「インバウンドビジネスの拠点に」仲間を見つけられるコワーキングスペース
「インバウンド(訪日外国人向け)ビジネスならここだ、という場所を作ろうと思いました」。そう語るのは、コワーキングスペースなどが入った複合施設「INBOUND LEAGUE(インバウンドリーグ)」を運営するUDS株式会社の中川敬文社長(51)。東京・新宿のビルを一棟丸ごとリノベーションして、2017年10月に開業しました。
コワーキングスペース以外にも、外国人が利用するシェアハウスや和室のレンタルスペースなどが入っています。海外向けのウェブサイト制作のコンサルティングをしている人や外国人観光客向けのツアーを企画している人など、インバウンドビジネスの関係者が多く利用しています。
新しい「同僚」と出会える場所
8階まであるビルの3階に、さまざまな人が仕事場として利用する「コワーキングスペース」があります。フリーアドレスのビジネスラウンジ(月額2万円〜)、仕切りのある専用デスク(月額3万5000円〜・共益費別)、固定席のブース(月額4万5000円〜・共益費別)の3種類があります。(全て税別)
「働き方に合わせて使ってもらえれば」と中川さん。ラウンジにある本棚には、ブック・コーディネーターの内沼晋太郎さんがセレクトした本が並んでいます。「海外で販売されている日本のガイドブックやインバウンドに関する本を中心に選んでもらいました」(中川さん)
「コワーキングスペースとは、同僚を増やす場所」だと語る中川さん。施設の名前の「LEAGUE」は、COLLEAGUE(同僚)から取りました。
「インバウンドビジネスは、一人や二人でやっていることも多いんです。だから、ここで知り合ってもらって、自分と違う立ち位置でやっている方とチームを組んでもらえたら嬉しいです。たとえば、ウェブ専門、ガイド、通訳でチームを組めば、何か新しいプロジェクトを始められるかもしれません」
実際、インバウンドビジネスに関わる人が多く利用しています。5階のプライベートオフィス(個室)に入居しているのは、株式会社やまとごころ。インバウンドビジネスのコンサルティング事業などを手がけており、INBOUND LEAGUEの基本構想と企画プロデュースにも関わりました。社員の王シュアンさん(29)はこのように語っていました。
「普段はプライベートオフィスで仕事をしていますが、気分を変えたいときは、3階のコワーキングスペースのフロアも利用しています。月に1度ある交流会で、7階に住んでいるシェアハウスの外国人と知り合って、Facebookで繋がりました。緊急で翻訳が必要なときには、その人に頼んだりもするんです」
「地方」と「海外」を直接繋ぎたい
UDSの中川さんはもともと、同社で地方の「まちづくり」事業に携わっていました。実際に行ってみると、人口減少の影響で経済的に厳しい地域も少なくありません。「インバウンドで、外国人観光客を地方に送客する新しい仕組みを作りたい」。中川さんはそう語ります。
「東京や京都だけでなく、各地方に美しい自然、美味しい食があります。まだ、外国人の方の目が向いていないかもしれません。これから、地方と海外を直接繋げることができないかと考えています」
1階では、外国人の方が立ち寄りやすいように様々なサービスを提供しています。旅行先のレジャー施設などを予約できるサービス「KLOOK」のチケット受け取りやレンタサイクルなどを利用できます。中川さんは、日本列島を松の木に見立てて逆さにした壁画アートを紹介しながら、こう語っていました。
「大陸から見ると、日本はこう見えるんですね。日本人が考える地図と、外国人の考える地図は違います。左右の上部では、外国のフラミンゴと日本の鶴が国際交流している。僕に権限があるわけでもないのですが、このINBOUND LEAGUEがある『新宿五丁目』をグローバルで訪日外国人に優しいまちにしたいと思っているんです」