなことがあるのではないでしょうか。誰にも縛られず、ひとりで我が道をいく野良猫の自由な生き方をうらやましいと感じる人もいるかもしれません。ただ、警戒心の強い野良猫の姿をうまく撮影するのは、案外むずかしいものです。

NHK BSの「世界ネコ歩き」でおなじみの動物写真家・岩合光昭さんのように、街角の猫の生き生きした表情をカメラにおさめてみたい。そんな願望をもつ二人の猫好きライター(土井大輔山下みかん)が、野良猫の魅力や写真撮影のコツについて考えてみました。

猫が振り返った瞬間、うまく撮れた

山下:これまで撮った野良猫の写真の中で「会心の一枚」って、ありますか?

土井:私は何枚かあって決めきれないのですが、あえて挙げるとこれ。野良猫って、逃げる時以外は警戒してなかなか背中を見せない。でもこれは猫が「撮るならどうぞ」って表情をしているので気に入ってます。

おしりを向けて横たわる猫(撮影・土井大輔)

山下:僕はこれですね。東京の下町の路地で撮りました。

下町の路地で撮られた猫(撮影・山下みかん)

土井:この写真、facebookにあげていましたね。女性から「かわいい」ってコメントがついていて。あっ、だから「会心の一枚」に……。

山下:ではないですね(笑) 猫が路地に入っていくところが見えたので、追いかけたんです。そのまま逃げられることも多いんですけど、よいタイミングで振り返ってくれた。その瞬間が撮れたので。そういえば、DANROの亀松編集長の自信作はこれだそうです。東京・赤羽の飲み屋街で撮ったのだとか。

赤羽の飲み屋街をうろつく猫(撮影・亀松太郎)

土井:ムチってますね。食べ物に不自由していない感じがします。

猫の写真をSNSにアップする人たち

土井:ところで、山下さんは、さきほどの写真をfacebookのプロフィール画像に設定していますね。なぜですか?

山下:僕がfacebookを始めたころは、自分の顔写真を使うのが、なんというか、恥ずかしい感じがしたんですよ。それで当時よく撮影していた猫の写真を使いました。猫の写真を撮ってるんだな、好きなんだなというブランディングというか、イメージ作りみたいな部分もありました。

土井:私も同じような考えでSNSにアップするんで人のこと言えませんけど、正直ちょっとあざといですよね。

山下:facebookでつながってる人って、仲いい人や職場の人以外は、昔の友人とか仕事で知り合った人、最近会ってない人なので、自分がどういう人間なのかということを、顔写真以上に伝えられるんじゃないかなって。

土井:SNSでは猫をプロフィール画像に設定している人が多いですね。でも、子猫を設定するのは、なんかズルい感じがします。

山下:わかります。狙いすぎというか。野良猫は家猫みたいに「媚びた」顔をしないんですよね。基本、厳しい顔をしている。

野良猫は「媚びた」顔をしない(撮影・山下みかん)

土井:そうですね。生き抜いている感があります。私は家にも猫(17歳・♀)がいるので、違いがよくわかります。

山下:家猫はお腹すいたときとか、なでてほしいときとかに、ちゃんと甘える。

土井:家のなかでは自分が一番だってわかってるんですよ。「どうせ逆らわないんでしょ」みたいな。IT企業の社長秘書みたいな感じで、誰にも逆らわせない力がある。

山下:逆にそこがよいときもあるんですけども。

野良猫の魅力とは?

山下:土井さんは、家猫より野良猫に魅力を感じますか?

土井:うちで飼ってる猫は、もう恋人の域に達してるんで別格として、やっぱり野良猫のほうがいいですね。漫画『じゃリン子チエ』に「小鉄」という放し飼いの猫がでてきますが、そもそもそれが好きなんです。一匹狼というか、どこか影があって。

山下:僕は、家猫も野良猫も魅力的だと思います。ただ野良猫って、屋根にあがっていたり、ブロック塀をひょいひょい歩いていたりするじゃないですか。人間より自由な感じがうらやましくて。人間がなかなか行けないところまで入って、人じゃ見られない景色を眺めている。旅人のようであって、職人のようでもある。

土井:かっこいいこと言いますね。ただ、野良猫ってケガしてることが多いですよね。足をひきずっていたり傷跡があったり。基本的に毛並みが悪い。

山下:毛並みが悪いから、ブサイクに見えるんですよね。

土井:それもまた生き抜いてる感がありますが、さすがに暑い時期は、野良猫にもブラシをかけてあげたい気持ちになります。

「旅人のようであって、職人のようでもある」(撮影・山下みかん)

どこに行けば、野良猫に会える?

DANRO編集部:ちなみに、野良猫って、どういう場所に行くと出会えますか?

土井:野良猫の存在自体を嫌がる人もいるので、私は具体的な場所を言いたくないんです。

山下:近ごろは動物虐待で問題が起きているから、野良猫を見ると複雑な気持ちになりますね。野良猫に会いやすい場所をあえて言うと、下町は多いと思いますね。

土井:飲み屋街には多いですよね。酔っぱらったおじさんたちは機嫌がいいですし、食いっぱぐれがないんでしょう。あと、軒先にペットボトルを置いている家ってあるじゃないですか。あれを見ると、逆に「あ、この辺りには猫がいるんだな」と思って周りを少し歩いてみます。

山下:あとは「地域猫」ですね。

土井:地域猫については、もっと認知度が高まるといいですね。耳に三角の切れ込みが入っている猫は、すでに避妊手術を受けていて、天寿をまっとうするまで地域住民で飼ってる猫だってことが。

毛づくろい中、カメラに気づいた猫(撮影・土井大輔)

山下:ちなみに野良猫を撮るときは、スマホですか?

土井:私はふだん持ち歩いている一眼レフで撮っています。なので、カバンからカメラをとり出す音で、逃げられることが多いです。

山下:僕がさっき挙げた猫は、実はスマホ撮影です。

土井:それすごいですね。私みたいな素人だと、違いがわからない。

山下:スマホの機能向上ってすごいですよ。ただ、スマホで路地の猫を撮影してると、近所の家の窓がガラッと開いて、不審者みたいに見られることもあります。

土井:パシャー! って音がしますからね。ちなみに山下さん、エサを持って行くことってあります? それは私のなかでルール違反なんですけども。

山下:持っていかないです。

土井:猫に「明日もまた来てくれるんだ」って期待をさせたくないんですよね。

山下:野良猫にエサをやることについては、いろんな意見がありますしね。

野良猫を上手に撮影するコツとは?

DANRO編集部:そろそろ本題に入ってもらえれば・・・。野良猫を上手に撮影するコツって、あるのでしょうか?

土井:やっぱり敵意がないことを相手に示すことだと思います。上から見下ろすと、どうしても威圧感があると思うので、私はまず身をかがめます。

山下:僕はある程度近づいたあと、舌を鳴らして一瞬、相手の気を引きます。その瞬間にパシャリと。あと「にゃー」とか言いながら近づくことがありますね。

土井:私は甘い声で「撮らせてね」とか「ちょっとごめんね」とか言います。自分で言いたくないんですけど、これ、女性に近づくときとスタイルが同じなんですよね。山下さん、好きな人にも「にゃー」とか言ってそうですもん。

山下:(笑)

DANRO編集部:ちなみに、猫を撮ることで有名な動物写真家・岩合光昭さんをどう思いますか?

土井:撮影にかける時間が違うんでしょうけど、猫が岩合さんを信頼していることがわかります。やっぱりカメラのように黒く大きい物を向けると、それだけで身構える猫が多いですから。すごい人ですよ。

山下:僕も岩合さんみたいになりたいですね(笑)

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